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259:日本の秘境を旅する〜R352・決着〜



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。






本日のルート (powered by ルートラボ)

会津田島→昭和村→南郷→桧枝岐→銀山平→小出(実測170km)




装備品の更新


私事ではあるが、スマホを買い替えた。





右のヤツね。



今まで使ってたアクオスの電池消費がパネェことになっていて、電池容量の大きいものにしてみた。

そして、それに合わせ、サドルバッグを大型のものに新調した。





オルトリーブのサドルバッグ(L)。



オーストリッチS−2バッグ(通称:火野正平バッグ)も存命であるが、擦れて穴が開いてきたのと、もう少しライトなやつが欲しくなっての導入。ちなみに、公称2.7リットルとのことだが、これだけのものが余裕で入り、まだ少し余裕がある。





カッパと短パンと補給食と電源廻り。輪行袋はバッグの上にマウント。



なるほど、一泊くらいのツーリングなら、余裕でイケそうではないか。




「これは是非とも、実地踏査して検証しなければ!」
「素直に言いなよ。どこか行きましょう、って」


という訳で、夏にやり残したアレをすることにした。





再びここに立つぜ(つまり今回はうまくいった)。






リベンジです。


恐らく、本州の東日本地域においては、屈指の秘境であり、同時に最高のツアールートでもある、会津からR352で奥只見を抜けるルート。多くのサイクリストを魅了するルートであり、そして、







プロ仕様、初心者お断り






なルートでもある。




「御存じのとおり、このルートは初心者向けではない」
「確かに、通信が圏外の区域が多いようですが……」


それだけでなく、明確に初心者お断りを謳っている公的な看板が建っているのだ。





初心者はここを通るな、と(何があっても知らないぜ、的な)。






「な?」
「わっ!?  なんですかこれ!?」


この看板は、少なくともワタクシめが20代の頃からここに据え付けてある。そして、銀山平へのアクセスの主流は、間違いなくシルバーラインになっている。

かつては、圏外区域が多いどころか、この周辺ですら圏外地域であり、一旦事故を起こすと、それこそ文字通り







連絡方法なし






という、プロ仕様を地で行くような状況だったのだ。





なお、シルバーラインは二輪車、自転車通行不可。奥只見までは行けないのだ。



アクセスは、西の小出側からか、東の会津高原尾瀬口側からかのどちらかになる。走りなれた猛者になると、始発の新幹線を使って小出まで来てから、浅草方面接続の最終で首都圏へ戻るという、







キャノンボール






が可能なルートである。夏に訪れたときは、小出側からスタートしたものの、途中降雨にヤラれ、枝折峠で引き返すという憂き目に遭ったが、今回は作戦を考えた。





早朝の北千住駅。






「なるほど、会津側からスタートするのですね」
「これには理由がある」


まず、時間的な観点でいえば、会津側からスタートしたほうが、約2時間ほど終電が伸びるというメリットがある。これは、首都圏発の時刻が新幹線もリバティもほぼ同じにもかかわらず、会津側の最終が18時台、対する浦佐発の新幹線は最終が22時過ぎなのだ。

また、スタート地点の標高が、会津側のほうが高い(およそ600mほど会津側が高い)ので、相対的に見ると







下り基調







「待つんだエルコスさん、冷静になれ」
「申し訳ありません。わたしもちょっとおかしくなってました」


なお、このルート全体で、累積標高は3000m近くなる。どこが下り基調だ?





リバティがやってきた!



