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290:ムツイチ! 〜大湊線11駅ステーション・サインの旅〜



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。






本日のルート (powered by Ride With GPS)




イントロです。


これは、かつて聞いた話……

その人は、こう言った。

「この国は、おおきく東と西に分かれている。

ふたつの半島がそれを象徴し、大きな湾がお互いを隔たせ、わずかに残る陸続きのほとんどは、険しい山々が聳えている。

ただ唯一、航路だけが、東と西を結ぶ懸け橋となる。

その航路を活用すれば、広大な湾を一周し東西を繋ぐことができるだろう」

その道程は、およそ45里。湾を一周し、ふたたび舞い戻りしその道を、こう呼んだ。

「ムツイチ」と。








「はい、10分でできた」
「すご……  いんですが、ちょっと露骨じゃないですか?」


なんとなくファンタジックな書き出しだが、陸奥湾を一周するルートというのがあるらしい。




「あと、南部と津軽の仲の悪さは有名ですが、そこまで世紀末ではないかと……」
「まあ、ついでに言えば湾南部は割と平坦だしなぁ」


ルートの概要を大雑把にいうと、陸奥湾沿いに一周するというものである。南側に八甲田山、北側に陸奥湾があって、東西の往来が難しそうだが、R4や東北本線が通っており、湾沿いの道は先述の通り勾配変化のない穏やかなもんである。




「ちなみにこのルート自体は、数年前にサイクルモードで聞いた」
「地元スペシャルですね!」


青森県のサイクリング協会の方に教えてもらったスペシャルルートで、総距離でいうと160キロ強という、まあまあ歯ごたえのあるルートだと聞いた記憶がある。うろ覚えであるが



要するに、これを一周する。






「ただ、こちらが調べた限り、web上に走破したという情報がないんだ」
「なぜなんでしょうか?」


地元スペシャルなのか、ホントにマイナールートなのか分かりかねたが、伝え聞いた話である以上、まったく存在しないということはないだろうし、実際ルート引いてみても、なかなかに楽しそうである。




「問題は、どこをスタート地点にするか、なんだ」
「反時計回りをすることは前提ですよね?」


ただし、このルートは完全走破ができない。脇野沢と蟹田の間は、むつ湾フェリーによる海上輸送に頼ることとなる。

参考までに、むつ湾フェリーの脇野沢出発は、通常ダイヤで15:30。夏休みなどの多客期は増便が出て17:00となる。たとえば15:30までに脇野沢に到達するためには、どこを何時に通過する必要があるかを調べなければならない。

特に、むつ市(厳密には輪行可能な大湊駅)を通過するデッドラインがハッキリしないと、最悪の場合むつ−脇野沢往復80キロという







鬼畜の所業






……をおみまいされる可能性がある。




「そして、その辺の情報がない」
「なるほど。わたしたちがベンチマークになるのですね!」


今回は、その辺の情報を残せるように走ってみようと思う。




「では、4時起きですよ」
「一体何時スタートを考えているんだい?」






蟹田のフェリーターミナル駐車場が最適。しかも隣はキャンプ場。






蟹田5:04→青森6:04


結論として、今回は蟹田スタートとした。




「なぜですか?」
「17時までに着ければいいのなら、充分間に合うと思ったから」






早朝の蟹田港。



ただし、先述のとおり、むつ−脇野沢間は約40キロある。安牌とってアベレージ15キロという鈍足で計算すると、区間走破に約3時間はかかることになる。ということは、




「大湊駅を13:30に通過できなかったら、間に合わない可能性がありますね」
「そうなったらその時考えよう」


これで到達時間を計測し、どのあたりから走り始めたらよいかを探ってみる。ちなみに、出撃当日の天気は晴れで、風は一日通して西からの強い風




「つまり、最後の最後で向かい風ですよ」
「これがどういう影響になるか、だな」


この条件で、17:00脇野沢着が可能かどうか検証してみる。ただ、可能であれば通常ダイヤである15:30前の到着が可能かどうか、狙ってみたい。





それではスタートしますか。



5:04、早朝の蟹田を出発し、まずはお馴染み定点に立ち寄る。





鉞に例えると、柄の部分。






「なるほど、うっすらと見えるあそこに行くのですね」
「ちゃんと辿り着けるのだろうか……」


まあ心配しても始まらない。理論上は到達可能なはず。トラブルが起きなければ





早朝の津軽半島を往く。



R280旧道を南下する。まだ人通りも少なく、西からの風も思ったほど邪魔にはならなさそう。まだまだ脚が馴染んでないので、25キロ巡行を心掛けつつ、瀬辺地、郷沢と南下していく。




