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幕間〜無人駅の夜〜


辺りは闇に包まれました。ですが、わたしたちがいる、この小さなプレハブ小屋だけは、明かりが消えずに煌々と室内を照らしていました。 「さて、と……」 わたしはセルフチェックを起動し、トラブルがないかを確認することにしました。 出発前に大先生が、ほんの戯れ、という名目でわたしに11速化工事を施しました。とりあえず、毎日の通勤、往復50キロ超を何日かこなし、初期の調整は終わらせてはおいたのですが、やはり一日の走行距離100キロ超えを毎日毎日繰り返してくれば、どこか調子が悪くなってもおかしくはないのです。 事実、わたしはリヤタイヤの減りが予想以上に早いことを見つけました。 「帰ったら、ローテーションですね、大先s……」 わたしの使役主である大先生は、わたしの足下でシュラフカバーに包まって、モゾモゾしています。確か、セイコーマートで買ったシードルが、殊の外おいしいとご機嫌で、辺りが暗くなった途端に、早々に眠りについたはずです。ベンチの上で。それが今では、床で寝ているのです。 「寝にくかったんだなぁ……」 ベンチは本来、人が腰掛けるもの。ここのベンチも、一人一人がちゃんと座れるようなもので、長椅子のようにはなっていなかったのです。当然、寝れば段差がゴツゴツするでしょう。 きと大先生は、それに耐えかねて、多少汚くても安眠できるであろう床を選んだ。……というところでしょう。 「お疲れ様です」 大先生が、くしゃみを一つした。わたしは一瞬、ビクッとなったけど、大先生がそれ以上反応しない、というか、寝息を立て始めたので、ホッと胸を撫で下ろしました。……まあ、別に起きててもらっても良いのですけど。



これくらいの空間でも、雨風凌げれば幸せなのです。



ガタタン、ガタタン。 ゴーッ、という音を立てて、青い列車が通り過ぎていきました。もちろん、人気のないこの小駅に停まることはない列車です。何せ、18時には最終が出てしまうのですから。 北の方に紅いテールライトが消えていき、微かな風の音だけとなった駅舎。わたしと大先生だけが、何も言わずに、ここにいます。 ――――セルフチェック完了。タイヤの摩耗以外は、別段の異常なし。 さあ、わたしも休みます。明日もまた、たくさん、走るから…… 明かりが消えずに煌々と室内を照らす、宗谷本線徳満駅。 人気のないこの小駅は、静かに夜を迎えた――――



翌朝撮った、一晩の宿。






4日目へ。












TITLE:幕間〜無人駅の夜〜
UPDATE:2015/09/15
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/215_yama6/maku02.html