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281:ヤマイドウ12〜根釧台地ベスト(ちょっと短縮)



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。





本日のルート (powered by Ride with GPS)




名の知られぬ極上の道


根釧台地ベストというルートがある、という話はずいぶん昔から高地netを通じて知っていた。ただ、その存在、ルートの構成については情報が少なく、中標津にある民宿地平線の主人が過去にドライブをした際に引いたルート、というくらい。




「一応、高地netさんには走破データがあるようですが」
「ちょっとお借りして、どんなルートか見てみよう」


見てみたところ、文字通り根釧台地を味わい尽くす、ざっと200キロ近い周回路が出てきた。




「これは走り応えがありそうだなぁ」
「丘陵地帯のアップダウンが延々と200キロ続く感じですね」


曰く、このルートに挑んだ人は数名しかいなく、それもほとんどがオートバイか自動車でのこと、という。

自転車での走破は、件の高地さんくらいで、それこそ走破報告の報がどこにも見当たらないところを見ると、知られざる名ルートの予感がする。




「あるいは、難易度が高すぎるのかもしれません」
「そう?  どう見てもインナー使うような道じゃないと思うけど」


このエルコスさんの懸念は、終盤になって現実となることを、この時点ではまだ知る由もなかった。





それでは出発しよう。






上風連まで


別海のふれあいキャンプ場に逗留し、翌6:15出発。

民宿地平線をスタートとすべきだが、周回ルートなのでどこから始めてもよかろう。幸い、ルートの一部が別海市街の至近を通過していたのが幸いだった。





正規ルートから外れて3キロほど北上すると別海市街。






「どう考えても、補給できる箇所が限られています」
「ちょっと買い込んでいくか」


セイコマで物資を支給してから、R243を南下。ドライブイン・ロマンを通り過ぎた先の新酪農道に入る。まずは11キロ先の上風連を目指す。





上風連方面へ。



根釧台地を味わい尽くす、という言葉通り、いきなり広がる広大な牧草地。そこを貫くようにアップダウンを繰り返すようになる。




「いかにも、北海道って感じになったね」
「これを待ってました」






文字通りの雄大さよ。



新酪農村の展望台を過ぎて、下り坂を過ぎると、道道930号交点に差し掛かる。右折すると途端に風向きが向かい風に。




「ちょっと早過ぎるなぁ」
「頑張ってください。上風連までは10キロもないですから」






風は西から吹いているようだ。



エルコスさんの言うとおりだった。7:18、上風連着。





上風連市街。牧場地帯にぽつんと現れた小さな集落だ。



Aコープがあったものの、この時間ではまだ店開きしていないようで、仕方なく交差点にあった自販機で喉を潤す。





森重商店前で。



それにしても、人気のない、静かな街だ。




「人口はおよそ500人程度のようです」
「なんかいいな、この雰囲気」


時間がゆっくり流れていくとはこういうことか。しかし、油断していると尻に根が生えてしまいそうだ。





余談だが、ジョージアの道東オリジナル缶が販売されていた。






別寒辺牛まで行って折り返して。






道道813を目指す。



さて、ここからは道道123、813と乗り継いで奥別寒辺牛のほうへ向かうことになるが、ここでひとつ難問が。




「これ、どこで折り返すの?」
「明確なポイントが設定されていないようです」






なんにもない場所で途切れている(正確には折り返している)。



ルートは、道道813を西に進み、適当な場所で折り返している。先述の高地さんの場合、別寒辺牛湿原の手前、糸魚沢方面に至る道との交点を折り返し地点にしている。さて、我々はどうしようか。




「ちょっと手前ですが、休校になった小学校がありますよ」
「じゃあ、そこにしようか」






この道を行けるところまで行ってみよう。



算段が立ったところで、道道813号に入る。走り出してすぐに、折り返しののちに進むことになる道道928交点に差し掛かる。

その交点を過ぎてすぐに、ふたたび根釧台地の酪農地帯が広がりだした。今日はずっと大平原とお友達になりそうだが、何度見ても度肝を抜かされる。




「大先生!  写真撮りましょう!」
「おうよ」






この道は、この雄大な景色を楽しむ道なのだ。



あまりにも広大過ぎるのが理由だろうが、このスケール感は本州ではなかなか味わえまい。

適度に撮影タイムを入れつつ少しずつ行程を進めていく。すると、浜中の西円に、JAの取扱所を見つけた。ちょっとした商店になっているようだが、あいにく営業はしていない様子。しかし、自販機はある。





