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335:イシイチ!



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。



本日のルート (powered by Ride With GPS)






まるで夏のよう。


7:06、石垣市街を出発。……その前に、いつかは訪れてみたかった730記念碑を拝む。





ここが日本の国道の果てで、交通の転換点。






「こんな石碑を見にわざわざ石垣まで来たんだ。とんだ物好きだよ我々は」
「よいではないですか。ガムボールマシンのために大陸を暴走する人もいるくらいです」


それでは、これから石垣島を一周していこうと思う。島一周のルーティンとして、時計回りに回っていこう。




「わたし、沖縄地域は不勉強です。地図のほうは何とかできますが……」
「俺もだ。まあ、探り探りやっていこう」


まずは県道79を北上していく。この道は西海岸沿いを北上した後、川平湾、米原と経て、伊原間というところまで続いているようだ。





石垣市街屈指の繁華街。



繁華街を抜けると、次第に琉球建築特有の、がっしりしたコンクリート壁の建物を見かけるようになった。




「台風の多い地域ですから」
「これを見ると、沖縄って感じがする」






この無骨な感じは、本州ではなかなかお目に掛かれない。



そんな沖縄らしさを感じていたところ、ある異変に気付く。現在、時刻は7:23。ところが……





……おや?






「時間、ズレてるよな?」
「キッカリ1時間ズレてますね」


brytonのサイコンは、GPSによる自動修正なので、マニュアルで時刻の修正ができない。そもそも、なんで1時間ズレてるのか、って話だが、すぐにエルコスさんが気付いた。




「もしかしたら、台湾標準時を拾っているのかもしれません」
「……あー、そういうことか」


石垣島の地理でいうと、沖縄本島よりも台湾のほうが距離が短い。そして、日本標準時との誤差はマイナス1時間。それならこの時刻のズレは納得がいく。




「これは修正のしようがないので、時間の読み間違いに注意していきましょう」
「そうだな。そのうち慣れるだろう」






途中でご同業に追いついた。彼も時差に悩まされているのだろうか。



新川公園のあたりで、一旦、県道79号を外れ、海沿いを往く観音崎のほうを経由していく。このあたりはリゾートホテルが数軒立ち並んでおり、併せて夏には賑わってそうなビーチが続いている。




「こんなリゾートホテルに……」
「やめとけやめとけ、一泊するだけで片道運賃くらいするぞ?」






公式サイトで調べたら、一泊一人、どんなに安くても60Kスタート。片道どころか石垣往復できるわ。



そんな野暮ったい話をしているうちに、県道に復帰。そしてすぐに、石垣空港方面へと続く県道211交点に。





このあたりは国立公園なので、指定場所以外でキャンプができないらしい。






「そういや、名蔵ダムを取りこぼしてたよな」
「はい。ここから往くのが良さそうですね」


昨日、石垣島のダムを詣でていたところ、どうしても時間の都合で来訪できなかったダムが2つ。そのうちの1つが、この近くにあるらしい。





県道211は、直進する豊島を横断して空港の脇に出る。あと、昨日通った。



県道211で内陸部に入り、案内看板に従って進んでいくと、





台湾農業者入植顕彰碑と水牛がお出迎え。









着いた。









「なんで水牛が?」
「八重山地域の農業の発展に、大きく貢献したそうです」


そもそもこのダム自体が、石垣農業の灌漑対策で造られたという経緯がある。これによって農業の安定度が増した、ということだ。





離島のダムなので上水道目的かと思いきや、農業の安定のために造られたものらしい。



余談だが、石垣を中心とした八重山諸島に於いて、現在でも水牛の存在は大きく、近隣の西表島では、移動手段としても重用されている。観光の側面は強いが

ダムは赤っぽい色をした岩で固めたロックフィルダム。石垣にあるダムは、基本的にフィルダムである。そして、その堤頂を渡って、管理事務所の脇を抜けると、県道79へ復帰できるらしい。





がっちりガード。









閉まってた。









「なんとかズルできんものか……?」
「監視カメラで見られてますよ。ホラ、来た道を戻りましょう」


渋々、堤頂をもう一度渡ることに。ただ、県道79まで戻るのに、来た道をそっくり戻る必要はないらしく、パイナップル畑の中を通り石垣やいま村の近くへと出られる道があるそうだ。




