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308:ヤマイドウ14〜南富良野インフィニティ〜



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。



本日のルート (powered by Ride With GPS)






イントロです。


久しぶりに自走で訪れた羽田空港は、浦島太郎だった





川崎方面に繋がってるようだ。






「あんな橋あったっけ?」
「多摩川スカイブリッジですね。小島新田方面のアクセスが良くなりました」


目まぐるしく変化を続ける空の玄関口であるが、ターミナルに乗りつける手順は相変わらず。環八沿いにトンネルを抜けて、いつも通り第二ターミナルへ。





似つかわしくない光景。



久しく飛行機輪行なんてしていなかったから勝手を忘れてるんじゃないかと思ったが、実際にはそんなことはなく、12:00新千歳行きの便に無事搭乗。





ちょっと遅れた。これによって後述のハプニングに繋がる。



のち13:25新千歳着。エルコスさんを回収し、軽く昼食を食べておく。何せ、これから向かう地域にはコンビニどころか商店があるかすら怪しいから。




「いけねぇ、空気抜き忘れた」
「最近は与圧がしっかりしているので、案外大丈夫みたいですよ?」






とりあえず地物っぽい何かを戴いておこう。



さて、次の列車は14:42だが、飯を食ってるうちに気が付くと時刻は14:30。




「ちょっと急ぎましょう!」
「えーっと、カッパと三脚と……」


帰りの着替えと、今回の行程でまず使わないであろう諸々をザックに詰め替え、そのザックは空港のコインロッカーへ。戻ってこの荷物を回収する必要はあるが、道中背負わずに済む。これも今までやってきたテクニックのひとつ。




「間に合いそうか?」
「ちょっとギリギリですね」






何せ列車の本数が限られているので、乗り損ねると致命傷になる。



それでも発車5分前に改札に到着。これで乗り遅れはなくなったので、安心してトマムまでの往復を購入。そして14:42、快速エアポートに乗って、隣の南千歳へ。




「南千歳は対面乗り換えだったから、これで一息つけるな」
「あ、その運用は2020年のダイヤ改正で……」








オォォォオォォイ!?






大慌てで跨線橋を渡って隣のホームへ。エアポートの増発によって対面乗り換えの運用が終了したわけだが、その結果のこれは解せん





どうにかこうにか、予定通りに来ている。



さて、14:48釧路行きのおおぞら7号に乗車。一路、東へ向かう。

今回、事前情報で天気は絶望的に悪いことが判明している。あとは、どのタイミングで雨が降り出すか、だ。





南夕張駅。






「路面、しっとりしてますね」
「雨の馬鹿野郎」


そして、16:08のトマム到着時には、





早朝これならDNSってレベルのヤーツ。









びっちゃびちゃ。










もう諦めたよ儂ぁ……






慌てるとロクなことがない。





「今日の宿泊地まで、ここから約25キロありますが」
「最悪だわー……」


エルコスさんを組み立てるかどうか――――  そういうレベルの降雨である。そして、宿は占冠の市街地に押さえたので、ここから自走しなければならない。念のために調べてみたら、次のバスは2時間後。占冠に停まる特急とかちも、概ねそれくらい待たなければならない。





参考までに、これが駅前のバス停の時刻表。






「どうなさいます?  一応、ハイヤーの連絡先もあるようですが?」
「まさか、自走だ自走」


幸い、トマムから占冠市街地までは完全な下り基調。漕がなくてもとりあえず前には進んでくれる。

なので、ここはもう全てを受け入れよう。ポンチョを取り出して、粛々とエルコスさんを復元しにかかる。……のだが、




「あ、デジカメ忘れてきた」
「どこにですか!?」


バッグの中に入れておいた、……と思っていたコンデジが入っていないことに気づく。新千歳までは確かにあった。ということは、




「コインロッカーの中だ」
「ちょっとぉぉぉっ!?」


さすがに取りに帰れない。どうも、急いでいるうちにすっかり失念してしまったようだ。ただ、アクションカムは無事なので、静止画は動画から切り出すか、あるいはスマホで撮ればいいのだ。