このあたりでは唯一の商店になる。






「浜中といえば……」
「モンパチ先生の故郷だな」


町じゅう至る所に世界的に有名な大泥棒がいるのはそのためである。





大泥棒の三代目は地元の牛乳が大好物。



しかし、もう一つ注目したいのは案内板の右側、妖精花伝説の記述である。




「地元の伝説ではなく、モンキー・パンチ先生の描きおろしのようです」
「充分、地元の伝承として成立しそうだがな」


詳細は各自調べてもらうとして、要約すると相容れないふたつの種族間の恋話である。最終的には、霧多布に代表される此の地特有の深い霧によって、ハッピーエンドを迎えるのだが、





主要キャラクターのヤチ魔人さん。






「あらやだ!?  カッコイイ……」
「オォォォィィ!?」


そんな小ネタを挟みつつ、浜中町から厚岸町に入った先に、高知小中学校跡はあった。





まだ建物はしっかりしていた。



ここまで、根釧台地の雄大な景色に囲まれてきたが、学校跡は木々に囲まれた森の中にあった。校庭には朽ち果てた遊具があり、閉校してから随分と時間が経っているように見えた。




「閉校ではなく、休校のようですね」
「いや、事実上の閉校だろう」


校舎脇にあったキュービクルを見て、そう答えた。6.6KVあたりを指し示すはずの受電電圧計はその役割を辞め、何より柱上開閉器の一次側は、配電線から切り離されたままだ。





仕事柄、こういうのには目が行きがち(終端接続は対塩害型のやつ)。






「復活させる気があるとは、残念ながら……」
「そんな……」


この地に再び多くの人が住み着くようになれば、あるいは。しかし、兵どもが夢の跡というのが現実なのだろう。捻っても水が出ない蛇口を弄びながら、そんなことを感じた。

ここには子供たちの元気な声はない。それを確認したところで、引き返すことにした。ここは余りにも寂しすぎた。




「素晴らしい景色の終端が、これでは……」
「いや、だからこそ儚いんじゃないかな」






かつては、このグラウンドを大勢の子供たちが駆け巡ったのだろう。



さて、復路は追い風に変わり、足も軽やかに道道928交点へと戻る。




「あ、タンチョウがいますよ!」
「え、何!?」


慌ててブレーキして、引き返してみると、確かにタンチョウがいて、丘の向こうに消える間際だった。





呼んだかい?



西円まで戻ったところで、小休止も兼ねて補給色をパクつく。考えてみれば、このあたりは丘陵地帯であり、牧場地帯であり、非居住地帯である訳で、




「これ、もしかしてこの先、補給できるとこないんじゃ……」
「全然ないです。余分を買い込んでおいてください」


おまけに自衛隊の演習場が広範囲に広がっている地帯でもあった。恐らくそれが、わざわざ道道928号まで戻らなければならない理由なのだろう。





菓子パン食べつつ作戦会議。






「まっすぐ突っ切れればもうちょっと楽なんだけどな」
「まあ、こればっかりは」






それではさらに内陸部に入っていきます。



道道928に入っても、アップダウンが連続する。ただし、断続的に訪れる、というよりかは、登って、平坦で、下ってを繰り返すような感じである。空を見上げると、雲一つないド快晴になっていて、ボトルの水は瞬く間に消えていく。




「もう既にイヤな予感しかしない」
「2本フルロードして、それを飲み尽くすなんて」






ぶっちゃけた話、景観の変化はあんまないので、油断すると飽きるかも。






ほんとうになにもない平原


交点からのルートは、いくつかの無名農道を乗り継ぎ、別海南部広域農道を経て上西春別のあたりまで向かう。そしてこの付近で感じた。こりゃ







確実に迷子になる。






事前にルートを仕込んでおいたので問題なかったが、どの交点を曲がるかがノーヒントなので、常にGPSとにらめっこしての走行となる。




「あ、そこの丁字路を左です」
「こ、……ここ?」






こういう道を左折する。そりゃ迷子にもなるさ。



そんなやりとりと、照り付ける日光と、繰り返すアップダウンが幾度となく続き、そこに広大な牧草風景が花を添える。





人の手が入っているが、人がいないというミラクルがそこかしこに。






「次の十字路を左に曲がります」
「建物があるな。自販機とかがあるといいんだが」


そして、予想通り、自販機なんてなかった





要所要所でGPSとにらめっこしないと、ホントに迷う。






「こりゃあかん、確実に干上がる」
「仕込んでおいた経口補水液を飲みますか?」


いや、これは最後の手段だ。幸い、あと10キロも走ればR272と交差するので、そこまでいけば何かしらあるだろう。

その後、いくつかの牧場が点在する地帯に差し掛かる。機械が動く音がするので、最悪、水だけでも分けてもらおうか。そんなことを考えていると、遠くのほうに赤色の人工物が。




