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349:ヤマイドウ19〜レブイチ!〜



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。



本日のルート (powered by Ride With GPS)






ブルーサンダーエースvs道路交通法



6:30、定刻通りハートランドフェリー・アマポーラ号は礼文島・香深港に向けて出港した。





いよいよ離島もこれが最後。



その礼文島であるが、この島の走破を以て、エルコスさんは定期航路の設定された北海道の離島5島をすべて制覇したことになる。




「嬉しいといえば、嬉しいんだけどな……」
「どうしたのです?  やけにテンションが低いじゃないですか」


南から奥尻、天売、焼尻、利尻と離島があり、最後の礼文島なのだが、この島だけは他の4島と異なる特徴がある。それは、島を周回する道が存在しないということ。すなわち、島一周というルートが引けず、ハブとなる香深港から放射状に往復するルートしか引けない、ということである。





あと、天気は若干怪しい。






「気にするような大事ではないんだけどね」
「そうですよ。案外楽しいかもしれませんよ?」


エルコスさんに慰められること暫し。定刻8:25に、船は香深港に到着した。





利尻もそうだが、ボーディングブリッジ付きの新ターミナルが完成していた。



さて、礼文島といえば何か、と問われると、真っ先に思い浮かべるのが桃岩荘ユースホステルとその送迎車であるブルーサンダーエース号である。





ブルーサンダーエース号(2011年8月撮影当時)。



かつて(たぶん現在も)、そのアクの強さで名を馳せたユースホステルの送迎には、恐らくは送迎とは無縁の幌トラックが用いられ、その上、最先端の音声認識システムが装備されていたらしく、乗客は大声で







「発車オーライ!」






……と叫ばないと動かないどころか、時にはバックしたりすることもあったとか。そんな桃岩荘のブルーサンダーエース号であるが、





比較的よく見かけるタイプの送迎車。









ハイエースになってた。









「普通の送迎車になってる」
「道路交通法とコンプライアンスの波に飲まれたのですよきっと」


さて、エルコスさんを復元して、どこから巡ろうかを検討する。




「スコトン岬、礼文空港、桃岩展望台、そして知床の終端の4つなんだが」
「スコトン岬でよろしいのでは?」


エルコスさん曰く、スコトン岬の沿線に、島唯一のセイコーマートがあるらしい。当然のように何も仕込んできていないので、どうやら最適解のようだ。





あと、なんか路面湿ってるな……



それでは出発……  の前に、礼文町のカントリーサインで一枚写真を撮っておく。





恐らくこれ1枚しかないと思われる。






「離島には港のところにカントリーサインが掲げられているのですよね」
「焼尻と天売は例外だけどね」


まずは道道40号を北上していく。スコトン岬のある須古屯地区までは、片道でだいたい25キロ程度らしい。道程も、基本的には平坦で、久種湖の手前と岬直前にちょっとした登りがあるくらい。




「なので今日は完全にポタリングです!」
「本当かぁ?」






島唯一のコンビニは、トレッキング客と荷揚げ直後で大混乱だった。



セイコーマートに立ち寄り、簡単に補給を済ませたら、それでは岬を目指そう。





スコトン岬へ。






唐突に始まるRTA



道道40号は島の東側を縦に貫いている。常に右手には海原が広がっている。




「路面濡れてるの、波の影響?」
「いえ、どうやら降雨があったようです」






ただ、湿ってるのは局地的で、空は少しずつ明るくなってきた。



宗谷地方の降水確率は、予報通りだと40%で、天気は曇りだった。しかし、北海道の曇り予報と降水確率は基本アテにならないことを経験則で知っていた。のだが……




「外したか?」
「大丈夫かと。天気は回復傾向にあります」


これで降雨だと最悪だ。ポンチョは運搬車に置いてきてしまったし、今日のお召しはあんちくしょう。できることなら汚したくはない。





……おや?



だが、心配は杞憂だったようで、徐々に路面は乾いてきたし、空も明るさを増していった。





コンブ干し出したので、たぶん大丈夫だと思う。



そういえば、所々で同じフェリーの乗客だったバックパッカーを追い抜いたりしたのだけれど、




「礼文島はトレッキングの聖地みたいな場所になっています」
「あの愛とロマンの8時間コースのこと?」


島の西側はリアス式の断崖が連続し、車両が通れるような道は開通していない。そのかわりにスコトン岬から香深港近くの元地地区まで、総延長約30キロのトレッキングコースが開拓された。断崖の上からの絶景に加え、高山植物の宝庫となっていることから、このトレッキングコースを目的に来島する旅人が多いという。

