2012年版ガイドライン 実地踏査シリーズ スキー百本勝負 ほぼ月刊動画工房 ステキなダムn選 トップページ 用語辞典        リロード時刻:2025年04月08日(火)07時26分


293:ウルイチ!



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。






本日のルート (powered by Ride With GPS)




イントロです。


長野県下伊那郡の南端に、売木村という自治体がある。縦に長い長野県にあって、地理的に最南端に近い位置にある自治体であるが、ここの村には、日本で唯一のコンテナ型地上タンク式の給油設備が2020年に導入されたのだとか。




「給油取扱所というのは、地下タンク式が基本となるのですが……」
「あれ、定期的に更新しないといけないからカネがかかるんだよなぁ」


この定期更新が原因で、過疎地のスタンドが軒並み廃業に追い込まれているのだとか。




「まあ、もう一つはハイブリッドカー」
「2030年で内燃機関車を廃止してしまったら、どうなるのでしょうか……」


ただ、このコンテナ地上タンクが、地面を掘らなくてよいという点でコストを抑えられ、過疎地におけるガソリンスタンド問題の解決に一躍買っているのだとか。





これがコンテナ型地上タンク。ここに給油設備とタンクがビルトイン。



……で、一度見に行こうかと思っていたものの、売木村は南アルプスの山中にある秘境の山村。キング・オブ・3ケタが通るR418沿線にあるという、なかなかの好物件。




「しょうがない、今回は一人で見に行くk……」
ぎゅっ「……バカ」


お願いだからそういう不意打ち禁止な。乙参には刺激が強すぎるぜ。





おおむねこんな景色のところを走ります今回は。






日本の秘境


6:40、道の駅信州遠山郷発。





このあたりでは、ここが唯一のデポ地。



ここはかつて、南信濃村和田という地域で、遠山郷の中心部であったほか、3ケタ界隈ではお馴染みR152の補給区間として機能した場所である。遠山ジンギスという名産もあることで有名だが、




「綱引きの時に散々世話になった」
「道の駅ができたのも、その頃でしたよね」


道の駅遠山郷は2005年開業。もう16年も経っているのか。

今回は、売木村を往復するのが主目的なのだが、色々と便利なので道の駅遠山郷をデポ地とした。ただし、このままR418を往復するのでは面白くないし、走行距離も大したことはない。





そもそもな問題がそこにある。






「そもそも、R418は一部区間で通行止めになってますね」
「と、すると……」


エルコスさんと地図を睨めっこしていると、とりあえず数本のコースが描けることが分かる。

佐久間ダム沿いの県道1号を南下し、豊根村中心部に抜ける県道426号を往くルートがよさそうで、どうも通行止めもなさそうだが、




「すごい激坂のようですが」
「まあ、通れるだけマシかな?」


という感じで、とりあえず行程は決まった。早速R418を南下し、平岡市街を目指す。





まずは和田の市街から。かつてのR152本線である。



平岡の市街はこの周辺では比較的大きめの集落であり、豊橋からの特急が停まる駅でもある。道の駅からは凡そ10キロほど離れているので、まずはちょっとしたウォーミングアップのつもりで。





やがて佐久間湖に注ぐ支流。






「意外と勾配の変化がないですね」
「川沿いの道ということもあるんだろうけどね」


そして、十方峡トンネルを潜る。





路線改良できれいなトンネルになった。






「昔はこれじゃない、旧道のトンネルで通っていた」
「廃道になったのですね」


その廃道は、現道の坑口南側より簡単にアクセスできる。




「旧道は信号で交互通行してたんだ。こういったのもだんだん減ってくな」
「うぁ……  これって、鉄道トンネルの転用じゃないですか」


それを裏付けるように、すぐ隣を飯田線が通っていた。





昔は3ケタ酷道の象徴とされていた、信号付きのトンネルだった。



さて、十方峡トンネルを出てすぐに、平岡の市街地。





ここから商店が増えてくる。



平岡は天龍村の中心部であるほか、特急も停まる平岡駅は、遠山郷へのアクセス駅でもある。





龍泉閣。日帰り温泉が併設されている。



主幹となる道が一本あり、そこに市街地が形成されているのは辺境ではよくある光景である。ちなみに平岡駅も、その主幹道路上にあり、龍泉閣という村営施設が併設されている。