「ちょっと道が複雑なので、ナビしますね」
「坂がキツそうだな。インナー入れとくか」


その道というのが、要するに農道である。





こんな道。



あちこちでガサガサ音が鳴るような道。まあ、ハブとかではないと思うが……




「石垣島にもハブはいるそうです。あまり叢のほうには近づかないように……」
「だな。ヘビ好きじゃないし」


さて、道なりに進むと、まるで目印かのように巨大なパラボラが建っていた。





遠くからでも目立ってた。






「デカいなー」
「国立天文台の施設のようですね」


電波干渉の技術を使い、天体の様子を観測する装置とのこと。日本にはここのほかにあと3局あり、それらと協調することで、直径2300キロメートルサイズの望遠鏡と同等の性能を得ることができるのだとか。




「ただ、まだ開いてないのか。見学はできなさそうだな」
「残念ですが、写真だけでも撮っておきましょう」






外から見る分にはご自由に、とのことだった。



その後、やっぱりインナーは必要だったな、という程度のアップダウン農道を経て、県道208に復帰。





絶対左の茂みになんかいるだろー、って雰囲気。



石垣やいま村で一旦小休止することにした。考えてみたら、ここまで水の補給を一切してなかった。




「だから何度言ったらわかるのかなぁぁぁこの人は!?」
「いやまさか、ここまで商店も自販機もないとは思わなかったわ」


ここでようやく水だけは補給できたのだが、飲んだ水が秒で汗に変わり、ボタボタと垂れ落ちるのには驚いた。自覚はなかったが、この時点で相当暑いらしい。




「ほぼ夏だなこりゃ」
「いいですか?  今回は補給失敗すると、命に関わりますからね!」






やいま村には、ちょっとした土産物屋があるらしい。時間が早過ぎて営業してなかったが。



これはポイントとして押さえておくべきことだが、基本的に補給ポイントは少な目である。コンビニも、石垣の市街と空港にはあるが、それ以外のところには存在しない。




「あちこちの集落の人、どうやって生活してるんだ?」
「それぞれの地域に、共同売店という名前の商店があるみたいですね」






参考までに、翌日の西表で撮った共同売店。こういう感じのが一部集落にある。



これは八重山諸島特有のものかもしれないが、点在する集落の中心部に、この共同売店というのがある。いわゆる、街の中心というヤツか。




「見つけたら、積極的に利用していきましょう」
「そうだな。もしかしたら食べ物も調達できるかもしれないし」


さて、休憩を済ませたのち、ふたたび県道79に復帰する。





名蔵湾を左手に見ながら。



名蔵湾を左手に見ながら北上していくと、時折ご同業の姿を見かける。自転車というと隣の宮古島のほうが有名だが、石垣のほうもそれなりに自転車で楽しめる。

んで、崎枝のあたりで海沿いから離れ、ちょっとした丘越えになる。しばらくは海の景色から離れ、原生林のような雰囲気に。





海から離れると、結構ワイルド。






「なんか鬱蒼としてきたな」
「どうもこの先に、川平湾があるようです」


その鬱蒼とした森の中に、県道207交点がある。県道79は右折するという、ちょっと変則的な交点だ。





ここ。県道79は右折。






「川平湾のほうへ行ってみませんか?」
「まあ、折角だから見てみようか」


交点を直進し、しばらく森の中を進んでいくと、唐突に森が開け、住宅地になった。





川平集落。



川平湾は、石垣島では有数の景勝地として人気が高く、透き通るような湾の色は自然の影響で幾重にも変化をするらしい。また、湾内の珊瑚礁を楽しむために、船底がガラス貼りになっている、グラスボートが多数運行されている。





最近、川平湾のトイレが綺麗になったようだ。






「んじゃ、ちょっと見てくる」
「行ってらっしゃいまし」


ただ、絶景ではあるが、それよりも気になることがあった。なんで湾のど真ん中に船放置してるんだ?





