2012年版ガイドライン 実地踏査シリーズ スキー百本勝負 ほぼ月刊動画工房 ステキなダムn選 トップページ 用語辞典       


365:碧南インフィニティ



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。


【クイックリンク】

思い立ったが吉日   
知多フィニティ
強烈な向かい風

地下通路
碧フィニティ






本日のルート (powered by Ride With GPS)






思い立ったが吉日


8:43、三河安城駅を出発。





こだましか停まらない駅。



前々から気になっていたルートがあり、いつか行ってみたいと思いながらもその機会に恵まれず。しかし、とある土曜日の午後らへん、天気予報をリサーチしていたエルコスさんが、




「明日は晴れそうですよ?」
「なるほど、行く条件は揃ったか。とすれば……」


賽は投げられた。あとはこちらが行く気にさえなれば、出撃の条件はすべて揃うのだ。




「大先生次第です。ゴーサインを頂ければ往復の切符を手配します」
「……そろそろリハビリの成果も出さないとなぁ」






とりあえずがんばって上野駅までは来た。



母の逝去に絡めて、どうにもこうにも尻が重たくなっていた。しかし、それもそろそろ何とかしなければいけない。




「スタートまでが時間かかるのよ」
「走り出してしまえば、あとは何とかなるものです」


……で、早朝の東海道新幹線をうまいこと乗り継ぎ、名古屋到着前のアナウンスでよく出てくる三河安城に降り立った。今日はこれから、知多半島のほうを巡ろうと思う。





あっという間。






「首都圏からだと、よほどの理由がないと行くこともない」
「中京圏ですと、良質なツーリングスポットのようです」


まずは、駅前の道を西に進み、お隣の刈谷市を目指す。





正直、この辺は土地勘がなくて完全な初見。



このあたりは、田園地帯と住宅地帯が交互に出てくる感じで、特に何か面白いものがあるわけでなく、淡々と進んでいく。




「刈谷市はトヨタ自動車発祥の地ですね」
「雇用の地盤があるのか」


地理的には名古屋のベッドタウンに見えなくもないが、独立してやっていけるだけの下地が揃っているらしい。事実、街の人口でいうと愛知県で10番目に多いとのこと。





どのあたりを走っているのか見当つかないので、地図とにらめっこしながら。



途中、小さな川を渡っていく。すると、何やら高架橋が見える。




「名鉄三河線ですね。碧南まで線路が伸びています」
「碧南って、あの碧南?」






このあたりは名鉄のテリトリー。



我々の界隈で碧南といえば、10人中13人JERAの火力発電と答える。




「母数、母数がwww」
「問題はない。あのイチローは3打数5安打だぞ?」


その碧南はここから南側、三河湾に面した海沿いに立地している。せっかくだからあとで寄り道しよう。




「県道50を左折してください。川を渡った先が知多半島です」
「いよいよだな」






ここを左折。ややこしいことに、県道50号と51号の重複区間でもある。






知多フィニティ






この川が大河となり、やがて三河湾に注がれ知多半島を形成することに。



逢妻川、境川、五ヶ村川の3つを一気に渡り、R366を左折。しばらくはバイパス風の道を進むのだが、




「あ、よく見るともう一本隣に現道がありました」
「油断したなぁ」






どっち行ってもR366。



どうりで見えてくる風景がインダストリアル寄りなわけだ。このあたりは、東浦から半田にかけての工業地帯が続いており、車両の往来も大型車が多い印象である。




「ちょっと走りにくいかも」
「ごめんなさい、気付くのが遅れました」






直線状で走りやすいんだけどね。



とはいえ、信号に引っかからずに走れるのは利点なのかもしれない。そのバイパスも、亀崎のあたりでいったん途切れ、改めてR366現道に復帰する。





ここを左折。衣浦大橋に接続している関係で、この道も交通量が多い。



そのR366だが、バイパスから外れた瞬間からどうみても住宅街の中を通るような線形になっていて、