ここから先は、天竜川沿いに南下をするのだが、ここから先はほとんど商店のような施設がなくなるし、そもそも人の生活の匂いが激減する。





いよいよ山深くなっていく。



今回は、大半の行程がそういうルートであることがわかっていたので、食料と補水液をたんまり仕込んでおいた。




「学習してますね!」
「いやいや、本気で死んじゃうぜここ」






山の向こうに平岡ダムがあるので、その落差を使っているようだ。



対岸に平岡発電所の設備を望みつつ、アップダウンを繰り返す道を南下する。それにしても、山間部の道とは思えないほど、勾配の変化が少ない。




「走ってて楽しいですよここ!」
「それはそうなんだけどね」


トラスの天竜川橋を渡り、右岸側へ。





川遊びのファミリーがいて、「気持ちよさそうだ」とか思ったがここダムの下流だったな。



さらに進むと、県道1号との交点に着いた。7:27着。





直進するとR418、左に逸れると県道1号。



ここからR418を直進するのが最短ルートとなるのだが、距離が稼げないということで見送った。いや、それ以前に、




「通行止めですね」
「つまり、県道1号ルート一択しかなかったんだよ」






ちなみに代案なんてない。地図をどう見ても他に道がないのだ。



さて、この県道1号であるが、佐久間湖のほとりを往く道で、南下すれば佐久間ダムの堤体に至る。

そういった道なので、基本的に生活圏は皆無に近く、途中にある富山地区くらいしか生活の匂いを感じないという、究極の秘境地帯なのである。




「エルコスさん、退くなら遠慮するなよ」
「何を仰います?  わたしの準備は完璧ですよ?」






そして気付いたが、その県道1号も途中で通行止めのようだ。



それでは、突入すればエスケープルートのない究極の秘境区間に飛び込む。まずは県境を目指そう。





県境もそうだが、次の集落まで15キロある。



ダム湖のほとり、といえばR352を思い出すが、あちらと比べても勾配の変化は少なめ。アウターで処理できるアップダウンが連続する。




「展望はあまりないですよね?」
「時々チラッと見える佐久間湖くらいかなぁ?」


あと、至る所で獣の匂いがするくらいか。





電柱とかそういうものすらなくなる。



右手に壁、左手に湖、という光景をしばらく続けていると、7:51県境着。




「大先生! 写真撮りましょう!」
「よーし三脚建てるかぁ」






そういえば、何年かぶりにペダルたん登板した。



愛知県に入り、左手の展望がだいぶ開けてきた。





ようやく川から湖っぽい景色になってきた。



見事な渓谷美で、気が付くと写真撮影でしょっちゅう停まる。




「見事な景色だな」
「こんな地形ですから、水力発電の適地なのも頷けます」






照明のないトンネルだって、ここでは当たり前なのさ。



ただ、水力発電適地であると同時にこの地域は、災害とも共存を強いられている。





そもそも中央構造線が近くを走っているんだった。






「この道だってしょっちゅう通れなくなるんだ」
「秘境という言葉の意味が重たいですね」


こうして、人気のない地帯を走ること暫し、唐突に、吊橋が見えた。





久しぶりの建造物。



鷹巣橋。渡った先がJR飯田線大嵐駅で、この地帯では唯一の鉄道駅だ。




「ここからエスケープできましたね?」
「そうか。ここをエスケープポイントとしていいんだ……」


随分と寝惚けたこと口走ったが、せっかくなので寄っていこう。





愛知県のカントリーサインが掲げられている。



大嵐駅は昭和11年に開業した駅で、静岡県側の集落にアクセスする山奥の小駅であった。しかし、佐久間湖に鷹巣橋が架橋され、これによって愛知県側とアクセスできるようになると、