営業するときになって、浜辺に持ってくるというスタイルらしい。






「潮汐が激しいのですね。岸辺だと、干潮時に横転しかねないからでしょう」
「だから水深のあるところに係留してるのか」


珍しい運用方法を見た。ちなみに、このときは潮汐の差があまり大きくない時期ではある。





湾ばかりが目に付くが、航海安全と無病息災を見守る神様もいる。



さて、川平湾の絶景をボンヤリ眺めたあとは、ふたたび県道79号に戻る。ここからは川平、米原、桴海と小さな集落を越えていく。県道の終点となっている伊原間までは、およそ20キロちょっとの距離。

海沿いの道ではあるが、適度なアップダウンがある。そして一つ一つがまあまあ斜度




「脚を使わされる」
「無理はダメですよ」


今回、一応エナジージェルを仕込んできているが、補給物資はこれしかない。どこか商店があれば菓子パンのひとつでも仕込めるのだが……





杉田、阪口、そして釘宮(高橋もいるよ)。ちなみに厳密にいえば店の屋号は違う。









なんでも屋だけどさ。









「天然パーマの人がいそうだ」
「その前に、営業しているのでしょうか?」


まあいい。急ぐ行程でもないのでゆっくり往こう。





海はきれいなのだけれど、今どの辺を走ってるのだろうか……?






「随分とこまめに停まりますね」
「現在地がわからん」


で、珊瑚礁が美しいと評判の米原ビーチに着いた頃には、すっかり干上がっていて。





かつては、旅人が集うキャンプ場だった。






「暑いですね。水分は足りてますか?」
「きついねぇ。消費が激しいわ」


ところで、まだオートバイに乗っていた頃、沖縄上陸を計画してキャンプ場の有無を模索していたことがあった。実は沖縄にはキャンプできそうな野営地がほとんどなく、本島に至っては壊滅的な状況であった。




「ハブがいるからではないでしょうか」
「まあ、それも含めてもともと野営文化がないのかもしれん」


そんな中、旅人が使用する沖縄県内のキャンプ場として、この米原キャンプ場の名が度々上がっていた。その当時は本島と石垣の間をフェリーが結んでいたので、二輪車の往来も活発だったのだろう。





それが現在ではこのありさま。






「今はやってないみたいだな」
「休止とありますが、実質廃止のようです」


エルコスさん曰く、「周辺の宅地化が進んだ結果と、マナーの悪化が原因」らしい。あと、元ライダー視点で語るなら、2023年現在石垣島へ渡るカーフェリーは存在せず、オートバイは貨物輸送という選択肢しかないのもあるのだろうな、と。





報道に拠れば、閉鎖の方向で進んでいるらしい。ブームによって食い荒らされたみたいだ。



ただ、この辺の景色は秀逸で、マリンスポーツが活発なこともあり、今後違う形での再開が見込まれているのだそう。




「それはそうと大先生、そろそろお写真を……」
「丁寧語にすりゃいいって話でもないんだが」






結果、なんでもない所を自身で探すのが一番、という結論に落ち着く。



底原ダムに至る県道87号交点を過ぎ、浦底、伊土名、野底といった集落を通過していく。このあたりは高台区間になっていて、だいぶ下のほうに海を見下ろすような感じ。




「なんかギャーギャー言ってるんだけど」
「独自の生態系がありますからね」


途中、沖縄っぽい家並みとアップダウンを迂回できないかという皮算用のために、あちこち脇道に入ってみたりもする。ちょうど県道に対して海側に集落があるので、畑の中を突っ切る道越しに、透き通ったブルーの海原が見えた。





シーサーも見守ってくれる(だいたいどこにでもいる)。






「ちらちら、海が見えるのが楽しい」
「事前情報通り、最高のロケーションじゃないですか」






浦底湾のあたり。



ただ、そんな最高のロケーションの中に、ヤツも当然のようにいるらしい。





寅さんを殺ったことで有名なアレ。






「……ホントにいるんだな」
「わたしイヤですよ、ハブに絡まれるの」


ハブは元々夜行性で、日の当たらない茂みなんかに自ら特攻かけない限り、まあ大丈夫だとされている。それに、見かけても相手にせず逃げてしまえば、大事に至ることはないだろう。余談だが、毒性の強いホンハブと異なり、石垣島に生息しているのは、やや小型で比較的毒性が弱いサキシマハブだ。