そして、会津側からスタートする、もう一つの理由は、桧枝岐で一泊するというものだ。ただ、




「これは小出側からでも可能ですよ」
「確かにそうだった」


という訳で、6:42北千住発。





忘備。2号車か3号車の後端を狙う。1号車はアクセスに難あり。



東武特急の新車である500系リバティに揺られ、一路、会津を目指す。




「気のせいでしょうか、鬼怒川からほぼ各駅停車になっているような気が……」
「だが、それがいい!」


初めて利用したが、下今市で3両になり、野岩鉄道線に入ったあたりからのローカル特急っぷりがあまりにも絶妙だったりする。また、川治温泉から先は、自然豊かな山岳地帯と、会津田島周辺の盆地地帯とで、車窓風景が







鉄分豊富






なほどに素晴らしかったりする。





川治温泉周辺における車窓。すげぇローカル感。



また、会津荒海駅で列車交換までする(こちらが対向列車待ち)。




「やばい、もっと乗ってたい……」
「ちょちょちょちょちょっ!?」






列車交換まで楽しめるとは。東武鉄道、おそろしい子……!?



そして9:44、会津田島着。




「あ、地酒が試飲できるz……」
「だめぇぇぇっ!?」


敢えて会津側スタートのデメリット挙げるなら、リバティと地酒ということになるか。





こんなローカル駅だが、首都圏直結なのだ。



あと、会津田島でこんなの見つけたが、





そういや、湯野上温泉の駅長はヌコだったな。






「sneg?」
「絶対キミと添い遂げる、臆病で勇敢なブレイブハートストーリーですね」


……一応調べてみたら、どうもコレらしい。




遠回りして桧枝岐へ






じゃあ、出発しようか。



10:04、会津田島発。

近くのコンビニで補給食と水、そして軍資金を下しておく。




「賢明です。これから先、カードが使えるかどうか」
「まあ、最後にモノ言うのは実弾だよな」


ルートとしては、R289で山口まで行き、左折して桧枝岐。これが最短ルートであり、おそらく勾配もさほどきつくない。ないのだが……




「大先生、田島ダムがダムカード発行しているようですが」
「そりゃあ行くしかあるまい」


早々に軌道修正して、R400を北上する。





右折するよ。



このルートは、ひとつ峠を越えて昭和村に至る国道である。その昭和村という場所もまた、目指す桧枝岐と対を成すほどの秘境で、その風景たるや、外国の人に







This is 日本の原風景






と説明しても、即納得してもらえるレベルの場所だったりする。総じてツーリングルートに恵まれている会津地方において、特にオススメできる場所である。





まだ昭和村にすら着いていないというのに。






「てか、もう既にいい風景じゃねーか」
「あはは、いい気持ちです!」


そんな風景が広がる緩い登り勾配の道を、ゆっくり登っていくと、右手に重力ダム特有のごつい建造物が見えてきた。





ダムが見えてきたよ。






「あ、あれですね」
「あれが田島ダムか」


さて、それではダムカードを……




「あれ、どこでもらえるんだ?」
「えーっと、……南会津建設事務所のようですね」








なんだと!?( Д)゚゚










ナンダッテー!?(田島ダムの近くの欄干にあった)。



ちなみに、それは田島の市街地にあって、早い話がとっくに通り過ぎてて。




「エルコスさぁぁん……」
「ごめんなさいっ!  油断してました……」


そして、とある選択を迫られる。それは、来た道を戻ってダムカードをゲットし、R289で山口直行するか。もうひとつは、ダムカードを諦めてこのまま前進し、昭和村からR401で南郷を目指すか。

