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309:NORI-Climb#07



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。



本日のルート (powered by Ride With GPS)






末恐ろしい計画案(未遂)


さて、Y丸本舗的には夏といえば乗鞍登山なのである。





年に一度のお楽しみ。






「昨年は散々な結果でした」
「そこは目を瞑っておくれ」


……で、7月1日にエコーラインが開通するというタイミングで、以前からやってみたかったことをやろうかと。このネタ自体はだいぶ昔に計画していたものだが、なにぶんエグいので封印していたのだ。


当初予定のルート (powered by Ride With GPS)






「上高地乗鞍林道のC線が使えれば、一気に難易度が下がるんだけどね」
「2003年の雪崩被害で通れなくなってしまいました」


んで、今年に入ってから意気揚々と乗鞍入りしたところで、とんでもないものを見てしまった。





……うっそだろ?






「まじかー」
「気のせいでしょうか。ちょっとホッとしてませんか?」


有料道路の安房トンネルは自転車の通行ができない。平湯からタクシー輪行という荒技もやろうと思えばできなくはないのだが……

どうやら今回はこのルートは無理みたいだ。いつも通り鈴蘭に向かっt……




「あ、それならば、スカイライン側を走ってみませんか?」
「岐阜県側ってことか。あっちは未訪だったな」






ほおのき平で一泊。






ハードモード


余談だが、岐阜県側の乗鞍スカイライン自体は、2002年にY丸號で走破済である。




「えっ!?  クルマで走られたのですか!?」
「この年が、マイカーで走れる最後の年だったんだ」






今は亡き料金所。夫婦松展望台のあたりにあった。乗鞍ラストイヤーと書かれているのに注目(2002年10月撮影)。



この当時は、最後だってんで畳平の駐車場は大渋滞してたりして、今の雰囲気とは大きく異なっていた。そして何より、自転車の通行が禁じられていた時代なのだ。





銀嶺荘の隣にも建物があったみたいだ。そしてマイカーの数よ(2002年10月撮影)。






「確か、それが原因でマイカー規制が始まったのですよね」
「上高地とかヒドかったらしい。そこら辺の草むらにクルマ突っ込んで停めてさ」






こんな具合で自動車天下だったのだ(1999年6月撮影)。



その後、マイカー規制が始まってからは、当然のように通る術を失った訳である。しかも、自転車に乗るようになってからも、チョイスするのはいつも長野側

そういった訳で、どうせ乗鞍に登るので、今回は変化球を投げてみることに。




「記憶があいまいなので聞くけど、どんなルートなの?」
「一言で表すなら、ハードモードです」






このあたりは濃飛バスのテリトリー(長野側はアルピコ交通)。



さて、7:30ほおのき平駐車場を出発。

ここは冬季にはスキー場の駐車場となる。また夏季には、畳平行のバスが出るターミナルとなっている。




「駐車場は、基本的にここを使うしかなさそうです」
「平湯のほうにはないの?」


平湯側だと、市街地外れのあかんだな駐車場を使うことになる。ただし、こちらはあまり勧められないのだという。





そもそもほおのき平が結構高いところにある。






「平湯市街から峠までが、ちょっと常軌を逸してるのです。……斜度が」
「距離4キロでアベレージ8.3ってどうなってんだよwww」


そもそも、スカイライン起点の平湯峠までは、どうやってもエグい登りが待っているのだという。ちなみに、ほおのき平からスタートした場合、この斜度が据え置きで距離が2.7キロに短縮されるという。




「しかも、ほおのき平からですと、アベレージが7.1に緩w……」
「いやいやいやいやいやwww」


結局のところ、平湯側とほおのき平側で比較した場合、前者のほうが







幾分かマシ






というレベルでしかないのだという。





その幾分かマシなルートで、ヒルクライムイベントが開かれるという。



さて、R158を登っていくと、Ωカーブがあらわれる。その内側には、高山わんわんパラダイスという、あfろ先生が泣いて喜びそうなホテルがある。





コテージとかもあり、愛犬家にはテーマパークのような場所のようだ。



そこからさらに登り続けるのだが、スカイラインの取り付きまでで既にエグい





勾配は5%前後くらい。まだ淡々と走れる。






「これ、もうタイムとか気にしなくていいよね?」
「さて、どうしましょう?」


まあ、この時点でエルコスさんも気付いているはずだ。今日はのんびり往くぞ、と。

そうこうしているうちに、7:51県道5号交点着。ここではトランペット型のインターチェンジ形状をしていて、本線からランプウェイに流入するのだが、





左に逸れるんだけどさぁ……









そのランプがいきなり急勾配。









「イカれてやがるぜ」
「一気に斜度が増しましたね」


その言葉通り、いきなり足腰にズドンと負荷がかかるようになった。もう真っ直ぐ進めないので、フラフラ、ヨタヨタ、登っていくことに。





このあたりでだいたい8%前後。これがずっと続くのさ。






「どうですか?  ハードモードでしょう?」
「ルナティックだねぇ」


ただ、幸いなのは天気の良さと、新緑の翠が眩しいこと。個人的には夏の時期の飛騨地方は割と好きな地域なので、とりあえず勾配のことは忘れて走りに徹しよう。





送電線の下を抜けていく。






「大先生、楽しんでますか?」
「……今日のエルコスさん、ファイザー指令に見えるわwww」


これもしきたりさ、的な展開になるかと思ったら、「なぜそのチョイスなんですかwww」と爆笑された。そんな他愛もないやり取りをしていると、突然視界が開け、青空が見えた。