「毒が弱くても噛まれたら重症化しますよ」
「そもそも噛まれたくない」


さて、県道79に復帰し、もう暫く森の中を往くと、大浦川を渡った先で視界が開けた。





交点のあたりで地図を見てみると……






「伊原間の集落に着きました。ここで県道79は終わりです」
「ということは、この近くにダムがあったな?」


石垣島にあるダムカード発行対象のダムのうち、最も北にある大浦ダムがこの近くにある。先程渡った大浦川沿いに遡上する道も見つけた。




「ただ、ダムは常時施錠がなされていて、堤頂まで辿り着けないようですが」
「ダメでも下から見上げるくらいのことはできるだろう」






果物畑の脇を往く。おいしいパイナップルやマンゴーが収穫されるらしい。



こうして、広大な田園地帯を突き抜ける道を、ゆったり登っていった先に、





いらっしゃいませこんにちはー。









フルオープン。









「神様が囁いてやがる。『ダムを取りこぼすな』って」
「なーwww」


どうも工事か何かをしていたらしく、それが原因でオープンしていたようだ。ただ、エルコスさんが指摘していた通り、通常は天端への立ち入りが禁止されているようで、それの裏付けが取れたのも帰京後の話。




「ただ、どう見ても観光させるような碑があったり看板が建ってたり……」
「これは謎ですね」






看板自体は、だいぶ昔から据え付けてあったような古さ。謎だ……



いずれにしても、これで石垣の全ダムをコンプリートした。意気揚々と伊原間の集落に下っていくと、遠く向こうに海原が見えた。




「こういう道、好きだよ」
「わかります。そういえば、佐渡の定点もこんな感じでしたよね」






そしてこれから、我々はあの見えるほうに行くのだよ。






これたぶん熱中症だわ。


伊原間の交点を左折。県道206号へと入ってすぐに、新垣食堂という八重山そばが食べられる店がある。




「ちょっと塩分補給しよう」
「少し早い昼食ですが、よろしいじゃないですか」






もはや伝統芸能。









臨時休業。









「なんでーっ!?」
「いつも通りの流れになったわ」


しょうがないので赤缶チャージ。石垣島全域に言えることだが、とにかく補給できる場所が限られている上に11月でも夏気候なので、水分が手に入るところでは躊躇せずに水分を補給すべきである。





麻薬だ……



ここからは石垣島最北端の平久保崎まで走り、来た道を引き返すピストンルート。途中、明石食堂という八重山そばの名店がある以外は、基本的に海沿いの原野を往く快走路だ。

問題は、その明石の集落にある共同売店が最後の補給箇所であり、そしてまんまと通り過ぎたこと。




「も、申し訳ありません!?  一旦戻って……」
「だいぶ来ちまった。ジェルの手持ちがあるから、自販機頼みで往けるだけ往ってみよう」


エルコスさん曰く、「ダメダメダメダメっ!?」なのだが、既に我々はひとつ山を越えて、平久保の集落を過ぎようとしている。戻るとなると今来た丘越えをもういっかいこなさなければならない。





というより、岬を目指したほうが近いってレベル。






「大丈夫。無理しないから」
「もぅ……」


さて、しばらくは果実畑を両脇に見る丘陵地帯を北上していく。このあたりは、小さな集落があるほかは平原が広がるという、北海道にも似た雰囲気を感じるつくりになっている。気温は全然北海道じゃないが。





明石の先で、道は西海岸沿いを往くようになる。海の風景もそれに合わせて入れ替わる。



集落の周辺には商店や食堂があるらしいのだが、どうも見つけられなかったり、そもそも地図が古くて既に閉店していたりして存在しなかったり。要するに補給できない訳で。




「ジェル持ってきててよかった」
「本当ですよ。ですが、菓子パンのようなものも持って来るべきでした」


やはり明石の売店で何か買っておくべきだったか。あるいは、出発前に石垣市街で買い込んでおくべきだったか。





帰路のときに撮った明石共同売店。右の駐車場は明石食堂のもの(後述)。



まあ悔やんでもしょうがない。さすがにどん詰まりの集落まで往けば、何かしら手に入るかもしれない、とやや楽観的に考えよう。左手には海原が、右手には畑と山間部が垣間見える道をさらに進んでいくと、太朗窯工房を通り過ぎた。地図上では、このあたりで石垣島最北端の平久保崎へ至る道の交点があるはずだが……