「このペースでいくと、青森駅着はだいたい6時くらいです」
「だいたい1時間か」






順調に青森市に入る。時刻は5:30くらい。



その1時間後、新駅舎建設中の青森駅に到着。かつての駅舎は解体され、新しい橋上駅舎が建設途中だった。




「まあ、時代だよな」
「寂しくなりますね」






新しい駅舎が暫定運用を始めてた。旧駅舎は解体されるとのこと。



跨線橋を渡って東口に回り、ワ・ラッセ脇を抜けて合浦方面へ。いくら早朝とはいえ、交通量のそこそこ多いR4は出来るだけ避けたい。

……と、信号待ちの関係でちょっと歩道に乗り上げたところ、ガンッ!  という違和感、というか明らかなリム打ち感




「おい、まじか」
「旧道に入ったところにコンビニがあったはずです。ちょっと寄りましょう」






旧道との分岐点。考えたらこのローソンでもよかったな。



合浦公園を抜けたあたりで、県道259号線に入る。かつてのR4であるが、入ってすぐに造道のセブンイレブンがあり、ここは2年前にも立ち寄った店だ。




「大先生は物資を手に入れてください。その間にチェックしておきます」
「何もなければいいのだが……」


かくして、チェックを終えたエルコスさん曰く、「単なるエア抜けで、スネークしてなかった」とのこと。まずは一安心。




「何の気なしにインフレータ持ってきてて良かった」
「ラッキーでしたよ。見たら3キロくらいしか入ってませんでしたよ?」


きっちり7キロまで加圧してから、およそ30分のロスで再出発できた。





早朝過ぎて、シロウオ漁はまだやってなかった。






青森・合浦7:00→野辺地8:30(追い風補正あり)


パンクではないことがわかり、心の余裕ができたので、貴船神社に立ち寄って撮影タイム。





大:「雨乞いの神様のおかげで今日もゴキゲンな一日になりそうだ」  エ:「矛盾してますよ大先生w」






「そういえば、上まで行ったことはありませんよね」
「いつも時間に追われて上がらず仕舞いだな」


旧野内駅のあたりはちょっとした山越えになるが、焦らずにインナーを使ってクリア。久栗坂に近づくと、眼下に集落が見える。





言ってみれば今回のルートで数えるほどしかないちゃんとした登り区間の一つ。



ここまで来れば浅虫温泉はすぐそこ。R4に復帰し、善知鳥トンネルを抜ける頃には、左手に海原が広がr……





叢に隠れてポッカリ開いてる。






「あっ!  大先生、トンネルがありますよ!」
「旧道だな。現トンネルの前に使われてたトンネルだろう」


R4は東日本の重要な幹線道路。至る所で改良工事やバイパス化が成されている。注意深く見てみると、こういった遺構があちこちに見受けられる。





平内町に入るこの区間が、数えるくらいしかないちゃんとした登り区間第二の刺客。



さて、青森市から脱出したところで、進路は完全に西を向く。夏泊半島の入口も通過し、無事に追い風を拾う




「よし、いい感じに乗れてきた」
「なんとか野辺地9時着を目指しましょう!」






だいぶ調子よくなってきた。



嬉々とするおっさんと遷移金属。しかし……




「めちゃくちゃ走りにくい」
「寒冷地なので、舗装が割れるんですよね」






轍+路面の穴ぼこ+路肩の砂利、という3ヒットコンボ。



突き上げる地面からの衝撃。油断してると本気でハマって、リアルに飛んじゃう大きな穴。寒冷地に加えて幹線道路のせいか、とにかく路面が悪い。







ドン引きレベルで路面が悪い。









「大切なことだから2回言った」
「すっごくわかります」


フレーム折れちゃうんじゃないか、という衝撃に耐えつつ西へ西へ。





正面に海が見えてきたら、野辺地は近い。



ちょうど、東京から700キロ地点にあたるポイントが、平内町と野辺地町の境界になる。かつてはここが津軽藩と盛岡藩の藩境となっていたようで、復元された番所が残されている。