県道485交点が見えてきた。その交点が平湯峠である。



8:27、平湯峠着。かつてのR158屈指の難所だった6.3キロ区間をシバくのに、ざっと1時間かかった計算だ。




「なんか峠の碑があるね」
「大先生、三脚持ってきてますよね!」


もちろんだとも。抜かりはないぜ。





屈指の難所でもあるが、ここからの絶景は筆舌し難い。






激坂区間






乗鞍スカイラインの起点。



ここからがスカイライン区間になるのだが、とりあえず水の残量を確認しておく。




「まあ、確認したところでどうにもならないんだけどね」
「仰る通りです。畳平まで補給できるところがありませんから」


この区間がハードモードと言われる所以がこれである。途中で補給できる箇所がほとんどないのである。

一応、先述のホテルとかで何とかなりそうな気がするものの、全区間通じて、商店はおろか自販機すらない。

エコーライン側であれば三本滝や位ヶ原で補給することは可能なのだが、スカイライン側はそういったのがひとつもないので、事前にストックした物資がすべてとなる。幸い、ボトルの水はまだまだ残量がある。




「最後まで、もつかな?」
「残量はわたしも気を付けておきますので、できるだけ無理をなさらずに」


……と、唐突に気付いたのだが、スカイライン入口付近には、ちょっとした駐車場のようなスペースがある。規模は大きくないものの、自由にクルマを停めてよさそうだし、何よりご同業がセットアップ中じゃないか。





駐車場扱いにはなってないが、登山客向けに開放されているっぽい。



これなら、ほおのき平ではなく、こちらに運搬車をデポすればよかった。そう抗議すると、エルコスさんはこう返す。




「ここを使うのはロマンがありませんから」
「……今日のエルコスさん、指令じゃなくてシュートの方だわwww」


「誰もわからないですよそのガルフォースネタ」とクスクス笑うエルコスさんと共に、スカイラインに突入する。料金所跡には管理小屋があり、そこでこの先の道路状況を教えてもらった。曰く、2ヶ所ほど片側交互通行区間があるとのことだ。




「まあ、自転車だからイザとなれば降りればいいし」
「潔い判断ですね」


ところがどっこい、その発言はすぐに現実のものとなった。





こんな斜度がそこかしこに。






「……きっつい」
「えーっとですね、およそ3キロほど先の夫婦松展望台まで、こんな感じです」


怖かったけど、敢えて標高アップ量を聞いてみる。そしたら247mとのこと。アベレージ9とかじゃんかwww

これじゃあ畳平に着くころには完全に脚が終わりそう。もう開き直って、1キロ間隔で撮影タイムを入れながら走ることにしよう。




「まあ、実際に景色は素晴らしいのですが」
「それを台無しにするレベルで勾配がエグいわ」






いくつもの沢を越える。このあたりだって勾配はきつめ。



実際に走っていても、あっちへフラフラ、こっちへフラフラしないと全然前に進まないという状況。もちろん、ワタクシめが衰えてるという説も否定できないが。




「むしろそちらなのでは?」
「くっ……!?  言い返せないっ」


付け加えると、この区間はマイカー規制が敷かれてはいるものの、定期運航の路線バスが普通に通るし、工事関係の車両もバンバン通る。あんまりフラフラしていると後ろからハネられかねない