「これあってんの?」
「大丈夫です!」






そうそう、こういうのを待ってたんだ。



なんてやっているうちに、R247と合流した。





ここからは知多半島をぐるりと巡る道に。



名古屋と豊橋を、知多半島の海岸線沿いを経由して繋ぐこの道に出れば、あとはどこまでも道なりに進めば迷うことはない。……のだが、





左に曲がると……






「蔵の街並みとありますね」
「面白そうだから行ってみるか」


ちょっとだけルートを逸れて、県道265へ。半田市街に入るあたりで看板が掲げてあって、観光地ではよく見かける蔵の街並みと書いてあるのを見かけるが、





あの、酢で有名な。









ミツカンがあった。









「間違いなく、あのミツカンだな」
「1804年に、この街で創業したようです」


歴史によれば、もともと醸造業が盛んな地域であり、現在でも「国盛」で名を知られる中埜酒造をはじめ、この地域は日本酒の製造が盛んであったという。そして、それら製品は三河湾より出荷され、遠く江戸に運ばれていたそうだ。





街並みは、その当時の様子を復元したものなのだそう。






「酒造で発生する酒粕で酢を醸造したという伝聞がありました」
「それってどうなの?」


エルコスさん曰く、「米酢は高価だったので、粕酢は重宝された」とのこと。これは、元々は発酵食品で、完成までに時間がかかる寿司の製造概念を大きくひっくり返し、現代における寿司、いわゆる早鮨が誕生し、江戸時代に庶民の間で広まる結果につながった。





この地の大地主であった中埜半六によって醸造業が栄えた。蔵はもともと醸造蔵だったようだ。






「さあさ大先生、お勉強はこのくらいにしてですね」
「あのミツカンのロゴが入った蔵をバックにしようか」






あと、壁面に小栗重吉の顕彰が掲げてあった。






「……それはそうと、この船頭重吉って人は?」
「江戸時代に活躍した船頭さんです」


船頭重吉、こと小栗重吉は、1813年に遠州灘で暴風雨に見舞われて太平洋を漂流し、1815年に別の商船に救助されるまで、実に484日間も漂流していたそうだ。帰還したのちに執筆された著書は、見聞録として価値の高いものとして見直されているという。




「これも、ここに来なければ知ることはなかったな」
「重い腰を上げて、来てみた甲斐があったでしょう?」






やはりフィールドワークは最重要事項だ(拡大したやつはこちらから)。



そんな社会科見学を経て、ふたたび南下を開始。このまま知多半島の先端である、羽豆岬を目指す。





JR武豊線の線路を渡る。知多半島は名鉄の勢力が強いが、JRも貨物輸送で頑張ってる。






「追い風に乗れてますね!」
「つまり戻るときは向かい風かぁ」


武豊を過ぎて富貴のあたりまで来ると、景色が少しずつ変わっていく。先ほどまでのインダストリアルな雰囲気は影を潜め、少しずつではあるが漁村の雰囲気を帯びてくる。





磯の香が漂い始める。



そういえば、知多半島は魚がうまい、という評判を耳にしたことがある。




「どこかでうまい魚料理が食べれるといいなぁ」
「お店には困らないと思いますよ?」






魅力的なお店がちらほらと。



それもそのはずで、行く先々で活魚料理の看板を掲げている店を見かける。あと、やたらカフェを見かける




「海水浴も盛んみたいですね」
「潮干狩りもできるみたいだ」


そして、きっとそれらをこよなく愛するであろう、オートバイの車列が我々を頻繁に追い抜いていく。





地元ナンバー車が多い。






「今日は日曜日ですから、特にツーリングが捗りそうです」
「ま、我々も似たようなもんだけどね」


さすが中京圏屈指のツーリングスポットである。そして、オートバイの車列とは別に、ご同業の姿もちらほらと。





早朝に名古屋を出発した組であろうか。






「結構すれ違うな」
「名古屋市街からですと、逆回りのほうが利用しやすそうですね」


ところで、知多半島の先端は、L字形というか蟹の足というか、ちょっとだけ東の方に折れ曲がっている。なので、この先往く道がなんとなく視界に入るのだが、





あの高層ビルがあるくらいかな?