地図上では、どうもこのあたりらしい。






「直進して平野集落を目指し、平野ビーチを詣でるプランもあります」
「どっちに商店と自販機があるか、ってことだな」


岬のほうは、自販機はありそうだが土産物屋のような商店とかあるような雰囲気ではない。対する平野集落は、商店のひとつくらいはありそうな気がする。

加えて言うと、今、両脚がだいぶ攣りかかってる。たぶん水分不足だろう。そして、




「岬までは登り勾配、集落までは下り勾配です」
「平野ビーチが先だなこりゃ」


たぶん今登りをこなしたら十中十で脚が終わる。一旦下りの道を選んで、体勢を立て直すことに。





下った先に集落があり、そして終端があった。



果たして、平野の集落には売店のような店舗はなかったが、自販機があって、立派な琉球建築の東屋が併設されていた。




「たすかったぁぁぁぁ……」
「まったく……」






たすかったぜ。



エルコスさんが呆れる中、冷たい水をガブ飲みする。……のだが、




「ヤバイ、メチャクチャ入る、汗が噴き出る、クラクラする……」
「やっぱり!  倒れる寸前じゃないですか!?」


これは完全にナメてた。思った以上に石垣の11月は、本州の夏に等しかった。クラクラする感じからして、軽い熱中症だったのだろう。とりあえず体を休めたくて、東屋のソファに寝転ぶ。

頭がボーッとなる感覚は次第に落ち着き、周りの様子を確認するくらいの余裕が出てきた。ここ平野の集落は、石垣最北の集落にして、高齢者の割合が極めて高い、限界集落となっているらしい。




「おじぃとおばぁしか居ないみたいなことが書かれてましたね」
「まあ、商店がない規模の集落ってんで、薄々感じてたけどね」


そんな集落であるが、実際にはちゃんと子供たちもいる。この自販機が彼らのオアシスみたいになっているようで、ちょっとだけホッとした。





しかも挨拶されてちょっとドキドキした。



ところで、平野ビーチはこの先道なりに進み、海岸線へと降りたどん詰まりにあるという。





石垣島馬広場という場所のようで、彼らはヨナグニウマという種類らしい。






「あ、馬がいますよ!」
「確かこの辺だったような……」


海岸線へは、集落の高台から下る必要がある。畑に据え付けた農道然とした道だけに、帰りは激坂必至だ。




「ま、回復したし何とかなるか」
「あ、砂浜が見えましたよ!」


叢を掻き分けるようにして進んだ先に、美しい砂浜が現れた。





理由は不明だが、一瞬「クロコダイル・ダンディー」のパッケージを想起した。なぜだ?






「うわぉ……」
「綺麗ですね……」






これが石垣最北端の景色よ。



砂浜が真っ白で、空の青、海の青と絶妙に対比する様は圧巻そのもの。しかも、これだけ綺麗なビーチにもかかわらず、ほとんど人がいない。そもそもこのビーチに至る看板なんて一つもなく、まるでプライベートビーチのよう。




「エルコスさん、写真撮ろうぜ!」
「それわたしの科白……w」






どちらが先に言うか、というファストドロウになった。



さて、おっさんとチタンフレームがグラビア撮影よろしくわちゃわちゃと写真撮影していると、ふと西側の崖上に、何か建造物があるのを見つけた。




「あれは?」
「あれが平久保崎の灯台ですね」


うん、見なきゃよかったわ。あれ結構高いぞwww





うーわー……






「あそこ往くんかぁぁぁ」
「大丈夫。前に進めばいつか着きますから!」


簡単に言ってくれるな。まず平野ビーチからの脱出で激坂なんだぜ?