前者のほうが、ダムカードをゲットできて、かつ峠の勾配が他の路線と比べて緩やかだろうと推測できるので、行程的には楽、なんだけど、




「戻りましょう。ダムカードをもr……」
「やだね。昭和村に行く」






こんな景色がてんこ盛り、ってんなら、さぁ……



後者の方が絶対に楽しいのは明らか。それに、ぶっちゃけた話、会津方面はちょくちょく来るので、別の機会にダムカードをもらってもいいだろう。




「今日はエルコスさんと旅をする日。ダムはまた今度!」
「だいせんせぇ……」


感動でマジ泣き寸前のエルコスさん。そこに続けて、




「それに、FNWの重力ダム如きじゃ食指が動かんし」
「ばっ、バカーっ!?  わたしの感動を返せーっ!?」






FNWってのは、洪水対策、多目的用途、上水道という意味なのさ。



そんな世間話をしつつ、11:15、昭和村に突入。





トンネル内で昭和村になる。



舟鼻トンネルから昭和村までは、下り勾配の快走路。所々、良い風景の場所を見つけては、




「大先生、写真撮りましょう!」
「よっしゃそこへ直れぇい!」






結論から言うと、会津は最高のツーリングスポットだってことさ。



30分ほどかけて、昭和村の中心部に到着。





小さな街がそこにあって。



小さな商店があったり、廃校を利用したカフェがあったり、しかしほとんど往来のない道を、エルコスさんをのんびり走らせる。




「なんか、いいですね……」
「ストレスが消えていくような長閑さだよな」






旧喰丸小学校を改良したポータルができていた。



なんて、おっさんとチタンフレームがほんわかしていると、時刻は正午を迎えた。ちょっと小腹がすいたので、道の駅で何か補給しよう……





道の駅では補給ができない、という決定的瞬間。









なんだと!?( Д)゚゚






大事なことなのでもう一度言うが、小さな商店があったり、廃校を利用したカフェがあったり、しかしほとんど往来のない、のんびりした道しかないのだ。しかも、廃校を利用したカフェもまた、







休業日だった。









「ど、どうなさいます?」
「正面突破」






R401は、いきなり登りになる。



こんなこともあろうかと、田島で補給食は仕込んである。南郷まで行けば、蕎麦屋の一軒や二軒はあるだろうし、最悪、きらら289まで行けば確実に食事ができる。

という訳で、12:04、新鳥居峠への取り付き開始。





全然斜度が緩まない。



しばらくはなかなかの斜度の直登が続く。というか、直登というパターンが多いので、状況によっては簡単に心が折れる

大芦の手前で下り勾配に転じ、12:20大芦の集落。新鳥居峠への最後の補給ポイントになる。





ちょっと休息がとれる。



このあと、再び登りに転じるが、こちらもまあまあな斜度




「あの、さっきから出てくる、まあまあな斜度というのは……」
「インナー×23T以上が必要なやつ」


まあ、おおむねアベレージ7〜10%くらいの連続する坂を想像すればよいかと。そんなハンター×ハンターみたいな登りをこなしていると、左手に水場が。





天狗の冷泉、というらしい。






「水の補給を要きゅ……」
「すぐ補給してっ!」


霊験ある水場のようだ。ここでボトル2本を満タンにした。当面、水は大丈夫だろう。





展望のない森の中を往く。



このあと、一旦勾配は緩み、玉川渓谷、藤八の滝を経て、駒止湿原方面への交点まで来ると、




「いよいよ峠道です。行きますよ!」
「よしきた、頼んだぞ」






ここからマジ峠道。



ヘアピンをいくつもこなしながら標高を稼いでいく。大芦方面は開けた地形なので、振り返ると絶景が待っている、そんな道。




「エルコスさん、すげぇ嬉しそうだな」
「はいっ!  ずっと続いてくれればいいのに!」


やめてよ物騒すぎるぜ……





大芦方面を望む。



しかし、ヘアピン区間もさほど長くは続かず、13:10、新鳥居峠をシバいた。




「新、てことは旧もあるの?」
「ここから北に、登山道の鳥居峠がありますね」


なるほど、よく見ると、ここはかつて鳥居峠と呼ばれていたようで、いつからか新鳥居峠となったようだ。





ここが奥会津の境界。



峠自体は切り通し状で、展望なんて全くない。むしろ、道中のほうがよほど風光明媚だ。

しかしここから、奥会津に足を踏み入れる訳で。ここにいても何もすることがないので、早々に下山する。





さあ、奥会津に潜り込むぜ。



南郷まで延々と下り勾配で、視界が開けてくると、そこが南郷の中心部。ちょうど左手には、南郷スキー場が見える。





南郷の街が見えてきた。






「あ、トエイだ。renas先生が涎を垂らして喜ぶz……」
「大先生、renas先生はスズメ派ですよ」


バカヤロウ、俺たちの青春は冬馬由美一択だze!