「旧富山村の玄関口に、役割がシフトしたみたいです」
「そのようだね。今もバックパッカーの人が降りていった」






大嵐駅。



現在でもその立ち位置は変わっておらず、静岡県側の集落人口が減ったのと相反して、愛知県へのアクセス人口が増えたとのこと。とはいえ、旧富山村、現在の地名で豊根村富山地区自体、さほど人口は多くないが。

さて、8:08に到着したところ、ちょうど天竜峡行の各駅停車が入線。





時間帯にも依るが、人口密度の割にけっこう頻繁にやって来る。






「それにしても、秘境の駅にしては珍しいしっかりした駅舎だな」
「東京駅をモチーフにしているそうです」


こりゃ、STBには丁度いいんじゃないか。なんて思ってしまう。





まあまあいいつくりの駅舎は1997年生。



そんな大嵐駅を辞し、県道1号に復帰してさらに南下すると、富山の市街地に入る。





ここも主幹の道に連なるように家々が並ぶ。地理的に平地がないのでこうなるようだ。



旧富山村は、かつて日本で一番人口の少ない自治体、と言われていた。現在では豊根村と合併しその称号は失われたが、風景だけは今も変わらぬ姿を残している。





あまり信号とか必要ない地域なのだが……






「たとえば、あの信号機、わかる?」
「はい。ですが、あそこに信号機なんて、必要ですか?」


ほとんど交通量のないこの道に於いて、信号機なんて不要である。しかし、それをわざわざ設置しているのは、




「あ! 大先生、もしかしてこの近くに学校とか……」
「お見事」


子供たちに信号の存在を教育するために設置した信号、というのがあるのだ。もっとも、




「ですが、確か学校は……」
「うん。2015年に廃校になったんだ」


言うなればこれも秘境あるある。だが、それでもなお信号機は残され、"村唯一"の常に青信号現示し続ける信号というのも、何か心惹かれるではないか。




「もしかしたら、この信号で育った子が、運輸省とかにいたりしてな」
「大先生、今は「国土交通省」ですよwww」






もしかしたら国土交通省の職員が輩出したかもしれない学校(現在は廃校)。



さて、この区間唯一の集落を抜けると、県道426交点に差し掛かる。ここから登り区間に突入する。




「それにしても、本当に秘境ですねこのあたりは」
「室町時代に開拓されなければ、もしかしたら存在しない自治体だったかもしれない」






ようやく地獄の1丁目まで来た。






夏の匂いと激坂と


その交点であるが、このまま県道1号を直進すると佐久間ダムに至る。しかし、





これか、さっきの通行止めってやつは。






「土砂崩れみたいですよ?」
「まあ、このあたりではよくあることさ」


その県道426も、あちこちで補修工事を行っていた。通れなくはないが、交通規制は行われているようだ。





とりあえず大型車は通れないということが分かった。






「あと、ここから10%オーバーの勾配が続きます」
「その情報は必要なかったwww」


そして、予定通り10%勾配がスタートする。





警戒標識の中で最も刺激的なヤーツ。






「まあ、距離はおおよそ8キロくらいですから」
「累積いくつくらいアップすんのよここ?」


エルコスさんは言った。「おおむね600ほどです」と。アベレージ7.5かよ。





えぐい登りが続くよ。



しかも間の悪いことに、天気はドがつくほどの快晴。直射日光がメタクソ痛い。




「あっつい……」
「どこかに水場があればいいのですが……」


山肌から水でも沸いていれば、ぶっかけて涼を取れる。しかし、そういった場所はなく、道路脇を流れる漆島川の流れを求めようとしても、川はだいぶ谷底に位置していて、とても降りれそうにない。





左手に川が流れているが、SPD-SLではちょっと(いや、だいぶ)キツい崖なのよ。






「久々にきっついなぁ……」
「水分を取ってくださいね。ここで倒れたら、命の危険がありますから」


8:30から登り初め、激坂に悪戦苦闘すること1時間。漆島川を渡る折り返しポイントまで登った。





その折り返しの橋ですら登り勾配。






「頂上まではもうすぐですよ!」
「もうダメ、一旦休憩……」


休憩ついでに補給食なり水分なりを摂取したのだが、ここで900mlのほうのボトルが底をついた。




「いきなりピンチだこりゃ」
「いいですね。自販機があったら強制停車ですよ?」


問題は、その自販機があるのか、って話だ。何度も言うが、ここら辺は日本が誇る秘境中の秘境。集落なんてものは点在する程度しかなく、それよりも野生動物のほうが多かったりする。