じゃあ、登るか……



そして、平野の自販機前を過ぎ、先程通り過ぎた平久保岬への分岐。もう疑いようのない登りの連続だが、ちょっと面白いものを見つけた。





この隙間に脚を取られるので、動物にとっては結界になる。






「テキサスゲートだ」
「野良の馬でもいるのですかね?」


まあ、このあたりは黒毛和牛の放牧地で、あちこちで馬や牛を見かけたから、あながち有り得ない話ではないのかもしれない。





到着。それにしても「わ」とか「れ」のナンバーが多いな。



道は、岬の手前で小さな駐車場と共に終わった。岬へは徒歩らしい。




「どうやら連れていくことはできないみたいだ」
「お気になさらず。行ってらっしゃいまし」


石垣島最北端の岬には、気象測器が併設された灯台があった。東シナ海を望むこの灯台の光は、さぞ頼もしいものなのだろう。




「ちなみにこの灯台、2016年に『恋する灯台』に選出されているそうです」
「どんな理由でよ?」


エルコスさん曰く、「総合的な評価」とのこと。どうやら、灯台周辺の景観や、ここに至る長閑な道程などが評価の対象となっているらしい。確かに、それは理解できるが……





……って書いてあった。元が薄くて見づらかったので頑張って読んだが。






「長閑かぁ?  やや死にかけたんだが?
「そもそも自転車で来る需要がどれほどか、思い返してみてください」


辺りを見回してみても、自転車で来ているのは我々ただ一組。いや、もっといてもよくね?




「ご同業がゼロなのは恐らく偶然と思いますが、やはりレンタカーが多いみたいですね」
「まあ、それが普通か」






これがさっきビーチから見上げた灯台のようだ。



先述のとおり、石垣島へは自家用車やオートバイの乗り入れは高難度となってしまった。ここを訪れる観光客のほとんどは、レンタカーやレンタルバイクを利用するのが一般的である。




「まあ、わたし達は特別、ということですね」
「そうか?  俺はエルコスさんと一緒なのが普通だと思ってたんだが」


石垣島、もとい沖縄の地をエルコスさんで踏む。これが最優先事項である。よって、ハナっからレンタカーという選択肢はなかった訳で。そんなのエルコスさんが知らないはずないのだが、案の定顔を真っ赤にさせてやがる




「ちょっろwww」
「……イジワル」






ここから眺めるビーチの景色も悪くないな。






八重山そばと讃岐うどんの類似点


さて、県道206を南下し、さすがにそろそろ何か食べないとなぁ、という感じになってきた。




「ジェルだけで何とかしようというのが、そもそも間違いです」
「仰る通り。そういや……」


共同売店があった明石の集落には、明石食堂という八重山そばの名店があったはず。そこで八重山そばを堪能するのも悪くない。




「ソーキそばとか、うまかったんだよなぁ」
「あ、ですが……」






あんだけの台数のクルマが停まってたから、イヤな予感はしてたんだけどさ。









単位が[h]レベルの待ち。









「さよなら、俺のソーキそば(´;ω;`)」
「あー、やっぱり」


エルコスさん曰く、「思いっきり沖縄時間で営業している」とのこと。すなわち、







えれぇ待たされる。










仕方ないので売店で菓子パンとガリガリ君を買った。






「……まあ、やっぱりコレに落ち着くんだよな」
「いやいや、諦めるにはまだ早いですよ?」


売店で買った菓子パンとガリガリ君でハラを満たし、伊原間の交点まで戻ってきたのが14:17のことだった。ここから石垣市街まではざっくり30キロで、余裕を見て2時間あれば問題はないハズ。……と、ここでエルコスさんから、




「大先生、ダムカードはどうなさいますか?」
「あ、そういえば……」






ここからR390に変わる。



今日来訪した2つのダムに加え、昨日巡った3つのダム。この計5基が石垣島におけるダムの全てであり、同時にダムカードの発行対象となっている。

それぞれ、ダムカードの配布場所に微妙な差異があるが、これらを一括して入手できる場所がある。八重山平和祈念館という場所で、これは石垣市街にある。付け加えるなら、17:00までの営業らしい。