Y丸本舗は、声優・冬馬由美様を応援してます。



さて、南郷からR289沼田街道を南下する。





奥会津を貫く幹線。



この道は、その名のとおり群馬県の沼田から、尾瀬を経由して会津若松へと至る街道であり、古くからの歴史がある道だ。そして、現代においても、奥会津を縦断し、東西を結ぶ各路線の結節点となる道である。

幸い、桧枝岐と只見の間は、インナーを必要とするような激坂は存在せず、街道筋のツーリングルートとしては、とてもよくできたルートとなっている。




「そろそろ昼食を考えてください。いくらなんでも食べてなさ過ぎです」
「きらら298に行ってみるか」






困ったら道の駅。



と、いうことで、R289交点よりちょっと登ったところにある、道の駅きらら298へ。わらじかつとかけそば定食をチョイス。





わらじかつに目が行くが、蕎麦が秀逸だった。濃厚な蕎麦だ。






「やはりこのあたりは、蕎麦ですよ!」
「裁ち蕎麦だね。とても蕎麦の主張がしっかりしてる」


つなぎなしの十割蕎麦は、それこそあちこちにある。しかし会津のそれは、食べた瞬間からオッス!  オラ蕎麦!  をガツンとアピールしてくるのだ。




「あぁ、幸せだ……」
「幸せを噛みしめててください。今、宿を確保しますので」






幸せを噛みしめつつ、空を見上げれば、ゴムとう管。



ワタクシめが幸せに浸っている頃、エルコスさんは桧枝岐の観光協会データベースにアクセス中だった。とりあえず、一泊二食付で適度な金額の宿はないかと検索かけたところ……




「取れました。桧枝岐の市街地です」
「さすがだ」


そうと決まれば、のんびり桧枝岐を目指そう。あちこちで撮影タイムなんかを挟みつつ、





撮影裏話をすると、こういう自撮りは、交通の往来との戦いである。



R352交点を過ぎると、道はやんわりと登り勾配に。




「あと17キロです。2時間あれば余裕で着くはずです」
「じっくりと味わいながら走るか」






ここを越えると、いよいよ退路がなくなる。



道は伊南川の渓谷状を往く二車線道路。ところどころに温泉街や集落はあるものの、基本的に何もない路だ。





途中で赤缶でも補給しながら。



冬にバックカントリー目的で桧枝岐に通う桧枝岐ローカルとしては、このあたりは、雪が積もると面白くなる。高畑のスキー場を越えて、ちょっと勾配が急なシェッドを抜けると、ようやく人里の匂いがしてくる。





南郷スキー場は、スキーオンリーで有名なゲレンデだ。






「あ、大先生、何かありますよ!」
「桧枝岐に着いたか」


16:00、桧枝岐の入口である、井篭門に到達。




「写真、撮るんだr……」
「大先生、早く早く!」






ここが福島の最深部である。



そして、もう少し登ったところに、今宵の宿が。

今回は、民宿たきさわさんにお世話になる。一泊二食付で、8300円。





布団で寝れるんだ……(Y丸本舗的には特筆すべき話です)



今宵の客は、我々含めて3組4名(プラスチタンフレーム1台)。宿の温泉を堪能し、夕食の時間となれば、山の幸が満載のボリュームあるごはんが待っていて、




「ルービーを我に!」
「大先生、飲み過ぎないでくださいよ?」


満腹大満足と同時に、あっという間に睡魔に襲われて……





このあと、裁ち蕎麦もやってきた。






広大な湖をめざして


翌朝、6:30に朝食を用意してもらい、そそくさと出発準備して7:00には出発。





ここのまいたけご飯は絶品。泊まったら必ず食べよう!