「大丈夫だ、問題ない」
「イーノックじゃないんだから……」






ようやくスタートできる(自業自得だが)。



さて、16:30トマム駅発。占冠の市街地を目指す。





とりあえず26キロ走る必要がある。



今回、事前に天気が最悪であることが判っていたので、こちらも雨装備を整えておいた。といっても、ポンチョが新品になったのと、シューズカバーを追加しただけだが。




「跳ね上がりが気になるねぇ」
「荷物になりますが、パンツも必要でしょうか?」






ちなみに写真はすべて停止状態で撮らねばならない。ふと見るとカタツムリがいた。



雨天走行時に気になるのが、足下の濡れである。どれだけポンチョでガードしていたとしても、路面から跳ね上がる水分で靴は容易に濡れる。それはシューズカバーをしていても同様のようで、




「靴の中がひんやりしてきた」
「やはりシューズカバーでも防ぎきれませんか」






ゆえに、トンネルはすっげぇ有り難い。



結局、靴をぐしょぐしょにしながら、17:24にR237交点着。





ここまで来れば、あともうちょい。



ここを左折して3キロほど走ると、占冠駅に至る。市街地はさらに先で、鵡川を渡った先になる。





市街地に到着。






「宿に向かう前に買い物をしてください。このあたり、閉店時間が早いですから」
「18時に閉まるのかよ」


一応、郵便局の向かいにあるセイコーマート系列のコンビニ・ハマナスクラブが、20時まで営業しているとのことだが、基本的に占冠村には深夜まで営業しているコンビニはない。また、飲食店もほぼほぼないので、買い出しに失敗すると文字通り飢える




「なんとか買えた」
「何よりです。それでは、宿にご案内しますね」






遊季館全景。



今日の宿は旅亭  遊季館さん。占冠の市街地エリアに於いて、数少ない宿泊施設である。頼めば一泊二食のサービスもやっているそうだが、明日の出発時間を早めたいと思っていたので、今回は素泊まりで利用した。一泊6050円。




「明日は天気持つだろうか……」
「降水確率から考えて、運次第ですね」






とりあえず地物でおっぱじめる(天然ものとは言ってない)。






上フィニティ


明けて翌日、空には雲が残るものの、晴れ間もしっかり見えていた。





これは、もしかして――――!






「午後から降雨があるようです」
「短期決戦になるか。できるだけ早めに出発しよう」


5:20、遊季館を出発。





まだちょびっと路面が濡れている。どうなることやら……



このままR237を北上するが、まずは定石通り、占冠駅に寄っておく。





特急しか停まらない駅。



今回のルートは、かなやま湖を交点とした8の字形状の周回ルートであるが、これには元ネタがある。富良野・美瑛広域観光推進協議会のサイクル部会が公表している南富良野周辺の推奨ルートの大部分を踏襲している。このルート自体は以前から知っていたが、それは、





まだ貼ってあった。









長年に渡って駅に掲載されてるから。









「これ、確か2015年の時にもありましたよね?」
「なんなら、レンタサイクルの広告もその時のままだ」






2015年当時。ウソついた、広告は新しくなってる。



現在も道の駅でレンタサイクルを行っているという。ただいかんせん、占冠に停車する列車の本数が絶望的に少なく、特に新千歳に戻る便は、14時の次が20時まで存在せず、このあたりがレンタサイクルの利用を難しくしているといえる。




「おまけに隣のトマムは25キロ離れてるし、バスも一日2本だ」
「な、なかなか難しいですね……」






そんなことより、昔ここで一夜を明かしたんだった(もう今はやりにくいな)。



そんな占冠駅を詣でてから、かなやま湖方面への登りに取り付く。かつて交点付近に原商店という小さな店があったが、現在は薪の無料販売に変わっていた。





ここから登っていくよ。



さて、標高513mの金山峠であるが、北海道にありがちなアウターで処理できるタイプの緩めな登り坂が続く。ここの沿線には湯の沢温泉という一軒宿がある以外は原生林に囲まれた秘境区間。じんわりと登っていると、道路脇の森の中からガサガサ音がする