馬門の番所という。






「番所?」
「簡単に説明すると、規模の小さい関所です」


その当時は、海沿いの道で津軽藩側に連絡していたそうだが、現在ではその道は途絶えているようだ。




「少し戻った狩場沢にも番所があったようですよ」
「国際線の出入国手続きみてぇだな」


そんな馬門番所から陸奥湾を見下ろすと、さすが東北の桜はまだまだ花を咲かせていた。




「大先生!  写真撮りましょう!」
「三脚も抜かりはないぜ」






桜は満開であった。






突然のステーション・サインの旅


さて、順調に追い風に乗り、野辺地に到着したのが8:30。ここはかつての東北本線と、下北半島を縦貫する大湊線が交わる交通の要衝である。





かつては東京行きの特急も停まった駅。



いつもの感覚で立ち寄ってはみたものの、ここでエルコスさんがこう呟いた。




「大湊は、11駅先ですね」
「ほう」






大湊線の全駅。確かに11駅。



そういえば、2年前もこんなことやったな。




「やりますよね」
「もちろん。頼んだよエルコスさん」


という訳で、思い付きでステーション・サインをやることに。まずはR279を北上し、北野辺地駅へ。





むつ方面へ。背景にある美容院の昭和感が萌える。






「踏切がありますから、渡ってすぐの路地に入ってください」
「線路沿いの道?」


くねくね曲がる野辺地の市街地を抜け、ふたたび海の香りがしてきた頃、確かに踏切があった。





この路線は、跨線橋なんて洒落たものは使わない。






「ここ?」
「ここですね」


どうみても線路脇の路地だったが、その奥に北野辺地駅はあった。





8:41着。これで2駅目。



ここからは、来訪忘れをしないように、一駅ずつ巡っていかなければいけない。




「次は有戸駅ですね。国道沿いなので看板が出ているはずです」
「見逃さないといいのだけど」


市街地を抜けると、雰囲気はガラッと変わり、どことなく北海道の松前らへん、2年前に訪れたR228を彷彿させる、荒涼とした風景を進んでいく。道は平坦ではなく、登ったり下ったりを繰り返すような線形になっているが、下った勢いで登り返せるのでさほど苦労はない。





荒涼とした風景がいい塩梅になってきた。






「大先生!  海が見えますよ!」
「ホントに海沿いなんだな」


懸念していた西風も、そもそもR279自体が微妙に北東向きであるのが幸いし、どちらかというと追い風基調になってくれているのが有難い。





どこまでもどこまでも続くまっすぐな道。



休日なのもあり、交通量は比較的多めだが、殺伐とした雰囲気はなく、皆さんのんびりと追い抜いていくのがいい。そういえば、半島南部は下北半島縦貫路が部分開通しているので、多少なりとも往来が分散されているのかもしれない。

そうこうしているうちに、有戸駅まで来た。





こんな具合に看板が目印になる。



次の駅は吹越になるが、この区間がなかなかに長い。




「駅間距離が13.4キロほどあります」
「途中に信号場が必要な長さだな」






次の駅まで13.4キロあるという。



地方交通線の大湊線はそもそも運行本数が少なめ。吹越との間には、特段何も鉄道施設はない。




「ただ、踏切は2回渡りますよ」
「跨線橋じゃないのか」


有戸駅前の国道沿線に、もう営業していないガススタンドがあった。雰囲気あったので一枚納めておいたが、このあたりの状況を如実に表しているようだった。





とはいえ、この映え加減よ。



さて、風が西から吹き付ける中、最初の踏切を渡る。





風車ってのが、風が吹いてくる方向に向くのだと知らなかった(意外なことに)。



看板が導くままに、下北半島方面へと進むと、半島南部の中継基地、横浜町に入る。むつ市までの区間でいうと、ちょうど半分くらいの位置だ。





時々、海から離れるが、それはそれで旅情があってよい。



防風林代わりの松並木の中を走ったり、海の見える開けたところを走ったり、そんな景色が開けたり閉じたりを繰り返していると、




「あ、ちょっと待ってください。何かありますよ」
「何かの碑だな」






大月桂月文学碑、とある。



陸奥湾を見渡す位置に、大町桂月文学碑と銘打たれた碑が建てられていた。最高によい眺めではあるが、これは一体?