しばらくは緩い登り勾配の桧枝岐中心部を駆け抜ける。





秘境区間は優に100km近くある。






「お、路地の向こうに神社があるな」
「歌舞伎の舞台になっているようです」


桧枝岐の祭に、歌舞伎があったことを思い出した。





時期になると、長者の列ができるのだという。



さて、奥只見の文字が出てくるようになると、少しずつ勾配が増していく。このあたりは寒暖の差が激しいようで、10月初旬ではあるが、木々が紅く色づきだしている。





ご覧のとおり、電柱なんて建ってないようなところをこれから往きます。



まだ本格的な紅葉にはなりきれていないが、少しでも秋の雰囲気に浸れれば、それでいいではないか。




「ああ……  すごくいい……」
「恍惚としてやがる」


七入の駐車場から、斜度は一気に跳ね上がる。ただ、速さを競うような旅ではないので、インナー固定してじんわり登っていくと、桧枝岐の集落が眼下に小さく映るようになる。





思いがけず幻想的な写真になった。



そして、まだ完全とはいかないまでも、うっすらと紅く色づいた木々のトンネルが出迎えてくれる。




「写真だr……」
「三脚、早く早く!」






翠のトンネル。やがて紅のトンネルになるだろう。



こんな具合に撮影しながら登っているもんで、お陰さまでさほど疲れず。8:25には、御池駐車場のところまで来た。

ここで裏話をすると、昨晩、同じ宿だった老夫婦とこのあたりですれ違い、「食料は大事よ!」ってんでチョコをもらった。




「ほらぁ、補給食は大事だとお分かりになりましたか?」
「わかった。しかし、旅の定番が続々やってくるな」」


名前も知らない栃木の老夫婦氏、チョコはおいしく戴きました。





尾瀬方面への登山客でにぎわっていた。



御池駐車場で、桧枝岐で買い込んだ赤缶と、そしてつい今しがたもらったチョコで補給をする。地図上では、ここからずっと下り勾配になる。




「さあ、気を引き締めていくか」
「事故には気を付けてくださいよ?」


8:40、御池駐車場発。わずかに登り、そこから奥只見湖の南端、鷹ノ巣まで延々と下る。





ここからお楽しみゾーン。



道幅は限りなく1車線。しかし、ほとんど対向車がないことと、適度なワインディングで大いに遊べる。

ただし、このあたりは携帯圏外地帯。ちょっとしたミスが死を招くことには変わりない。ハメを外し過ぎずに下って行こう。




「あーっ、最高ですっ!」
「エルコスさんがハメを外しそうになっとるwww」






視界が開けると、県境は近い。



やがて、平ヶ岳方面を望む、視界が開けた場所まで下りてきた。





道端でエルコスさんを被写体にしてみたり。



このあたり、少々だが手の入った畑が見られた。そして、平ヶ岳への登山客に向けた山小屋も。




「このあたりは豪雪地帯で、冬季は雪の中だというのに……」
「今の季節限定、ということですね」


ちなみにこの周辺は、冬季になると本当に雪の中に埋もれてしまう。何より、今走っているR352もまた、11月中旬から6月下旬まで、冬季閉鎖になるような道だ。

そんな場所でも、小さな畑を構え、雪に耐える小屋を設けている。人間ってすげぇな




「ちなみにあの平ヶ岳、日帰り最難関の山だそうです」
「さすがスケールが違ぇな」






喫茶「山ん中」。緊急時の補給ポイントとして記憶しておこう。



やがて、県境手前のカフェ「山ん中」を通り過ぎ、只見川沿いに下り坂を駆けると、赤い橋脚の橋が見えた。




「大先生!  遂に来ました!」
「県境だな!」






いよいよ奥只見に潜り込むぜ。



9:10、金泉橋に到達。遂に福島県の最果てを踏んだ。

桧枝岐がかつて、東京から公共交通機関だけで到達するのに最も時間がかかる自治体と揶揄されていた時代があった。今でこそそんな呼ばれ方はされなくなったものの、それでもその桧枝岐の末端だ。