「熊と鹿、どっちだと思う?」
「笑えないのでやめてくださいっ!?」






ここでも一泊できるらしいが、ちょっとお高いらしい。



その湯の沢温泉から、登り勾配が一段きつくなる。といってもアウター案件だ。





峠の文字が見えた。



なお、金山峠はトンネルで越える。このトンネル内に占冠村と南富良野町の境界がある。





峠のトンネル。



ここから金山の市街地までは下り勾配が続く。印象としては、金山側のほうが勾配がきつめ。




「熊とか鹿とか、飛び出してこないよな……?」
「ちょっ……!?」






一気に下っていく感じ。



これは占冠側の標高が高いことを意味している。事実、JR北海道内で最も標高の高い駅は、占冠村にあるトマム駅だ。

そんな訳で、金山市街には6:27着。ここまでで概ね1時間強、といったところ。





この看板を境に、住宅が広がってくる。






「これは早いのか遅いのか……?」
「とりあえず順調なのではないかと」


午後からの降水確率を見ると、折り返しとなる富良野駅は午前中に通過したい。猶予はあと5時間といったところ。エルコスさんがいう通り、とりあえずは問題ない進捗なのだろう。





富良野まで23キロ。2時間あれば楽勝な距離だ。



金山の市街を抜けると、道は再び下り基調に。このまま、R38交点まで楽ができる、――――と思っていた。




「なんか加速が鈍いけど、これってもしかして……!?」
「向かい風ですね」


思えば過去のヤマイドウは、ほとんどの場合で風との戦いだったことを思い出した。どうやら今回も風に翻弄されるような感じらしい。まあ、北の大地を走れるということで、そのあたりは大目に見ようと思う。





そういえば、ちょうど運動会の準備中って学校が。なんとか開催できそうだ。



6:49、下金山駅着。ここで、富良野行きの列車と邂逅する。近い将来、この駅は廃線の憂き目に遭うことが確実視されているだけに、少しでも記録に残せれば、と思う。




「結局、生き残れないみたいだ」
「そんな……」


とはいえ、地方交通の限界が近づくどころか超えつつある昨今、余程のことがないと逆転はあり得ない。これも時代の流れなのだろう。





まだ廃止と決まったわけではないが、自治体がバス転換を容認している状況だ。



丁度、富良野行きの各駅停車が到着した。部活動に参加するのだろう、若い学生が列車に乗り込んだ。今やこの駅の利用者は、学生たちと鉄道ファンくらいのもの。





この日常の光景も、永遠には続かせてくれないようだ。






「……行こうか」
「そうですね」


出発してすぐに東山やなぎ交差点。R38との交点だが、ここを右折する。富良野市街へは左折が基本なのだが、





なお、R237は左折して富良野までR38と重複。最終的に富良野に至る。






「推奨ルートは右折です。麓郷という地域に向かうようですね」
「麓郷?」


その地名ではあまりピンと来なくとも、作品名で表すと多くの人が理解できる。

北の国から。あの昭和の時代に一世風靡した作品の舞台となった場所が、麓郷という場所である。そこは富良野の市街から約10キロほど東の山に登ったくらいの場所に位置するのだが、今いる位置から直通できる道があるのだという。