「あの辺かな、先端は」
「地理的には、そのようですが……」






河和でR247は左折する。知多半島の鉄路もここまで。



河和を過ぎると、羽豆岬までは残り10キロ強となる。

ありがたいことに、ここまでの行程で脚を使わされるほどの登り勾配はまったくなく、あってもちょっとした丘越え程度。つまり、文字通りのド平坦ということになる。





走りやすい道が続く。






「ロングライドの練習にはピッタリだな」
「羨ましいですね」


ただし、半島全体が平坦かというとそうではなく、内陸部は丘陵地帯になっているし、場所によっては切り立った崖が海岸線に落ち込んでいるという、ちょっとした親不知みたいな地形になっているところも。





内陸部は即、丘陵地帯。






「有料道路は丘陵部を通してます」
「これって、発想は中国道と同じだよな」


山陽道と山陰道を1本でなんとかしようとした結果、屈指のテクニカルコースとなってしまった中国圏の幹線道路を思い出した。





大井漁港にて。結構あちこちで道草食ってる。






強烈な向かい風


小さな丘越えと平坦な道を繰り返し、ようやく師崎漁港に到着。





朝市って書いてある。






「朝市やってるのか、何か食べられないかな?」
「食材は扱っているようですが、食堂はなさそうです」


土産物を買う分には最適なのだが、いかんせん今日は大荷物を持って帰るような仕様で来ているわけではないので、残念だけどスルーする。





こういうときこそ運搬車だよな……



食事ができそうなところを探しつつ、師崎港のほうに足を運んでみる。そういえば、2005年まではここから鳥羽方面にフェリーが出ていて、鳥羽を経由することで渥美半島の伊良湖に到達することができた。




「現在でも伊良湖までは高速船で連絡していますね。篠島経由ですが」
「いずれにしても乗り換えが大変そうだな」






意外と利用客は多くて、車両待機列はそこそこ並んでた。



さて、知多半島の先端である羽豆岬は、そのフェリー乗り場のさらに奥にある。ちょうど大きな鳥居が立っていて、それが目印になる。




「あ、大先生、ちょうどいい景色が」
「あるよねぇ」






大鳥居。



ここから海を見渡すと、はるか遠くに陸地があるのが分かる。渥美半島でも見えるのかと思ったが、




「篠島ですね。渥美半島はさらに奥です」
「そうなのか」


もし仮に渥美半島が見えていたとすると、渥美風力発電所の横軸風車が見えるはずである。





あれは篠島らしい。



……で、ひとしきり景色を堪能したりして、気が付けば時刻は11:37。




「走り始めてまだ3時間か」
「スタートが遅かったからそう感じるのでしょう」


ここまでの走破距離はおよそ50キロで、確かにいつもと同じくらいのペースだ。





なんかエビのオブジェがあった(これについては後述)。



このあと、半島の西側を北上し常滑へ。セントレアが拝めるくらいの場所から半島内陸部を東に突っ切り、ふたたび半田市街を目指す。そこから衣浦港を越えて碧南市に至る予定だ。