「ここは恐らく、最も街から遠い場所だろう」
「ハッキリしたデータはないのですが、そう呼んで差支えないでしょう」


ここから小出までは約75km。そこまでは、大きな商店とは無縁の世界になる。撮影と補給を終えて、9:15県境発。





湖の南端、鷹ノ巣へ。



道は相変わらず下り基調。時々思い出したかのようにちょっと登り、そしてたまに思い出したかのように洗い越しが。




「渇水してるか。助かったぞ」
「まっすぐ抜けてくださいよ」






橋を架けるよりもリーズナブルなので。



さらに下ると、清四郎小屋に着く。ここは、尾瀬散策や平ヶ岳登山客のベースになっているようで、宿泊を承っている。こんなところで一泊するのも風情があっていいかもしれない。




「自家製の蕎麦も楽しめるようですよ」
「なるほど、てことは、蕎麦畑だったのか」






一泊二食、8000円で利用できるそうだ。



ちなみに、この近くに大津岐ダムへの分岐がある。ただ、年中工事で通行止めになっているが。




「いつか行ってみたいんだよな」
「幻のダムみたいですね」






面白いつくりのダムらしい。



そしてさらに下ること5分で、鷹ノ巣ゲートに到着。





ここからいよいよ奥只見湖の湖岸を往く。



かつてここには公衆便所があったはずだが、2018年現在、撤去された模様。過去には、ここから先で二輪車通行禁止規制が敷かれていた場所でもある。




「ただ、自転車は大丈夫だったらしい」
「オートバイだけがダメだったと?」


ここから先、銀山平までは、奥只見湖の湖岸をトレースするように道が付けられている。そして、御池から続いていた下り勾配も、ここで一旦終わりを告げ、ふたたび登り返しとなる。