前述の愛とロマンについては、桃岩荘ユースホステルによって命名されたものと言われているが、実際には10時間近くかかるという文献もあり、その走破時間は諸説が豊富にある。ただ、言えることはなかなかなレベルのコースである、ということ。





駐車場付なので、レンタカーで乗り付けるトレッカーも多いらしい。






「ほら、あちこちに登山道があるでしょう?」
「ちょうど登っていくところだな」


そんなトレッカーたちを横目に走ることしばし。ようやく最初の登りが。




「実は右折して、金田ノ岬を経由すると、登りを回避できますが」
「まさか」






高台を横断する区間。といってもせいぜい65mほどのアップ。



当然のように登り勾配に挑む。大丈夫、魔法を利かせればあっという間にカタがつく。そして下った先に久種湖が広がっていた。一応、日本最北の湖なのだそう。





湖が見えた。






「岬まではあと8キロといったところですね」
「風が追い風になった。ツイてるな」


船泊地区から西に進むこと8キロでスコトン岬に着くのだけれど、ツイてることなんてそうそうなく、目の前には岬へと続く割と激な登りが。





あの道らしい。






「こういう時は?」
「インナーを惜しげなく使う!」


で、登り切った先に、絶景が広がっていた。





金田ノ岬方面を望む。



この岬自体は、海に向かって突き出した位置にあり、宗谷岬やノシャップ岬と比べると、遥かに岬感に溢れている。周囲も荒涼とした風景が広がっていて、最北端の岬を名乗るのに相応しい。




「違います大先生。およそ6.5キロほど最北端じゃないです」
「ホントだ。最北限って書いてあるわ」






掲げられてる看板には「最北限」と書いてある。



そんな最北限の岬から眺める景色は、過度な観光地化が成されていない、いぶし銀のものだった。




「大先生に問題です。今、わたし達がすべきことは何でしょう?」
「三脚を立てること」






ここが日本の北限にある岬(一番北にあるとは言ってない)。






「我々はカメラ片手に、何をしているのだろうか……?」
「細かいことは置いておいて、次はあの方向にですね……」






トド島とエルコスさん。



さて、岬を詣でる観光客を尻目に、ひたすら自撮りをカマすおっさんとチタンフレームだが、程なくしてやることがなくなったので、次のポイントに移動する。




「次は礼文空港だな」
「海岸線沿いに金田ノ岬を目指してください」






次は空港かー。



なお、礼文空港は2024年現在は営業を休止しており、定期航路は一便もない。ただ、廃止されているわけではなく、毎年整備が成されているほか、救急搬送用のドクターヘリなどは現在もこの空港を利用しているという。空港自体は岬の高台に設置されているので、漏れなく







激坂がセットでついてくる。










ホントに空港直結の道か?  と疑いたくなる。






「まあ、地形を考えたら、そうなるよな……」
「もちろん、行かれますよね?」






まあ登るさ。






「お疲れ様です。それでは三脚をですね……」
「ご褒美なのか、おねだりなのか……?」






ご同業も登り始めたようだ。しかし結構エグかったぞ?



10:47、礼文空港着。




「おねだりを要求します!」
「素直でよろしい」






礼文の空の玄関口。



空港自体は劣化が著しいが、礼文島民の総意としては定期航路の復活を渇望しているという。昨今の情勢が完全に落ち着き、観光客の往来が増えてくれば、それも叶うのかもしれない。





先述のとおり、金田ノ岬を経由すれば、登り勾配とは無縁になる。



さて、このあと、距離が近いからという理由で金田ノ岬も詣でて、ふと時計を見ると10:55。




「稚内に戻る船の時刻ですが、14:20と17:10になります」
「香深港に戻るのに1時間、そこから桃岩……  アレ?」






なんか計算が(良い方向に)狂いだしたぞ?



今日は70キロ強の走行距離を見込んでいる。これは利尻のときと同じくらいなので、17:10の便には余裕で乗れることは判っていた。のだが……




「いや、14:20のに間に合わないかこれ?」
「間に合っちゃいますね」


こうなると、俄然やる気が出てきた。多少の向かい風はこの際頑張っていこう。





遠くに利尻富士が浮かぶようになった。



こうして、香深港に戻ったのが12:04。ここから元地方面に向かう。礼文島の東西を貫くこの道を通り、礼文島の西側に至る。





右折して桃岩トンネルへ。






「どうやら、新しいトンネルが開通したようです」
「ということは、タイムトンネルは塞がれてしまったのか」






旧トンネル坑口。ここまでは高難度の登りが続いていた。



新トンネルによって礼文島の東西は容易に結ばれるようになったものの、旧トンネルは完全に閉鎖され、現在では礼文林道を経由するトレッキングコースの起終点ポイントと連絡するために、旧道の一部が細々と残されている程度。