いるってよ、アイツが。






「熊も出るってさ」
ガッ!「……………………!?(プルプルプルプル)」


襲われないうちに出発し、しばらくするとトンネルがあらわれる。





霧石トンネル。



このトンネルがサミットとなり、豊根村の中心部に向けて下り勾配になる。




「お疲れさまでした。これでしばらくは下り勾配ですよ」
「たすかったぜ」


このあと、県道426、県道74と乗り継いで、愛知・長野の県境である新野峠を目指すのだが、林道やら村道やらが入り組んでいるようなので、交点ごとに地図を確認して、進む道を確認する。

ふと見上げると、そこには日本の原風景と言うべき景色が広がっていて、





ひぐらしの鳴き声がそこに華を添える。なんて良い日なんだ。






「エルコスさん、もうやめちゃおっか……」
「お気持ちは理解できるのですけどねwww」


しばらく道を下っていくと、新豊根ダムに至る県道429交点にぶつかった。





直進すると新豊根ダムに至る。



ここを右折するのだが、ここから新野峠まで、ずっと登り勾配が続くらしい。





先ほどの激坂とまではいかないんだけどね。






「エルコスさん、もうやめちゃおっかwww」
「ダメでーすwww」


さて、新野峠までの登り区間だが、先ほどの区間と比べると随分マイルドになり、県道74号線にはあっという間に到達した。





ここで県道74号に合流。阿南方面へ。






「エルコスさん大変だ。ボトルの水があと半分しかない」
「自販機が一台もないなんて……」


交点を右折し、さらに登る。途中に郵便局があるみたいなので、もしかしたらそこで補給できるかも、と考えたのだが、




「まあ、普通にないですね」
「まあ、補水液は積んであるから、最悪はそれで何とかする」






点在する小さな集落を抜けていく。最悪、水を分けてもらうか……?



ただ、諦めなければなんとかなるもので、そのあと石原の集落まで登ると、ガソリンスタンドと自販機のシルエットが目に入った。




「あ!  ありましたよ!」
「ふぅ……  これで補給ができる」






集落に1軒はあるタイプの何でも売ってそうなお店。



森商店さんで、スッカラカンになったボトルを満充填できた。ついでなので持ってきたクリームパンを噛り付きながら、隣接するガソリンスタンドの写真を撮らせてもらった。




「仕事で、乙4やることになったんだよ」
「それでですか。転職するのかと思いました」


そんな訳ない。私は生粋の電気屋さんだ。





この標識とかの素材が欲しかったのよ。



さて、補給が済んで回復もしたところで、残りの登りをシバきにかかる。ルート全体を通して、ここが最後のしっかりした登り区間となる。距離にして約3キロ、平均6%の登りだ。




「最初が最初だから、まあ何とかなる登りだ」
「確かに、足取りは軽くなりましたね」






途中、ヘアピン区間なんかもあるが、まあ何とかなるだろう。



11:05、新野峠手前の阿南町境に到着。




「ちょっと入り組んでますが、このあと県道447号を目指してください」
「入り組んでいる、とは?」


まず少しだけ下ってR151交点を右折。そこからさらに少し下って旧道を左折。ちょっと登って県道447を右折。





ここを右折する。






「なるほど、確かにわかりにくい」
「標識に従って、売木方面に進めば良いだけなのですが」


そして、ここから売木村までずっと下り勾配が続き、そして、





夏空が眩しいぜ。






「日本の原風景があらわれた」
「夏にすごくマッチしてますねここ。何だか懐かしいような……」






風情ある旅館を横目に見つつ。



11:20、道の駅南信州うるぎ着。そういえば、新しく誕生したガソリンスタンドは、道の駅の真向かいにある、ということだが、





トラロープで仕切られてますね。






「えっと、……営業してないみたいですね」
「OH……」






ちなみに位置は道の駅の目の前。






ガソリンスタンドに関する後日談。


ちなみに、ガソリンスタンドには翌日再訪した。運搬車でだが





計量器はこんな感じでシャッターの奥に。






「扱いは、屋内タンクになるのかなぁ?」
「微妙に違うみたいですね」


確かに、屋内タンクの容量は指定数量の40倍、というきまりがあり、それに則ればガソリンは最大8000リットルの貯蔵、ということになるのだが、こちらは12500リットルが届出されていた。