「ただし、風向きはですね……」
「思い出したくない思い出したくない」






折り返し。



……で、ここから完全に向い風となり、巡航速度が目に見えて落ちる。




「ギアを下げてみてください。脚を消費しますよ!」
「もうずっと登り坂登ってるようなもんだ」


んで、そろそろ昼食にでも、という時刻になったものの、ここらの飲食店は軒並み列を成している





大混雑。






「思い出した。なんで地物を食べないのか、その理由が」
「『並んでまでは食べたくない』と仰ってましたからね」


こりゃ今回もコンビニ飯かな、と諦めかけていたら、豊浜漁港の入口辺りで、スッと入れそうな店を見つけた。





田中屋旅館さん。






「やったぞ、メシにありつける」
「豊浜は愛知有数の漁獲高を持つ第三種漁港です。期待してよろしいかと」






さしみ定食1700円。









優勝。









「来た甲斐がありましたね!」
「ありがとう知多半島!」


なお、エルコスさん曰く、「豊浜ではエビの水揚げが有名」とのことで、立派なサイズのエビフライがついてきた。




「間違えた。えびふりゃ〜だ」
「いや、メニューにはちゃんと『エビフライ』と……」


そもそもこのえびふりゃーなんて呼称はタモリさん発祥のネタだし、そこまで地元の人も使っているわけではない。





先に進もう。



さて、無事に地物をいただいたところで、再び知多半島の西岸を北上していく。




「そういえば、衣浦港を越える方法だけど……」
「衣浦トンネルがありますね。こちらはわたしもデータがないのですが……」


このトンネル、歩行者と自転車は通行禁止で、海底トンネルなので危険物積載車両も通れない。人道トンネルのようなものがあるといいのだが。





伊勢湾が左手に。遠く見えているのが伊勢の辺り。



向い風と格闘しつつ北上していくが、このあたりは東岸の雰囲気とも微妙に違うようで、




「なんか小洒落たビーチがある」
「それはそれは。それではお写真など……」


時刻は午後になり、気温が一気に上昇してきた。ちょうどいいところに水道があったので、お約束の洗顔に勤しんでから撮影タイムとしよう。





海水浴場があれば、豪快に水浴びできるスポットには事欠かず。






「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
「美しくない声が出てますよーw」


東岸は工業地帯と漁村地帯だったが、西岸はリゾート感が出てきた。実際、ビーチのほかに海水浴場やキャンプ場など、アクティビティを楽しめる場所が多い。





9月も下旬だというのに水遊びに勤しむ人が沢山で、残りはBBQ。



常滑市に入ると、やや海沿いから離れて内陸部を往くようになる。




「セントレア、見れないのか」
「それでは海岸沿いを往きましょう。次を左折してください」






ちょっと脇道へ。



バイパス状のR247を離れ、旧街道筋の常滑街道へ逃げる。R247のさらに西側を往く道で、海沿いを通るのだが……





海が見えなくなった。






「なんか、防波堤高くない?」
「あぁ、それはですね……」


エルコスさん曰く、「昭和34年の伊勢湾台風の教訓」なのだとか。昭和3大台風のひとつとして知られるこの台風が引き起こした高潮被害によって、このあたりの土地は完全に水没し、多くの犠牲者を生み出してしまった。

実は沿線を走っていると、そのときの遺構がそこかしこに残されている。





古参のメンバーが生まれる20年前に、甚大な被害が出たという。






「今でこそ対策が進みましたが、当時の技術では防げなかったものと言われています」
「これが契機で富士山レーダーが誕生したんだよな」


そんな訳で、常滑の海岸線からセントレアを拝もうとしてみたものの、高い堤防に登らねばならなかったりする。




「大先生大先生、堤防に登る前にですね」
「写真だな?」






なんにもないただの堤防なんだが、本当にここでいいのか?



そして、改めて堤防の上に立つと、ちょうどセントレアから離陸していく飛行機が見えた。





セントレアというのは、「Central」と「Airport」の組み合わせ造語なのだそう。






地下通路


常滑からは県道34を使って半田市に戻る。ルートを描いてみると、ちょうど半田市のあたりがインフィニティの交点となる。





ここを右折。






「ようやく半分か」
「いえいえ、三河安城起点なので、もう行程の3/4は走ってます」


半田市から先、衣浦港を渡る方法は2つあるが、先述のとおり衣浦トンネルが通れるか確認してみようと思う。もし通れなかった場合、ここから上流にある衣浦大橋を経由することになるが、橋まで北上して橋を渡り、当初予定で寄り道先だった碧南火力発電所まで折り返しの南下をしなければならなず、結構な遠回りになってしまう。




「正面突破だ」
「それでは、このまま直進してください」






半島南部の丘陵地帯とは異なり、勾配変化が少ない快走路になっていた。



で、お互いにノープランで、地図上では繋がっているという理由で県道34→52→265と、海沿いのルートを選んでみたのだが、





……おや?