「それほど遠くないですよ」
「まあ、他に道があるわけでもないし」






旗を集めなくなってから疎遠になりつつあるホクレン。



んで、右折して15分も走らぬうちに道道253交点着。ここを左折するらしい。





もう少し直進して、西達布側からアクセスしてもよい。



ここの交点には、ゲストハウスEBISANが店を構えている。宿泊ができるようなので、このあたりのベースとしても良いかもしれない。




「ただいかんせん、交通の便が悪い」
「ここだと、富良野駅から自走ということになりますね」


さて、麓郷への道、こと道道253号線であるが、先ほどまでの下り基調とは打って変わって、ふたたび登り坂多めの線形となる。





しかも若干の向かい風。ヒルクライムでも風の影響は大きいようだ。



このあたりは、富良野地区の牧場地帯になっているほか、東京大学の演習林が連なっている。そこを掠めるようにアップダウンを繰り返していくのだが、金山峠の感覚が残ったままなので、このあたり全てアウター進行




「またやりましたね?」
「いつものことだ」






写真をせがむ遷移金属。



こうして道なりに進んでいき、少しきつめの登りを34×28で処理すると、道は下りに転じる。このあたりから、麓郷の地名がそこかしこに現れるようになる。





「北の国から」の麓郷です。



それにしても加速しない。下り坂なのに。




「補給もしてなさ過ぎですよ」
「じゃあちょっと休憩するか」


何にもない道端で、ストックしていたクリームパンをパクつく。いつも通りの展開だ。





本日のお召しは、タコ助野郎さんとこのDIRT HERO。



だが、のんびりしていると、顔にポツポツ当たる雫の気配。もう雨脚に追いつかれたか!?




「路面の濡れは全くありません。まだ大丈夫です」
「まだ、ってところが不安なんだよな」


ちょっと行程を急ごう。





街まで来た。



住宅が多く見えてきたところが県道544交点。推奨ルートとしてはここを左折なのだが、どうやらこのあたりは、先述の「北の国から」のロケポイントがあちこちに点在しているのだという。




「右折して3キロほどで、五郎の石の家があります」
「89年のドラマで出てきたやつか」


ただし、営業時間外らしく、閉まっているとのこと。まあいいや、せっかくなので行くだけ行ってみよう。





あと3キロか……



ところで、推奨ルートがなぜこのあたりを指定したか。走ってみて理解できたが、そこには北海道らしい自然豊かな景色が広がっていた。





webアスペクトは3:2だけど、これだけはスマホサイズ18:9で載せたかった。



ドラマのロケポイントとして観光地化はされているものの、ちょっと移動すれば手つかずの景色が残されている。ようやく、北海道を走っているんだと実感できた。




「土日の弾丸スケジュールだけど、やればできるもんだ」
「来てよかったですね!」


さて、8:31に五郎の石の家に着いた。案の定、営業時間前だった。





わかっていた結末。



ただ、それよりも驚きなのが、





500円かかるらしい。






「カネ取るのかぁ……」
「観光地ですから」


もちろん、施設の維持管理費用として貴重な収入源となるのは理解できるが、ここは我々の求めるような場所ではなさそうだ。2002年のドラマで登場した遺言のモニュメントを見て、とりあえず観光をした気分に浸っておく。





壮大な遺言書。






「わたし達にはこれくらいがちょうどよい、と」
「まあね」


それを実感したのは、富良野の駅前で立ち食い蕎麦を食べていた時だ。





駅の中からも外からも利用できる。



10キロちょっとの下り坂を駆け降り、富良野の街並みが見えてきた辺りで小腹が空いたので、駅に併設されている蕎麦屋に飛び込んだのだが、この蕎麦屋はまだまだ北海道に夜行列車が沢山走っていた頃から店を構えている老舗。





天ぷらそば。410円也。



おばちゃんと世間話をしながら蕎麦をつついていると、自分がしたかった旅はこういうのだ、と思い直したのである。

訊くと、やはり昨今の情勢で閉店することも考えたとのこと。しかし、常連からの熱烈な声と、ここを訪れる旅人の期待もあり、店を続ける決意を固めたとのこと。そして、ちょうど昨日から営業を再開した、という。