銀山平までは3つのピークが連続する。桧枝岐側からと小出側からで、それぞれ登るべき標高の量が異なるのだが、まずは200アップの鷹ノ巣越え。

インナーに落としてじっくり料理に掛かるが、程なくして遊覧船の尾瀬口乗船場に。一応、これも公共交通機関としてカウントできそうなので、イザとなればここから輪k……





無情な文字。まあ、この日は平日なのもあるか……






「だめじゃねぇかw」
「ズルはダメですよ」


なお、ズルが成立すれば、先述の3つのピークをパスし、銀山平までワープできる。……まあ、ここまで来ておいてそれはない話だが。

いくつもの洗い越しを越え、標高を上げていくと、9:45、銀山供養塔に到着。





銀山跡の見学もできるようだ。






「かつてこのあたりにあった銀山に関わった人の、供養の塔ですね」
「今はもう、湖の底か」


ダム湖と水没集落の関係は根深い。幸い奥只見は、あの荘川桜でお馴染みJ−Powerの管轄だ。そういった意味では信頼と期待をしてよいだろう。





そんな奥只見湖を見下ろしながら。



このあとすぐに、1つめのピークである、鷹ノ巣越えをシバいた。




「大先生、写真撮りましょう!」
「でも、あまり展望はないぞ?」


しょうがないので、碑の前でパチリ。恋ノ岐出越の碑が目印だ。





まず1つ。



ただ、下り返して2つ目のピークの由来となった沢、恋ノ岐を小さな橋で跨ぐと、すぐに登りが始まる。




「エルコスさん、あの延々と登ってる道はなんだい?」
「絶望しないでください。我々はこれから、あそこを往きます」


えー、すげぇイヤなんですが。だが、ここまで来ちゃったらもう行くしかない訳で。





そう、ここまで来たら、登るより他ないのだ。



沢を挟んだ対岸に見える、肉眼ではっきり見て取れる登り勾配の道に苦笑しつつ、淡々と取り組んでみる。



もうお気づきとは思うが、沢に降りて、峠を越える、を繰り返すのだ。



さらによたよた登って、区間累積標高180mの恋ノ岐越えをシバく。





2つ目の山場も攻略。



奥只見湖を右手に眺め、雨池の沢まで下ると、道はしばらく水平に伸びる。しばらく、アップダウンとは無線になり、ここで久しぶりにアウターに入る。





どうもこの先の道は、平坦なようだ。



そして、3つめのピークである、80mの神蜂へ。




「中ノ岐とも言うみたいですね」
「どちらが正しいかわからんなぁ」






右手には奥只見湖。湖岸の回り込みが思いの外距離があって時間がかかる。



登頂中に11時を回った。タイミングよく小腹も減ったので、見晴らしの良いところでちょっと休憩。





桧枝岐でストックしたジャムパンとスニッカーズでHP回復。






「ジャムパンうめぇ!」
「すごいじゃないですか、学習してらっしゃる!」


前回の淡路島で買ったサプリが余ってたので、それも口にダイレクトイン




「ぶっは!?  すっぺぇぇぇぇっ!?」
「あぅ……  学習してなかった……」


どうやら件のサプリは、水に入れて飲むものだったらしい。







粉サプリは鬼門。






できれば次からは他のものにしようと思う。





最後のヤマも越えたぜ。



さて、粉サプリ逆噴射ポイントから程なくして神蜂のてっぺん。ここから下って、ほぼ平坦な道を往けば、ついに銀山平に到達する。

んで、この区間で唯一のトンネルである、グミ沢トンネルにやってk……





なんか暗い、暗くて先が見えない(右にカーブしてるから)。






ガッ!「……………………!?(プルプルプルプル)」
「しょうがねえじゃねぇか、これしか道ないんだし」


このトンネル自体は何度も走破した経験があるが、トンネル内に一切照明がないので、場所によっては文字通り漆黒の闇

なので、自前の照明だけが頼りになる。一説には、ここだけのためにライトの電池チェックして臨むサイクリストもいるとかいないとか。





これはまだ出口に光が入ってきてるからマシなほう。本当に漆黒の闇だ。






「大声出すな、大声出すな、やったら絶対許さない……」
「やんないから泣くなよ」


涙目のエルコスさんを宥めすかし、トンネルを脱出すれば、あとは銀山平まで平行移動である。





久しぶりに車線が2つに。



二車線道路になったところが、銀山平の入口。11:30、定期船発着場に到着。





なんか最近、終端接続部ばっかり撮ってるわ。






「あ、ゴムとう管」
「このあたりって、軽汚損地域だったのですね」


いまいち汚損地域の区別がわからない。同じ豪雪地帯の板谷峠周辺は耐塩害型を採用していたし。





んで、発着場で赤缶補給。



閑話休題。定期船発着場で小休止。ここでは、自販機が使える。




「あとは枝折峠だけだな」
「いよいよリベンジですね!」


11:40、発着場を出発。もう少しのんびりしてもいいかと思ったが、実は先ほどから雲行きがおかしい。ちょっと雨が降りそうな予感がしてならないのだ。