「うーん、既にキナ臭い」
「道は繋がっているようですが……」


結論から言うと、道は繋がっていた。ただし、車道の通行が禁じられていて歩道を往くのだが、橋梁部が階段にスロープという形式で、どうしても押して移動せざるを得ない。





そのあと、案内板にはない「川を渡る」というムーブが発生。






「おまけに、先程の案内板とルートが異なりますね」
「思いっきり工事してたな」






衣浦臨海のKE65が走っていった(実質DE10)。



衣浦臨海鉄道の機関車を横目に、工事中の砂利道なんかをうまいこと通り抜けながら、日本ガイシの東門らへんまで出てくると、





シャットアウト。









出られない。









「歩行者通路は空いてますよ。そこから出ましょう」
「オリエンテーリングになってきた」


で、片側二車線の県道52を北上するのだが、このあたりは工業地帯で、かつ港湾道路特有の大型車の往来の多さがあり、車道を走るのはちょっと勇気が要る。その結果、





また橋を渡るのか……









もっかい歩道橋。









「今日は押してばっかりだなぁ」
「これが最後だといいのですが……」


結局のところ、衣浦トンネルへの最適解は、このルートではなく、一旦半田市街まで戻り、そこから県道265に乗り換えて直進する、ということになる。




「ハテ、どこかで聞いたことがあるような……」
「今朝、通りました。ミツカンの本社があったあたりです」


なるほど、そこらへんに出るのか。





もうこのあたりは完全に工業地帯で、あちこちが工場か倉庫。



さて、歩道橋の押しを2回こなした結果、ようやく衣浦トンネルまで来た。到着は14:52。





トンネル料金所。最近では珍しい非ETC。






「何とか明るいうちに碧南に着けそうだな」
「距離と時間で考えると、むしろ明るいうちに着けないほうが問題なのですが」


で、このトンネル、先述のとおり自転車や歩行者は通行できない。





……のだが、






「あ、ありましたよ!」
「関門人道トンネルと同じ分離方式だな」


看板が出ているので迷うことはないのだが、料金所脇の側道に入り、港にぶつかるところまで往くと、歩行者用トンネルの案内板が出てくる。





どうやらここらしい。






「この建物だな」
「わたしも初見なのですが、エレベーターで降りるタイプですかね?」






異界への入口。









ダンジョン。









「無理無理無理無理無理無理っ!?」
「まだ慌てるような時間じゃないw」


こんなん怖くて初見だとビビるわ、というビジュアルをしているが、れっきとした人道トンネルの入口であり、ここから一気に地下11階まで降りていく。







もちろん押して。










まだ地下6階……






「うぁぁぁぁ……  こわいよぉぉ……」
「よしよし、ちゃんと感情を出せるようになったな」


当然といえば当然なのだが、このトンネル、驚くほど人がいない。半田側にしても碧南側にしても、出た先はガッツリめの工業地帯なのだから。





ようやくトンネル部分へ。






「こういうところで悪党が……」
「言うなぁぁぁぁっ!?」


ただ、見た目の不気味さとは裏腹に、トンネル内は照明が完備されているほか、監視カメラでの24時間監視が行われている。あと、地下に降りていくにつれて聞こえてくる軽快なポップサウンド




「ラジオ流してくれてんだ」
「こんなとこ、無音だったら本気で発狂するかもしれません」


そんな要素もあって、僅かながら怖さを和らげてくれている。トンネル自体はおよそ480メートルくらいで、15分もあれば通り抜けが可能である。ただし、トンネル内は乗車できない





つまり結構な距離を押して移動しなければならないということ。






「結局、押しか」
「ラスボスがいましたね」






どちらの入口にも、「押して通行」が示されている。たぶん乗ったら放送で注意されるタイプ。



……で、言わずもがなだがこのトンネル、無料で通行可能ではあるが地下部分に至るまでの竪坑区間にエレベータなんてものは存在しない




「11階分上がるの、結構しんどいぞ!?」
「エレベータを用意する程の需要がないのでしょうね」






……明かりだ!






碧フィニティ


15:09、衣浦トンネルから脱出。トンネルを出ると、半田市側の入口が見えた。





パッと見では大した距離じゃないんだけどね。






「あそこから来たのですね」
「とんでもねぇルートだったな」


ただ、お陰で碧南火力までのショートカットができた。





ここから碧南市。



余談だが、トンネルの碧南側は、テニスコートやグラウンドがある大きな公園になっていて、まあまあ賑わっていた。




「案外、関門人道トンネルと同じような使われ方も……」
「わたし達が通った時、たまたま人が居なかっただけかもしれませんね」


下関−門司間を結ぶ関門人道トンネルは、地元の人がランニングコースに利用していた。テニスやサッカーの試合前に軽く足慣らしを……  みたいな使われ方はあるかもしれない。





ちょっと休憩。



そんな公園の管理所脇に自販機を見つけたので、一服がてら残りのルートの確認をする。これから碧南火力発電所を経由して西尾市に入り、そこから北上して三河安城へ。




「残り、ざっと30キロ弱になります」
「結構走ってたんだな」


走行後のログで確認すると、今回のルートの総距離は125キロほど。今いる位置で走破距離が約96キロであり、実はまあまあ距離を稼いでいる。それに、





これが現在の100キロスコア。






「100キロ地点での経過時間ですが、6時間42分です」
「とりあえず及第点だな」


観光や食事、休憩といった『走っていない』時間を加味した、いわゆる補正なしの経過時間で7時間を100キロを走り切れるかどうかの指標としていたので、今回はクリアということに。