「桂月は、高知県出身の紀行作家ですね」
「その人が、なぜここに碑を?」


それについて、エルコスさん曰く、「単に青森が好きだったようです」と。特に、奥入瀬と十和田湖が殊にお気に入りだったようで、晩年は蔦温泉に移住、そこで生涯を終えたとされるそうだ。




「あと、桂月の碑は、青森県内至る所にあるようです」
「ここが特別な何か、ではない訳だな」






まあ、こりゃ好きにもなるよね……



とはいえ、眼前に広がる陸奥湾の景色は、特別な場所と言わずとも一見の価値がある。海の手前には大湊線の線路が敷かれているので、車窓の風景もまた見事なのだろう。




「解説は以上です。それでは大先s……」
「写真だろ?」






そして、エルコスさんのパトスも迸りまくる。



2つ目の踏切を渡ると、縦貫路と合流する。吹越駅はそこからすぐのところにあった。





R279に面してはいないが、交差点曲がってすぐのところに。



ホームと待合室しかない地味なつくりだが、駅ノートがあったのでしっかりログを残しておいた。





13.4キロ先にあった駅。






陸奥横浜10:30→大湊12:45






横浜町は菜の花が名産なのだそうだ。



菜の花畑を横目に見ながら、10:12陸奥横浜駅着。





地元では「横浜駅」というらしい。なんてハイカラなw



駅近くに道の駅があるようなので、ちょっと寄り道していこうか。





何せ駐車するのに渋滞するほど。









えれぇ混んでる。









「どうしますか?」
「隣にコンビニがあったな」


そそくさとコンビニ補給をして、サッと陸奥横浜を立ち去ることにした。

ちなみに横浜町、菜の花が有名なのだが、CLANNAD AFTER STORYの劇中地になっていたようで、聖地巡礼の案内もされていた。





ちなみに道の駅のおじさんの推しはCLANNADではなく、その下の礒岩のり。






「グッズがありますね」
「あの菜種油、ボロ布に染み込ませると自然発火するかなぁ?」


……後にエルコスさんに指摘されたが、菜種油は不乾性油なので自然発火しにくい。そして、




「だいぶお疲れですね。発想がサイコパs……」
「乙参になると、いろいろあるんだよ」






むつ市街まで、あと26キロ……



さて、ここからは駅間距離も短くなり、頻繁に駅探訪が差し込まれる。まずは11:10有畑駅着。





この駅も国道からちょっと内陸側に入らなければならない。



次の近川に至る間に、もう一度踏切を渡るのだが、そのすぐ脇に菜の花畑があって、




「大先生!  写真撮りましょう!」
「ちょい待て、今三脚を立てるから」






聖地に行かずとも、そこかしこに映えるスポットがある。



探訪と撮影で遅々として進まないが、まあ時間的には余裕がとれるだろう、とのんびり構えつつ、近川には11:35着。





近川駅で7駅目。残りは4つ。



ちょうど近川の手前で、むつ市の市境を越えるのだが、2005年の市町村合併によって川内町、脇野沢村と大畑町が編入されたことから、







ゴールまでずっとむつ市






ということになるようだ。





ずっと、むつ市のターン。



そんなむつ市に入って、2番目の駅が金谷沢駅、ということになるのだが、





どうやらこの2車線区間のちょっと先にあるようだが……






「この先の、鳴海商店という酒屋さんを左です」
「鳴海商店さんね」






営業している大きい店って先入観の結果。









わかんなかったわ。









「大先生ストップ!  通り過ぎちゃいました!」
「え、いつ!?」


完全に見落とした。2キロほど逆戻りして、駅に着いたのが12:01。





なんで見落としたかなぁ……?






「ごめんなさい、気付きませんでした」
「あんなん気付かなくて当然だ。もっと分かりやすいものかと」


ちょっとタイムロスにはなったが、駅前に花をつける見事な桜の木を詣でて良しとしようか。





2021年の首都圏では3月末でだいぶ散ってしまった桜も、青森ではまだまだイケる。



その後程なくして、視界が開けて市街地が形成されると、赤川という場所になる。ここで道は二手に分かれ、線路沿いを往く県道176に乗り換える。





右に往けばR279、そのままむつ市街に至る。






「赤川駅は道沿いにあるので、今度こそ通り過ぎることはないかと」
「ああ、早速みつけたよ」






これで残すは、あと2駅。



12:19赤川着。ここから下北駅は目と鼻の先なので、とりあえずステーション・サインの完踏も見えた。




「おそらく13時前には大湊駅に着けるね」
「確実とはいえませんが、15:30の便にも乗れる計算になります」


そんな皮算用を立て始める余裕が出てきた。





この路線は、跨線橋なんて洒落たものは使わない。



さて、下北駅には12:30着。

ここは大湊線で数少ない有人駅なので、入場券を買って駅構内へ。ちょうどリゾートあすなろが入線してきた。





HB-E300系の新型気動車。






「リゾート列車みたいですね」
「確かハイブリッドで動いているらしいぞ」


むつ市の中心駅なだけあり、ある程度まとまった下車があった。また、終着の大湊駅は、下北駅よりも若干南側に位置するため、ここが本州最北の駅、ということになる。このあたりは、根室駅と東根室駅の関係に似ている。