桃岩荘ユースホステル曰く、ここには独自の時差が存在し、このトンネルを境に時間が30分進んでいるとのこと。また、このトンネルの中で、知性と教養と羞恥心を捨て去らなければならないとも。




「故に、タイムトンネル、と」
「まあ、あくまでも桃岩荘の独自文化なんだけどね」


なんだぁフィクションなんですね!  そう言って笑うエルコスさんだったが、ふとサイコンのほうの時計を見たら、





礼文着いた時点でズレてた(香深港到着後、8:42くらいに撮影)。









9時間遅れていることが判明。









「マジで時差が……!?」
ガッ!「……………………!?(プルプルプルプル)」


思わず腰を抜かしかけるエルコスさんだったが、ここから近いサハリンの時差は進み2時間。……一体どこのタイムゾーン拾ってるんだこれ?





新トンネルの開通で東西の往来が便利になった。



ちょっとしたホラーを感じながら、綺麗に整備されたトンネルを抜けていく。元地のほうに下っていく片勾配のトンネルだが、照明も完備されていて走りにくさはない。そして、トンネルを出たら、





天気が一気に変わった。









空が晴れた。









「すごい……」
「まるで道南の海岸線に似てるな……」


正直、礼文島のことをナメてかかっていた。確かに自転車で走るには周回ルートが作れないというデメリットがあったりする。のだが……




「自然の雄大さ、という点だと、ぶっちぎりで礼文島だったんだ……」
「ね、楽しいでしょ?」


もうこうなると、何か説明したりするのも野暮ったくなる。とりあえず道の突端にある地蔵岩を詣で、





あのとんがった岩がそうらしい。



そのあと、桃岩荘方面へ戻り、展望台から猫岩を詣で、





にゃーん。






「あれが桃岩荘ですか」
「もとは鰊番屋だったらしい」






桃岩荘を見下ろす。



桃岩荘を詣でて、ふと反対方向を見上げると、





廃止された旧道跡とともに。






「トンネルはあれですね」
「ガッツリ塗り固められてたか」


ただ、旧トンネルはだいぶ高いところにあるので、新トンネルの開通はある意味有り難かったといえる。





桃岩荘の名の由来になった桃岩。旧トンネルはすぐ横にあった。



さて、新トンネルを抜けて香深港に戻ってきたのが12:55。ラストは礼文島の南端だ。




「何かあるのですか?」
「何もないよ?」






小さな漁村を抜けていき……



礼文島の南端は知床という。もともとは地の果てという意味のアイヌ語からきているのだが、その南端は、





繰り返し言うが……






「本当に何もないじゃないですか」
「まあ、強いて言うなら利尻富士が見えるくらいかな?」






天気に恵まれた。



これで礼文島の主要な道は全て踏んだことになる。香深港に戻るのだが、ここからはたったの5キロの距離しかなく、多少寄り道したとしても14:20の便に十分間に合う。




「この近くに映画のセットが残されているようですが」
「そんなに遠くないなら、ついでに寄っていこう」






礼文島には、きつい坂か、メチャクチャきつい坂のどっちかしかないみたいだ。



で、高台への急坂をインナーを駆使してじんわり登ると、





校舎のセットがあった。






「これかぁ」
「『北のカナリアたち』という映画のロケセットのようです」


なんでも、この校舎の建物は、イメージに合致する建物が他になかった、という理由から、映画のためにわざわざ建てたものらしい。

天気が回復してくれたおかげで、利尻富士の迫力ある姿が美しかった。そして、同じようにこの絶景を楽しむ多くの旅人が。





意外にも本州圏のナンバーを見かける。わざわざフェリーに乗せて走りに来ているらしい。






「ナメてた。礼文島も悪くないね」
「でしょう?」


こうして、満足過ぎるほどにアチコチ回った後、13:36香深港に到着。のんびりとエルコスさんを袋詰めにしながら、ふと視線を向けると、





予約があったりするともっと賑やかだが、船の到着に合わせて出迎えをしてくれる。






「桃岩荘の送迎の方ですね」
「お客さんが多いときの送迎は、とてつもないことになってるらしいぞ?」


ともあれ、これでエルコスさんは北海道の離島5島を全部踏んだ。ようやく宿題がひとつ終わった




「もちろん、もう一度来てもいいのですよ?」
「夏は利尻−礼文航路が増えるから、それに合わせてもいいな」






これに乗って稚内に戻る。












TITLE:有名なユースホステルで名を馳せた。
UPDATE:2024/09/01
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