「頑張って。ハイ、まっすぐ!」
「鬼だぁぁぁ」


なお、このゲロが出そうな激坂であるが、にゅうかわの塔とそこに隣接する夫婦松展望台まで来ると、少しだけ緩むという。





にゅうかわの塔。






「ちょっと休憩していこう」
「折角なので、展望のよいところに停まりましょうか」


ここの夫婦松展望台には、補給ポイントはないもののトイレはあるので、休憩ポイントとして活用するといい。そして、ここからの景色は秀逸で、




「大先生!  写真撮りましょう!」
「お、いいねぇ」






ほおのき平のゲレンデ方面を望む。



ストックしておいた補給食をパクつきつつ、残りの行程を確認すると、残りはだいたい10キロほど。どうやら行程の半分は攻略していたようだ。




「半分の地点で2時間弱か」
「ということは、畳平には11:30くらいの到着でしょうか」


できれば4時間は切りたいと思うのだけど、このあと訪れた望岳台という展望スポットにて、なんか無理じゃね?  と思うに至る。





あそこから登ってきたのですよ。






「あそこから登ってきたのですね」
「もう、ゴールしてもいいよね?」






規模が小さいので見落としそうになるが、休憩するには最適なポイントだろう。






もうひとつの乗鞍


このあと、若干緩くなった登り勾配とともに、ヘアピン区間が連続する。




「ここで標高をさらに上げるのか」
「少しずつですが、木々が低くなりましたね」






イイ景色。



ということは、景色がよくなる、ということ。そこかしこで撮影タイムを入れつつさらに登っていくと、起点から10キロのキロポストを通過する。




「残り4キロですが、最後の2キロは平坦に近い道みたいです」
「つまり、あと2キロが山場ってことか」






そして、遠くを見渡せるようなポイントが増えてきた。



ところが、ここに来て脚がほとんど回らなくなった。補給をミスった、というよりかは、空アクビが止まらなくなっているので、たぶん高山病気味なのだろう。




「大先生が高山病なんて、珍しいのでは?」
「うーん、こんなの初めてだわ」


暢気に言ってはいるが、既に標高は2500を越えてきている。空アクビだけでなく、息が続かない。




「ちょ、ちょっと待ってくれない?」
「大丈夫ですか!?」


呼吸を整えないとキツい。情けない話だが、少しずつ登っていくしかなさそうだ。





この龍がうねりまくったような道を上がってきた。



森林限界を超えて、ヘアピンを2つ越えると、標高は2600に達する。




「この辺の雰囲気は、渋峠に似てるな」
「言われてみれば……」






そういえば志賀草津道路も有数の山岳道路だったな。



そして、左手に駐車スペースがあらわれた。平湯温泉下山口バス停がある。




「この先で登りは終わりですよ!」
「信じていいの!?  その情報!?」


そして、抜けた先には、もうひとつの乗鞍があった。





桔梗ヶ原。



南北に貫く乗鞍岳の稜線上を往くスカイラインの、その両側に広がるハイマツの樹海。高山植物の楽園とも称される絶景が広がっていた。

長野側となると、これほどの高原地帯となると麓くらいしかなく、この景色は岐阜県側でしか楽しめない。言わば、もうひとつの乗鞍である。





どこまでも広がるハイマツの平原。






「ご褒美、みたいなものですね」
「やめとけやめとけ。しっぺ返し喰らうぞ?」


その読みは的中し、散発的にではあるが登り区間が現れる。





最後のあがき。



ただ、その区間もさほど長くなく、やがて遠くのほうにエコーライン交点が見えるようになった。




「あとちょっとですよ!」
「そのちょっとが長いんだ」


そして、11:19に交点到着。なんとか4時間は切れたが、すっかりフラフラである。





起点より14キロポストがある。






「お疲れ様です。来ましたね」
「来たけどさ、久しぶりにしんどいわ……」





ガムボール的な発想


いつも通り県境で撮影タイム。





実はさっきの桔梗ヶ原周辺は、微妙に長野県域を通っていたりする。






「大先生!  写真撮りましょう!」
「結局ここで写真撮るんだな」






今回は日本一標高が高いバス停にて。



そして、定石通り畳平へ。





畳平バスターミナル。






「銀嶺荘の右側にあった乗鞍山荘がなくなってるな」
「平成18年頃に閉館したようです」


残された銀嶺荘は、改修工事の最中であったが、お馴染み日本自動車道最高地の標はそのままであった。




「撮影だな、撮影だよな」
「もちろんです!」






ここが日本の車道でもっとも高い場所(厳密にはさっきのバス停のほうが高いが)。



そして、定石通りお守りを購入し、お約束の蕎麦を所望。





いずれまたkazに食わせる予定の蕎麦。






「この1杯のために登ってるんだ」
「そんな内容の映画、昔ありましたね!」


そして、ひととおり今年の乗鞍を楽しんだ後、我々は下山を開始する。





改めて見る稜線上の道。とても魅力的に見える。



さて、今回は岐阜県側を攻め立てた……  というよりかはコテンパンにされた訳だが、様々な媒体で言われる、「初心者は避けたほうがいい」「上級者向け」という理由はよくわかった。

序盤の長い距離登らされる激坂、補給箇所と休憩ポイントがほとんどない、標高2000を越えてからの攻防、などなど、不利な要素は数え上げるとキリがない。





あと、長野側と比較して、ご同業の姿は多くない。



しかし、桔梗ヶ原周辺の絶景、その手前のS字区間、そして森林限界を越えたあたりからの飛騨地方の展望など、ここを走った者だけが目にするインセンティブもあることは事実。

いつもはエコーラインばかりの人も、たまにはちょっと背伸びして、このハードモードを攻略するのは、決して夢物語とはならないだろう。





飛騨の夏空はホント魅力的なのさ。






「それで、大先生だったら次回はどちらを?」
「どちらでも。だけど岐阜側なら平湯峠スタートな!」






ほおのき平には12:58着。












TITLE:岐阜バージン
UPDATE:2022/07/10
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