「少し急ぐか?」
「余程のトラブルがない限りは、間に合うはずですが」






イメージとしては、市街までの中間地点に空港がある、という感じ。



それなら大丈夫か。なんて思ってエルコスさんを走らせていたら、余程のトラブルが起きた




「あいでででででで!?」
「だ、大丈夫ですか!?」


登りで脚を攣らせた。ギアをインナーにしてクルクル回し始めたあたりからイヤな予感はしていたのだが、案の定一発くらわされた。




「とりあえず水をかけて脚を冷やしましょう」
「やっぱり水分が足りなかったかぁ」


ここにきて、今までの補給不足のツケが回ってきた。こうなると、だましだまし走るしかなくなる。





想像以上にアップダウンがあるし、なんなら登坂車線すらある。



脚が攣るのは、水分のほかに塩分、すなわちミネラルの不足が影響することが多い。考えてみたら、今日の行程で今までのところ、塩分らしい塩分を一切取ってない




「この先に八重山そばのお店があるようです。そこで休憩しましょう」
「むしろ休憩させてください」


こうして、伊野田漁港のちょっと先、丘越えの登り坂のてっぺん付近に、八重山そばの幟が見えた。





麺処&cafeトリコ食堂。沖縄県石垣市桃里165-130






「おじゃましまーす……」
「こんにちはー……」






メニューを見ると、スパゲッティのほうが豊富。八重山そばのほか、普通の蕎麦もあったり。



その店は、ドリンクバーになっているオープンテラスと、手作り感のある木造の店舗から成っていた。店主の娘さんだろうか、手入れされた芝生の庭で遊んでいた。

店舗のほうに通された。パスタやピッツァが売りのようだが、塩分が欲しかったので定石通りに八重山そばを所望。





八重山そばセット1100円。ドリンクが1杯ついてくる。






「あぁ、うまい……」
「幸せそうで何よりです」


八重山そばは、沖縄そばの流派を継ぐご当地そばである。厳密には沖縄そばとは異なるものとして認知されているそうだが、地元民でもない限り、ほぼ同じものと思われることが多いらしい。

添え物のジューシーおにぎりも絶品。炊き込みご飯といえば魚介系のだしで炊くのが多いが、沖縄風はそこに豚だしが加わり、絶妙なコクが出てくるようだ。




「……これ、店によって個性がいろいろあるんじゃ?」
「気付いてしまいましたね大先生?」


八重山そばを供する店は数多くあり、それぞれの店にそれぞれの個性があるという。そういった店をはしごするのも楽しいかもしれない。……だが、それって、




「これ、さぬきうどん巡りのルーティーンに似てなくない?」
「気付いてしまいましたね?」






余談だが、昨晩食べたソーキそばもうまかった。



次回は、八重山そばの店めぐりというのも悪くないだろう。石垣島に限った話ではないが、片付けたはずの宿題は増え続けるな。




「それだけ、世界は面白くて、そして美しいのですよ」
「それを旅する我々は、あまりにも無鉄砲だけどな」


そんな世間話をしながら、クスクス笑うおっさんとチタンフレーム。店を辞し、空港前を突っ切り、店を出てから走ることおよそ1時間、いつしか道は、石垣の市街地に差し掛かっていた。





空港から南下していくと、少しずつ都市圏の形相を見せてきた。



16:04、石垣市街730記念碑着。




「意外ですね。この碑を詣でる観光客がいるのは」
「まあ、どれくらい意味を知ってるか、ってのはある」






そもそも、この碑が意味している時代を生きていたのは、ワタクシめよりも上の世代。



石垣島の観光資源のうち、この碑の意味というのは、それほど著名という訳ではなさそうだ。たぶん川平湾より低いかもしれない





よく見てみたら、この三角形のロゴ、2車線道路だ。



しかし、ここが日本の国道の最西端であり、そして日本の交通の転換点となった場所でもある。




「最南端も兼ねていれば、より印象的でしたが……」
「まあこればっかりは仕方ない」


このあと、八重山平和祈念館に寄ってダムカードを入手し、





営業は9:00〜17:00。土休日はこちらで配布だが、現地に行った証明(写真など)が必要。



本日の行程はここまで。走行距離は131.1キロだが、思った以上に消耗した。




「明日はちゃんと仕込んでから出発ですからね!」
「充分理解した。もうこんなの御免だ」






明日はここから船に乗る予定。












TITLE:これが初の沖縄(ただし仕事で来たのは除く)
UPDATE:2023/11/26
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/335_ishigaki/ishiichi.html