「この偶然こそが旅の醍醐味なんだと思う」
「コンテンツは、自らが創り上げるものですから」






今年は、どんな旅人が訪れるのだろうか。



さて、富良野駅を9:45に出発。どうにか雨脚から逃げきれそうな予感を感じつつ、追い風に乗って南下を開始。





北の国からとラベンダーだけでなく、富良野は農業の重要拠点でもある。



R237と併走する市道を下りつつ、山辺駅の方面へ。




「国道を往くよりかは、走りやすいかと」
「急かされない分、気楽でいいや」


勾配図的には登り基調となっているはずなのだが、追い風のおかげでさほど苦にならない。





どん詰まりまで来た。右折した先のキャンプ場が無料だったって記憶がある。



やがて道は706号交点で一旦終わる。ここを左折して国道に復帰するのだけれど、




「交差点付近にセイコーマートがあります」
「ホットシェフがあるといいなぁ」






赤いぃぃぃぃぃぃぃっ!









あった。









「ツイてるぜ」
「今回のルートでは、ここが最後のホットシェフ併設店舗ですね」


それを聞いたら寄らずにはいられない。定番のカツ丼が食べたくなった。





チョイスに困ったらこれ食っておけば正解、というヤーツ。






「近くに山部の駅がありますよ」
「じゃあそこで食べるか」






山部駅。



補給と休憩を兼ねて、ここでガッツリ食べておく。余談だが、セコマのPBであるドリンクゼリーが、補給食として秀逸であったことを述べておく。





そして、予想だにしない状況に――――!






下フィニティ


10:58、東山やなぎ交点に戻ってきた。





ぐるりと一周したわけだ。



このまま直進して樹海峠を経るルートはヤマイドウ6のときに走破済みである。ここは新しいルートの開拓に挑戦してみよう。




「かなやま湖を経由ルートにしてみますか?」
「そっちはまだ未開拓だったよな」


まあ、厳密には昨年訪れているし、途中の東鹿越からはヤマイドウ7で走破済みではある。




「全区間を走破したわけじゃないから、そちらにしてみよう」
「わかりました」


あと、本音を言うと樹海峠の登り区間が苦手、というのもある。斜度ではかなやま湖経由よりも緩やかなのだが、いかんせん交通量が多すぎる。

こうして、来た道を戻ることにしたのだが、交点を右折した瞬間、旅の神様が笑った





これは客観的に見ても、晴れって天気でいいだろう。






「大先生!  晴れましたよ!」
「やったぜ!」


曇りのち雨、降水確率60%の予報からの逆転満塁ホームランがきた。





そして再び南富良野へ。



そして追い風。程よい平坦路。久々の良い流れ。こちらが想定していた以上に時間を巻いて、11:26道道465交点に到着。





ここを左折します。






「金山駅が近くにあったね」
「ここを右ですね」






金山駅。



金山の市街の玄関口となるこの駅にも、かつては優等列車の往来があった。まあ、停まることはなかったが。





駅自体は交換可能の2面2線。今のところ隣の東鹿越までは繋がっている。



ここから少し東に進むと、金山ダムがある。1967年に完成したこのダムによって、この辺りの歴史も大きく動いたという。少なくない犠牲も払われたという。

ところで、この駅があるのはダムの堤体でいうところの一番下のほう。つまり堤体を見上げる側の位置だ。




「ガツンと登るんだね」
「昨年も来ているのでお判りでしょう。平均7.4ほどですよ」






要するに、これからあの堤頂まで登るってことだよ。



ちょっとした釜トンネルじゃねぇか。

ダムサイト公園への分岐点よりトンネル区間となるが、登り区間もここから始まる。距離は1キロにも満たないが、それでもアベレージ7.4、最大12.3の急坂である。さすがにインナーに入れた





シェルターがないと滑るんだよ、ってことだよ。






「良い判断です。このままアウターで特攻かけるのかと」
「無理無理無理無理」


今まで散々と走らせてもらった。もはやこの程度の坂で音を上げることはない。きっついのは変わりないが




「読み通りだ」
「と、いいますと?」


樹海峠の時の記憶だと、交通量がそこそこ多くて急かされている気になったのだが、こちらは時々思い出したようにしか往来がない。勾配はきついが、道幅をいっぱいに使って走れる。つまり、自転車にとって走りやすい道、ということだ。