ガソリンだけでいうと、倍数は62.5になる。






「泡消火設備と、第5種の消火器がありますよ」
「検査済証はここに張ってるのか」






「地下タンク等」とあるから、こいつは地下タンク扱いかもしれない(地下タンクなら制限なくなる)。



あと、裏手には灯油のタンクがあり、こちらは容量8100リットル。





灯油のほう。第五種の消火設備(通常サイズの消火器)が1個設置。






「簡易タンクでもよかったのでは?」
「あれだと頑張っても600リットルが限界なんだよ」


簡易タンク貯蔵所は最大600リットルで、3基まで設置できるが、中身はバラバラでなければならない。600リットル限界説はこれが根拠で、しかもこの数値だとおよそハイエース9台分にしかならない。





第三種の泡固定消火設備が常設されている(灯油のほうにも)。



余談だが、わざわざ東京から、ガソリンスタンドを見に来た客というのは、我々が初めてだと、お店のおばちゃんは申していた。そのおばちゃんによると、地下タンクと比べて移送の回数が増えた、とのこと。よって、簡易タンクでは全然足りないが、地下タンクにすると事足りるがタンクにまつわる手間がハンパねぇ、ということがわかる。





左上にニョッキしてるのが通気管。常時開放しとかないといけないやつ。






「ただ、このスタイルが普及すると、問題解決に一石投じられると思う」
「興味深いですね」






もちろん排水溝と油分離装置(貯留設備)も完備してる。適宜汲み上げる必要があるヤーツ。






渓谷を経てダムまで。


丁度昼時だったので、道の駅でメシでも食べていくことに。何か蕎麦でも、と思ったら、本格的にうまいラーメンをやっていた。





つけめんとかも気になった。もっかい訪れてみたいな。






「ラーメンを食べるだけのライドとしても、面白いかもしれませんね」
「確かに。結構ご同業の利用も多いみたいだし」


さて、とりあえず目的は達成できたので、帰路に就こうと思う。地図上では、県道46、県道430、県道1と乗り継げば、平岡まで帰れるようだ。




「R418は工事をしてましたから、避けたほうがいいですね」
「じゃ、これで」






割とご同業の姿があった。どのあたりの人だろうか?



ただ、工事で通行止めになっているという看板を見たときはちょっと焦った





通行止って書いてあるんだよ、通行止って……






「……どうします?」
「うーん……」


どうも、この先の区間で災害復旧工事をしているようだ。ただ、このテの通行止めの場合、実は通れるというパターンもあることがあり、ここは判断が分かれる。




「まあ、ダメモトで行ってみるか」
「途中でバリケードとかないと良いのですが……」


で、結局「ワンチャン行けっだろ」的なノリで、先に進むことにした。





道はどんどん下っていき、渓谷に出た。



この道は、丸畑渓谷、売木川渓谷沿いを往く2ケタの県道、なのだが、道は狭いし路面は荒れてるしで、正直走りにくいがそれがいい





時折、こんな感じで撮影タイムを挟みつつ。



マイナスイオンを浴び、通行止めと路面の悪さにドキドキしながら、ひたすら標高を下げていく。……とそのとき、対向からご同業があらわれた。




「やったぞ!  この道、通れる」
「今の方も下から登ってきた筈ですから」


結局、ひだや酒店まで抜け切り、通行止め区間とされていた部分を何事もなく通過。どうやら休工中だったようだ。





反対側より。特にバリケード的なものはなかった。






「これで一安心ですね」
「この道を引き返すなんて、考えたくなかったからねぇ」






相変わらず、荒れた道が続く。



その後も渓谷沿いの道が続き、和知野ダムの手前で県道430へ。





天竜のほうに向かう。



標識は出ているが、ちょっとわかりにくいポイントである。ちなみに、県道430に入るために、ややきつめの登りをクリアしなければならないが、距離が短いのでダンシングで。