左折してR338へ。



さて、むつ市の市街地をかわすようにR338に合流。終着の大湊駅には12:45に到着した。



ここが大湊線の突端。






「これで残りはだいたい40キロほどです」
「ゴールが見えたな」






隣の下北駅が本州最北端の駅なのでこうなったらしい。






大湊12:45→脇野沢15:20(向かい風補正あり)


……で、いきなり余裕ぶっこいて、のんびり昼食を食べる。そのため、大湊を出発したのは13時過ぎである。




「向かい風の程度に依るが、どんなもんだろうか」
「アベレージ20キロを目標にしましょう」


街はずれから少し登るが、やがてそれも収まる。すると、左手に陸奥湾が広がった。





特徴的な砂浜が見えた。






「砂嘴がある。あと、坂に名前がついてる」
「芦崎というそうです。自衛隊の敷地みたいですよ」


そうだった。この一体は海上自衛隊の大湊航空隊が駐屯しているんだった。





日本を守ってくれる国営の警備会社。



自衛隊の敷地を通り過ぎ、少しずつ標高を落としていくと、道は陸奥湾沿いを走るようになる。天気に恵まれ、日差しも気持ちいいのだが、







案の定、前に進まない。






そりゃあ、あれだけ風力発電の風車がチンアナゴのようにおっ建ってる地域だもの。おまけに沿岸部の道は、内陸部と違って風を遮る要素がないから、ひとたび向かい風が吹けばなすすべがない





だんだん最果てな感じがしてきた。






「時速20キロを割り込まないようにしましょう。そうすれば――――」
「それしかないか」






やがて、海沿いの道になった。今度はどちらかというと佐渡っぽい雰囲気に。



こうして、旧川内町に着いたのが13:55。海沿いの小さな漁師町といった趣の、とても静かな街だった。





静かさと、懐古さと、雰囲気が支配する。



川内町より北へ向かうと、佐井村を経て大間に至る。その途中、川内ダムという重力ダムがあるというのだが、




「さすがに今回は寄れない」
「ですよね」


しかしながら、川内川より上流部の風景がとても印象的だったので、一枚くらいは収めておこう。





川内川の上から。余裕があればダム方面に行くのも悪くないか。






「下北半島を一周するのも面白そうですね」
「仏ヶ浦の辺りは激坂らしいのだが」


末恐ろしいことをサラッとのたまうエルコスさんを宥めすかし、改めて脇野沢へと歩を進める。あとだいたい20キロ強くらいか。 ……と、走り始めて暫し、アクションカムの電源が突然落ちた




「サブバッテリーまで使い切ったようです」
「スペアがあと1つあるから、それに取り替えるさ」






バッテリー×2と5200mAhのモバイルバッテリーで1日持つ計算。



電池をリロードしている間、エルコスさんをガードレールに立てかけておく。この画もすごくしっくりきたので、大量に撮影しておいた。




「だからなぜ三脚があるのに使わないのです!?」
「電池とっかえながら撮影してるからだよ」






方角的には夏泊半島があるはずだが、距離あり過ぎて見えるわけがない。



軽く南側に湾曲した半島部を見ながら、これから進む道を想像する。再スタートしてもうしばらく走り、旧脇野沢村との境界に着いたのが15:02。





いよいよ脇野沢に。






「なんだあれ、廃校跡か?」
「ああっ、もう!  時間がないのに!?」






言うてる割には写真に映る。みずほ先生風に言うところの「最優先事項」。



それでもしっかりエルコスさんは被写体となる。旧川内町立蛎崎小学校、閉校時はむつ市に変わっていたので市立の小学校であったとエルコスさん。




「平成20年に閉校となったようです」
「閉校からそれほど経ってないのか」


木造の校舎は外から見学が可能なようだったが、いかんせん、あと25分で







船が出るって設定






なので、またの機会に取っておこう。さて、フェリーの乗り場まであと5〜6キロのハズだが、




「1キロを4分で走ってください!」
「つまり何キロで走ったらいいのー!?」


だいたい時速15キロくらいで良いようだ。





奥の赤い屋根が木造の校舎。思い出が詰まっているのさ。



向かい風がキツイ、進まない、加速しないと散々文句垂れてたが、実際のところ海沿いから外れれば多少は走るし、アップダウンが連続する区間もあるがそれも距離は短め。むしろ、時速20キロ巡行ぐらいなら容易だし、それを維持できれば2時間半でじゅうぶん間に合うということも分かった。