おまけに、トンネルを出た後は、幾寅へ向けて下り基調の快走路が続く。





湖沿いの快走路。






「来た来た来た来た!」
「ノッてきましたね!」


こうして12:10、かなやま湖保養センターに到着。





確かここも宿泊が可能だったはず。






「大先生!  写真とr……  ああ、カメラお忘れになったんでしたっけ?」
「その蔑んだ目ぇやめてよ。なんとかするから」






なんとかした。



このあと、東鹿越方面への分岐に差し掛かる。直進の道は未訪で、橋を渡った先の道は走破済み。後者なら何となくイメージが残っている。




「どうなさいます?」
「未訪の道を往こう」


そのまま道道465を直進する。





ちなみに距離はそんなに変わりない。



かなやま湖の周辺は木々に囲まれ自然豊かな景色が続いたが、やがて視界が開け、街が見えてきた。幾寅の街だ。





フィールドから街に入る地点。






「北海道の地理って、ドラクエなんだよなぁ」
「前もそんなこと仰ってましたね」


12:42、道の駅南ふらの着。この辺りでは規模の大きめな道の駅で、いつの間にかモンベルストアが建っていた。





ゆるキャン▲特需かと思うが、きっと間違ってはいないと思う。






「道の駅の出店が増えてきてますね」
「他にも福井の大野市にもあるらしい」


まあ、南富良野を中心とした周辺地域は、アウトドアのアクティビティが豊富なので、この場所での出店も納得できるし、サイクルステーションも併設されていて自転車のレンタルもできるらしい。





そして、夏前なのにもう道外のキャンピングカーで溢れてた。



今回の行程は、宿とアクセスの関係でトマム・占冠を起終点としているが、敢えて南富良野起終点で行程を組んでみるのも面白いだろう。

ところで、のんびりと休憩を取りつつ、気が付くと時刻は13:00。このあとは、落合を経由してトマムに戻るだけなので、一応フィニッシュは見えた訳だが、




「列車の時刻ですが、予定の列車は16:18発、その次が18:42発です」
「つまり、猶予は5時間ってことか」


そこにエルコスさんが付け足した。現実的には16:18がデッドラインです、と。





幾寅の交点。R38はここで左折する。



ここからトマムまでは約28キロで、登りが350アップ。ざっと2時間あれば余裕で到達できる。最短距離で往けばだが。

だが、幾寅まで来てしまうと、どうしてももう一か所立ち寄りたい場所がある。





ガイドブックに載ってない北海道がそこに。






「北落合ですね」
「どう、行けそう?」


エルコスさんが冷静に計算する。そして、出た結論が、




「間に合うとも間に合わないとも言い難い、ギリギリのタイミングになりそうです」
「うぅむ……」


これが長期休暇中であるとか、そもそもここが本州のどこかとかであれば、迷わず北落合直行である。しかし、この日は既に帰りの便が決まっていて(しかも最終便)、21時には新千歳にいなければいけない。

チェックイン他諸々の手続きを高速で済ませればよいが、万が一しくじった場合、今日中に帰京が不可能になる。エルコスさんが一本早い列車をデッドラインとしたのは、そういった点を考慮してのこと。





幌舞駅でちょっと考えてみる。






「大先生、確か、今年の夏も渡道を計画されてますよね?」
「まあね」


それならば、北落合は宿題にしませんか?  と、エルコスさんからの提案。

もう一つ付け加えるなら、今はゴキゲンだが機嫌がコロコロ変わる空模様にも気を配らなければならない。万が一にも雨雲に捕まってしまうと、最後の最後でゲンナリな気分になるだろう。