「ちなみにネットタイムだとどれくらい?」
「概算ですが、4時間と20分くらいですね」


本当であれば、グロスでこれくらいを出したいのだが、いかんせんもうそんな若くない





とか何とか言いながら進むこと暫し、



さて、そうこうしていると、目の前に巨大な建造物が現れた。




「ここが碧南火力発電所です」
「初めて見たけど、結構でかいな」


15:31、碧南火力発電所JERAパーク着。





青と白のギザギザがアクセント。



ここには火力発電所の展示館が併設されているほか、公衆トイレと自販機があるので、一息つくにはちょうど良い。





碧南の「碧」って、青とも読めたな……



今日び、火力発電というと煤塵や硫黄をまき散らすみたいな負のイメージが付きまといがちだが、実際のところはかなり軽減されていて、むしろどうやって環境に配慮するかを本気で取り組んでいる。碧南は従来型の石炭火力であるが、硫黄酸化物の除去の際に発生する石膏をセメントの原料に再利用するなど、取組に注目が集まっている。




「さて、これでひととおり見て回ったわけだが……」
「では、三河安城に戻りましょうか」


なるべく最短距離をリクエストしたところ、エルコスさんが示したのはR247→県道41→県道309で米津まで出るルート。





だいぶ陽が暮れてきた。



田園地帯を抜けて西尾市に入ると、少しずつ家屋が増えていき、いつしか完全に市街地となる。





往来も増えて、時折渋滞していることも。



米津橋の南詰で県道12号にぶつかるので左折。これであと10キロほど直進すればフィニッシュとなる。




「如何でしたか?  今回のルートは」
「手軽に楽しめる面白いルートだった」


そもそも知多半島が未訪であったから行ってみたかったこと。それに加えて衣浦トンネルや碧南火力、そして半田市の醸造蔵街並みなど、ワンデイで楽しむにはバラエティ豊かだ。おまけに全体通して125キロほどなのと、軽い丘越えはあるものの本格的な登り区間は皆無で、比較的初心者でも楽しめるのではないだろうか。





米津橋を渡って、米津周辺まで来た。道はここから先で片側1車線に。






「ただ、まあ、道が狭いところがあって、追い抜かされる時に気を遣う」
「半島の海岸線沿いは、しばしば滞留させてしまいましたからね」


付け加えると、全体が∞の型となるインフィニティ・ルートを模索していたこともあって、新たな開拓ができたのはよかった。もしかしたら、新たなコンテンツとして成立するかもしれない。




「じゃあ、最後、コンビニ寄って休憩してからフィニッシュするか」
「あ、それでしたら、この先の交差点にありますよ」






ああ、ここだね。



という訳で、米津八百目交差点脇のコンビニで一服入れることに。










よねづはっ……  あぁ!?









米津ハッピーアクメって書いてる。









「随分と性に奔放だなwww」
「コラァァァァァッ!」


これ自体はweb上で盛り上がったのは知ってるが、まさかここにあったとは。





もう残りそんなでもないけど、念のためにバッテリーチェンジしておく。



……あと余談だが、三河安城まで残り7キロの地点で、





どうみても0系。









今、このタイプ走ってない。









「走ってないどころか、完全引退したよな」
「2009年に系列廃止されていますね」


そんなこんなで、遠くに高層ビル群が見えると、そこが三河安城駅である。到着は17:34だった。





東横インがあるところは、たいてい駅がある。



時刻を調べると、このまま新幹線に乗るよりも、在来線を乗り継いで豊橋まで行き、そこからひかりに乗り換えたほうが早着できることがわかったので、在来線ホームに向かう。





つまりここからエルコスさんを担いで移動する。






「実はですね、新幹線駅と在来線駅、まあまあ距離が離れてまして……」
「在来線駅のほうで輪行すればよかったかぁぁぁ」






余談だが、三河安城は新幹線停車駅だが、快速や新快速は通過するというミラクル。












TITLE:第3のインフィニティ
UPDATE:2025/09/26
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/365_heki/365_heki.html