「構えてた割には、案外チョロいのかな?」
「風の強さ次第ですね。今回は運がよかったほうだと思います」






遂に脇野沢の地を踏む。



こうして、いくつかの集落とアップダウンを越えた先、唐突に表れるフェリー埠頭の看板。





なんか気が付いたら脇野沢港でした、的なオチ。






「着いた?」
「……着きましたね。ちょっと拍子抜けしましたが」


川内側からの場合、入り組んだ海岸線を走ってる最中にいきなり港が登場するような現れ方をする。徐々に見えてくる、というようなワクワク感がないのだ。




「ある意味、すげぇ新鮮」
「佐井のほうからだと、また違った印象なのでしょうね」


15:21、脇野沢フェリー乗り場に到着。定期運航であれば15:30発が最終便となるので、蟹田を早朝5時に出発すれば、ムツイチは可能であることがわかった。




「ただし、風の補正を考慮してくださいね」
「ステーション・サインのロスタイム分で吸収できるんじゃないかなぁ?」






ここが俺たちのゴールさ!(あと、フェリーターミナル)






饒舌な地元のご同業


蟹田までのフェリーチケットは、隣接の土産物屋で購入する。





ちょっとした土産物とか、何か食べ物は手に入る。



フェリーなので輪行の必要はなく、大人片道1950円+自転車850円でそのまま乗船が可能。





これが帰還のための片道切符さ。



すると、今度は17:00まで時間をつぶさなければいけないので、少々脇野沢の市街を散策する。





静かさ、寂しさ、こういうのをウリにしてもいいと思う(やり過ぎると荒らされるのでイヤなのだけど)。



仮にフェリーに乗り損なった場合、街には3軒の民宿があるので、大湊に戻るのがしんどいときは、そちらを利用するとよいだろう。また、街にはコンビニのような気の利いた店はないので、





スーパーちふね。脇野沢市街ほぼ唯一の食料品補給基地。Tel:0175-44-2705



こちらのスーパーを利用しよう。

ついでに、街を見下ろす八幡宮を詣でるのもよいだろう。





小さな街を見守る神様。



さて、16:30に折り返し蟹田行のフェリー「かもしか」が到着。すると、乗船ギリギリでご同業が到着。聞くと、地元の方らしく、我々と同じように、ムツイチを走り切ったという。しかも、むつ市から尻屋崎を往復し、寒立馬を見てきたとか。





エディメルクス・サランシュ64にアルテグラDi2で武装し、キャノンボーラーでもあるらしい。リアルガチの人。






「上には上がいるな」
「しかしその発想はなかったですね」


フェリーは定刻通り17:00に出航。そのあと乗船中にいくつか情報交換をしたが、イルカが泳いでいるのを見れる情報は本当だった。





ご同業曰く、高頻度で目撃できるとのこと。






検討・考察事項





「で、エルコスさんはどう感じた?」
「すっごく楽しかったです!」


R4の路面の悪さを除けば、ほぼ平坦の線形はとても走りやすく、風光明媚が文字通りで旅をしている感がすごく強かった、とのこと。

懸念材料はフェリーの時刻だが、同条件でいうなら、蟹田発5:00で充分間に合うことが分かった。マージンを取ったり、尻屋崎や大間への経由を考えるなら、青森発でもいいかもしれない。




「蟹田から1時間で青森市街、さらに2時間で野辺地ですよね」
「16:30蟹田着だと、季節によっては浅虫……  野辺地発着もイケるか」


野辺地と七戸十和田駅間はだいたい16キロほど。ざっくり1時間と見れば、七戸十和田周辺の宿泊も選定条件に入るだろう。




「つまり、ムツイチはアリですね!」
「緻密な計画は必要だが、オススメできるルートに間違いないな」


……という結論で締めたいと思う。




駅名コレクション(※証拠提出)















心を預けた愛機を飾るのに、リモートで出来るというのかい?












TITLE:走れメロス状態
UPDATE:2021/05/08
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/290_mutsuichi/mutsuichi.html