「最後の最後で、悔しいなぁ……」
「笑い話にしましょう。これも旅ですよ」


結局、北落合はキャンセルにした。それならば、と南富良野名物のなんぷカレーでも食べていこうか、と思ったら肝心のなんぷていが臨時休業中




「エルコスさぁぁぁん……」
「わ、笑い話に……  無理かなぁ?」






幾寅駅は災害による不通区間の只中にある。線路は草だらけだった。






名もなき史跡を巡りて






R38を東へ。



やや向かい風気味になったR38を東へ走らせること30分ほど。落合の市街には14:00着。

定石どおりに、落合駅へと向かうが。かつて一晩の世話になった小駅は、変わり果てていた





線路もホームも、草だらけ。






「確か、富良野と新得の間は、バス転換を容認したと報道してましたよね」
「今年に入って、そう報道してたな」


これによって、災害発生で普通となっていたこの区間の命運はほぼ尽きたといえる。あとは正式な廃止を待って、この区間はバスによる運行となるだろう。





立派な跨線橋も、板で塞がれていた。



もはや腰掛ける人もいなくなりつつあるベンチに腰掛け、一息つく。




「いつか、東鹿越で話したこと、覚えてる?」
「覚えています。昨日のことのように」


そういう時代が、すぐ目の前まで迫っている。そして、今後できなくなるかもしれない旅のスタイルが、本当にできなくなりつつある。




「寂しくなるねぇ……」
「大先生……」






2015年のヤマイドウ6で一泊したのも懐かしいもんだ。



休憩がてらぼんやりしつつ、ぽつりと呟いた。そしたら突然、突然エルコスさんが声を上げる。




「大先生!  神社ありましたよね!  神社行きましょう!」
「どうしたどうした、急だなぁ」


あんまりにもぼんやりし過ぎて、変な気を遣わせてしまったのかもしれない。





この石段を登る。



ところで、神社というのはR38沿いにある八幡神社のこと。丁度国道を挟んで駅と反対側にある小さな神社だ。以前、雪の降る時期に訪れたことはあるが、ちゃんとした参拝は今回が初めてとなる。





戦いの女神が祀られた神社。



この神社は、落合の市街にを見下ろす位置にある神社で、この立地から分かる通りこの地域全域の氏神となっている。祀られているのは、神功皇后であるという。




「第十四代天皇の御后様ですね」
「女傑、というか武の女神というか」


その伝承から、安産祈願や子育大願のご利益があるとされる、八幡の母とも称された人物である。

やがて鉄路が途絶え、往来がより一層疎かになろうとも、彼女に見守られているならばこの街も簡単にはなくならないだろう。せっかくなので旅の安全を祈願しておこう。





神社から落合駅を見下ろして。






「なーんか心配かけたねぇ」
「さて、何のことでしょうか?」






なんだかんだで9年も一緒。所有する乗り物の中でも一番つきあいが長くなった。



落合市街を辞し、すこしだけ東に進むと、トマム方面へとつながる道道1117号交点に差し掛かる。ここからトマムまでは残り15キロで、占冠村の境界までに220ほど標高を稼ぐ。




「ここまで来てしまえば、あとはのんびり走れますよ」
「いや、エグいとまでは言わないが結構登ってたような気が……」






ここを右折。



そう、ジワジワ登るのである。

途中、もう車両が走ることはないと思われる高架橋をいくつも潜り、ごく稀に通りかかるクルマに追い越されつつ、南に向かって進んでいく。この頃には、快晴だった空は雲で覆われ、今すぐにでも降るような雰囲気ではないものの、ちょっと気を焦らされる。