登りが落ち着けば、あとはアウターで処理できる緩いアップダウンが連続する。和知野川沿いに往くこの道は、沿道にキャンプ場があることもあって、狭いながらに交通の往来があるので、気を付けて走ることに。





発電所脇を抜けていく。






「発電所の設備が多いですね、このあたり」
「まあ、大親分の佐久間ダムがあるくらいだし」






水遊びできそうな澄んだ川が並走する。



こうして、県道1号に出たのが13:00。ここを南下すると、十方峡トンネルの交点に出られる。

左手は天竜川になるが、この先の平岡ダムによって堰き止められた人造湖にもなっている。よく見ると、対岸の所々に、現役と思わしき線路が引かれているのがわかる。





うっかりすると廃線跡って可能性もあるが、あれは現役である。






「飯田線の線路ですね」
「よくこんな所に線路を通したもんだよ」






湖を見下ろす風景も、なかなか見応えがある。



谷底を堰き止めて水を湛えるという、ダム建設に於いては定石通りの地形ゆえ、自然豊かな景色が広がる区間である。ちょうど、湖の景色が広がる場所があったので、




「写真、撮る?」
「もちろんです!」






平岡ダムの人造湖とエルコスさん。



そんなやりとりを続けていくうち、平岡ダムに着いた。





重力ダムだそうです。



長野県最南端のダムであり、ここから下流は佐久間湖となる。そのダムだが、エルコスさんによると、




「捕虜の強制使役によって建てられたダムのようです」
「時代だよな」


平岡ダムは、建設までに約13年を費やしている。ところが、下流の佐久間ダムは、近代的な機械工法を導入したことで、3年で建設を終えている。




「あ、あと、ダムカードありますね」
「どこ?」


どうやら、画像に収めたものを、龍泉閣まで持っていけばよいようだ。トンネル交点を右折するとすぐに平岡の市街地となるので、ちょっと寄り道していこう。





本日2度目の平岡駅。



13:35平岡駅着。ここの観光協会フロントに画像を提示すればダムカードをゲットできる。

丁度13:39岡谷行が到着した。ぽつぽつと地元客に交じってザック姿の観光客の姿もあり、ようやく夏休みっぽい光景を目にする頻度が増えた。





光画部の面々が乗ってそうだ。






「高校野球も無事に開催されているようですね」
「少しずつ、元に戻りつつあるな」






renas先生に倣い、アイスコーヒーで涼を。






遠山郷フィニッシュ


さて、残り10キロは往路の逆走である。





平岡の市街地を抜ける。



遠山川の上流に向かっていくので、基本的に登り坂となるのだが、激坂のようなレイアウトはないし、幸いにして追い風基調である。




「だが、なんとなく雲行きが怪しい」
「山間部特有の、夕立があるかもしれません」


ちょっと急ごう。





薄暗くなってきた。山間部ではよくあることさ。



道の駅遠山郷までは、約10キロの距離である。この距離で勾配変化もあまりないのであれば、平岡まで輪行して、和田地区で一泊の行程が組める。綱引きの時に活用できそうだし、下栗の里を観光しても良い。兵越峠を越えて水窪エンドとするのも悪くないな。




「意外とバリエーション豊かですね」
「やはり飯田線の威力が大きいな」






R418の終端まで戻って来た。



こうして、和田地区まで戻ってきたのが14:10。ちょうどこのあたりで走破距離100キロをカウント。なんとか3ケタ走行距離を確保できた。




「迂回をしたのが良かったみたいですね」
「まあ、今日の天気であれば100キロ切ってても良かったような気がするが」


余談だが、このあとスズキヤでジンギスを買い、いつもの野営地へと向かう途中、夕立の雨雲につかまった。





こんな山奥でも31℃。これも時代なのだろうか。












TITLE:刮目せよ、これが日本だ。
UPDATE:2021/07/25
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/293_urugi/urugi.html