何もない直線区間。こういうのが結構好き。



残る登り区間は、枝折峠までの僅かなものだが、下ってる最中の降雨は何としても避けたい。




「さあ、天気よ、持ってくれ」
「神様……」






雨が降ってないだけマシなのかもしれない。あまりのんびりはできないな。






プロ仕様たるゆえん


二輪車、歩行者、そして自転車も通行できないシルバーラインは使えず、道はこのまま枝折峠方面へ。

かつて、シルバーラインとの分岐には、尾瀬三郎商店という商店があったのだが、2018年現在、影も形もなくなっている。





シルバーラインとの交点。ここに尾瀬三郎商店は存在した。



ただし、銀山平周辺には、宿泊できる施設がいくつか軒を連ねているので、このあたりで一泊する行程というのも悪くないだろう。





実はここも気になっている。



北ノ又川を渡ると、枝折峠への登り区間に入る。




「行くぜ、サクッと片づけよう」
「わかりました!」






いよいよ最後の登り区間に。



しばらくは、左手に銀山平の民宿街を見下ろすように走る。ただし、今までの道がアレだったせいか、思いのほか足が良く回る。





それでも気が付けば結構登ってる。



しばらくクルクル回していると、枝折峠まで2kmの看板が。





これで決着が見えてきた。



丁度、銀山平から5kmの地点なので、枝折峠へのアプローチは、小出側からよりも容易だということがわかる。

さらに進むと、峠直下のスノーシェッド区間へ。





峠直下のスノーシェッド。地形的にも雪崩が多そうな感じだ。






「確かこのシェッドに……  ああ、あったあった」
「何かあるのですか?」


そりゃあ、R352名物の、アレですよ。





もはやここの名物。






ガッ!「……………………!?(パクパクパクパク)」
「我々はトップ1%だ」


今でこそ、電波がバシバシ入る時代だが、movaとかFOMAの時代だと、この辺りは圏外ブッチギリであり、まあ当然こういう警告看板は立ってて然りなのだ。実際問題、未舗装だった時代から、この道はこのテの事故は多発していたそうだ。




「ただ、近年では枝折峠でやってるヒルクライム大会の下山時に事故が起きてるらしい」
「時代の変化なんですね」


ところで、この話には続きがあり、





さっきの個体とは別物である。






「なんかもう1枚あんぞwww」
「手書きなのにほとんど同じですよコレwww」


この看板が2枚あったことに驚きですわ。というか、今まで知らなかった……





なお、これだけ山深いので、転落したら高確率でドクターヘリだそうな。



スノーシェッドを出て、少し登れば枝折峠。到着は12:30だった。





夏の時の借りは返したぜ。



来訪日が平日ではあったものの、駒ヶ岳方面への登山客がいた。そして残念なことに、ガスってて展望もダメだった。




「うーん、残念」
「タイミングが合えば、雲海が楽しめる峠だったのにな」


そう、最近、枝折峠では、雲海が見られることをウリにしているようだ。





高難度の雲海になりそうだ。



確かに、絶景峠なので、それはそれで良い試みなのだが、





高難度……  て、そういう意味じゃwww






「……運?」
「まあ、間違っちゃいないが」


それを言っちゃあオシメエよ、と思ったりしつつ、12:40下山開始。





あとはとにかく下るだけさ。対向車に注意して。






「あー、コレ降りたら終わりかぁ、つまんねーなー……」
「おっしゃる通りです。もっと、もっと楽しみたかったですね」


私事だが、年に1回は、密度の濃い旅をするのが定番になっている。もちろんそれは、佐渡とかヤマイドウは除いて、である。

2018年度も、濃い旅をすることができたなぁ。枝折峠の下りをカッ飛ばしながら、そんなことを思っていたら、





最後の最後で魅せてくれるよな!?






「きゃぁぁぁぁっ!?」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」


危うく倒木にJDF決めるところだった。





麓まで下りてきた。駅まであと僅かだ。



峠を下り切り、小出駅には13:45着。





小出駅の銘盤は、渡辺謙直筆のものだった。



今回、会津から桧枝岐を経て銀山平、枝折峠を抜けて小出まで走ったが、間違いなく日本を代表するツーリングルートであると断言できる。ただし、それだけ乗り手のスキルも要求されるので、初心者の方は目標の一つに、中級者以上の人は是非とも一度は走ってみた方がいい道である。

さあ、それでは越後湯沢まで輪行して、蕎麦でも食べて帰ろうか。





さらばじゃ(草履は宿でいただいた)。












TITLE:日本の秘境を旅する
UPDATE:2018/10/14
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/259_re352/re352.html