根室本線の高架だと思い込んでたら、どうやら違うことがこの後すぐに判明。



そして、いくつめかの高架橋を潜ったところで、来るはずのない線路の上を、カラフルな色したキハ261が通過していく。




「いつの間にか石勝線になってるわ」
「先ほど、上落合を通過したところです」


丁度そのあたりに、串内牧場へと分岐する道道136交点があった。





北海道ではこういった看板はザラ。



この道は途中で通行止めとなり、開通の見込みは限りなくゼロであるが、開通すれば新得市街への近い道となりうるルートなのだ。




「まあ、高速も通ったし、需要ないか」
「それもありますが、やはり管理が大変なのですよ」


国道であれば国の管轄で管理ができるが、道道になると自治体の管理となる。特に冬場に於いては除雪などの費用が嵩むので、需要が見込めなければ開通させないというのが本音であろう。実際、北海道全域で未開通区間を抱える道はいくつもある。

道道136に変わった道をさらに登っていき、串内の信号場を通過。





当然、敷地内は立ち入り禁止。そうでなくても列車は高速で通過していく危険ゾーン。



さらに登っていき、その登りが果てたあたりが占冠との境界になる。14:54着で、R38交点からだいたい40分くらいかかった計算になる。





占冠に戻ってきた。



ヤマイドウ7のときは、北落合の攻略に1時間40分かかっていることがデータで残っている。なので、北落合経由だと18:36着となっていた模様。




「エルコスさんの読み通りだったね」
「どうですか!  良い笑い話になりましたね!」


さて、その境界付近だが、上トマム駅逓の碑が建てられていた。どうも、かつてはこのあたりに、駅逓というものがあったらしい。





「えきてい」と読む。史跡の一つである(詳細は画像をクリック)。






「駅があったってこと?」
「交通機関の駅というよりも、宿場に近い施設です」


面積が大きく、交通が今以上に不便であった北海道に於いて、運送や通信の利便を図るために設けられていたという。

今でこそ牧草地帯で、市街地はもう少し南にずれているが、かつてはこの辺りが町の中心だったのだろう。





トマムの街までやってきた。



で、道東道トマムインターチェンジを挟んで、上トマムの市街地へ。




「そういえば、この辺の人たちってどこで買い物とかしてるんだろ?」
「交差点の辺りに商店があるようですが」






どうみても、やってない。









閉まってる。










土日にやってると思うなよ!









しかも営業日指定。









「謎だ」
「占冠の市街地まで往復しているのでしょうか?」


もっとも、この辺りの観光客の大半はクラブメッドか星野リゾートを利用するので、地元の人が何とかなれば商店などはあまり必要ないのかもしれない。





たいていの観光客は、あの双頭竜に宿泊する。



上トマムの交点を右折して、4キロほど下るとトマム駅。15:15着。




「思いの外、ちょうどよい時間だな」
「今までが時間カツカツ過ぎたのです」


ゆっくりと輪行セットアップしても、まだ時間が余りそうだ。のんびり準備して16:18の特急を待とう。




「旅の記念に写真でも、と思ったのですが、カメラがないですものね」
「……あれ、このアクションカム、静止画撮れるんじゃない?」






アクションカム自体が魚眼気味なので、ちょっと歪んで見える。









撮れた。









「大先生のバカーっ!?」
「つーか俺も今まで知らなかったわwww」






本日の出撃、ここまで!






余談






最後の最後で、雨が降ってきた。






「逃げ切れたか」
「一番理想的な終わり方です!」


こうして16:18トマム発の特急で新千歳へ向かう。このあと最終の羽田行に乗り継ぐが、新千歳に来たらコレを見ておきたい、って壁画がある。





ちなみに公衆電話は含まれていません。



国内線ターミナル3階にある壁画で、札幌市立大学の学生さんの作品。食の王国を目指してやってきた修学旅行生をイメージして描かれたものという。




「これ毎回見に来ちゃうんだよな。ワクワクするんだわ」
「北海道らしい、夢のある絵ですね!」


なお、最終便には無事乗れた。ただし、どう頑張っても日暮里までが限界で、そこからは自走で帰る必要があることを記しておく。










TITLE:土日でできるヤマイドウ(やればできる子)
UPDATE:2022/06/19
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/308_yama14/yama14.html