「あれ、自販機じゃないか?」
「ちょっと待ってください。もう少し近づけr……」


エルコスさんが全部言い切るよりも前に、赤缶でおなじみあのメーカーのロゴが見えた。





(株)デイリーファームきぼう様の軒先にあった(言い換えるとここまで自販機すらない)。






「たすかったぁぁぁぁ……」
「毎度のことですが、ギリギリでしたね」


飲んだ水が体内に吸い込まれていくのが実感できるほどに、カラッカラだったようだ。

さて、すんでのところで命拾いをした我々だが、補給食がゼロであることに変わりなく、おまけにこの先虹別のあたりまで(正確には虹別の市街地すら外れるので事実上)補給できる箇所がない地域を往く予定である。




「わたしだったら止めます。全力で」
「そうだよな。ちょっと行くの怖いわ」






こんなかんじの風景がまだまだ続くわけよ。



そこで、ルートの再考をしてみたところ、西春別にコンビニを始めとする商店があることと、鉄道記念公園というランドマークがあること、そして、農道を経由して養老牛までショートカットできるルートを引けた。

ベストルートを完踏できないのは心残りだが、下手に足を踏み入れて干からびるよりかは全然マシだろう。





ここを左折するのが正規ルートだが、右折して西春別を目指すことに。






「よかったじゃないですか。宿題がまた一つできましたよ」
「ははは、確かにな」






そしてようやく一息つける。



11:35、西春別鉄道記念公園着。

旧国鉄標津線の駅があった場所に建てられたモニュメント的な場所で、D51を始めとする年代物の車体が静態保存されている。丁度噴水があったので、涼をとりつつ昼食タイムに。




「ゴミは持って帰ってくれってさ」
「北海道全域で、そういう風潮みたいですね」


冷やしラーメンカップを食べながら、エルコスさんに愚痴る。時代なので致し方ないと理解はするが、これでSTBを伴う旅程はだいぶやりにくくなったなと感じた。




「これも、"新しい様式"への移行か」
「そういうことです」


幸い、フィニッシュすれば運搬車があるし、焚火でもした時に盛大に燃やすとするか。ゴミはサドルバッグに括り付けて、彼らと暫く旅を共にしよう。





D51のほかに、現役使用されていたキハ22も展示されている。



さて、ここからショートカットルートになるが、途中うっかり陸上自衛隊の別海駐屯地に迷い込む




「だ、だ、大先生、ライフル持った人が……っ!?」
「慌てなさんな。全力で回れ右だ」


ええ、大変お騒がせしました。手前の丁字路を右でした。





ここで間違えたっぽい。右折するのが正解。



そのあと、しばらく森の中と農場の中を交互に行ったり来たりして、ようやく道道13号に合流した。





ここを右折。なお、道道13号をひたすら進めば、中標津に着く。






「大先生、あれ何ですかね?」
「なんだかジブリ作品に出てきそうな草の生え方だな」






雪除けなのか、橋だったのか……?



中標津町に入ってすぐ、道道505号に入る。これを直進すると、養老牛の中心部、あのながかわ商店のある交差点に出る。





今度は左折。ショートカットするなら直進でもよいか。



そして、ここからしばらく登り勾配となるが、西から吹く風が微妙にエルコスさんを押し戻す。




「ちょっと魔法を使いますので、21Tまでギアを落としてください」
「はいはい、21T、と……」


だいぶギア比を下げたが、これが大当たりで、久々にゾーンに入った。




「やはり悪いクセが出てましたね」
「重たいギアを踏むのがカッコイイとか染み付いてんだろうか?」






牛だって言うさ。「まあ、無理すんな」と。



クルクル回る足を維持しつつ、13:05養老牛ながかわ商店着。





直進すれば網走方面に至る。



ここは、清里峠方面から道東入りしたときの玄関口でもあり、近くのバス停は(STB的な)旅人にとって重要なスポットになっている。商店はだいぶ昔に店を畳んでいるようだが、自販機は健在なので赤缶で補給をしておく。





ここもある意味有名なスポットである。



ここからはベストコースに復帰である。道道150号を経由して開陽台、次いで775、農道と経由して道道994号に乗り継ぐ。

向かい風で消耗した足がしんどいが、大きくゆっくりとクランクを回すように乗れば、面白いほどエルコスさんが走る。今まで出撃の後半に足を痛めていた理由が、改めて理解できた。




「踏み過ぎなんですよ」
「乗り方をもう一度研究しないとな」






少し陽が遮られ、走りやすくはなった。



途中、シャレオツな喫茶店があったり、ソフトクリームが食べられそうな店があったりしたが、ちょっと余裕がなくてパス。いつかゆっくりと走ってみたい。

北十九号線に入り、登り坂が始まる。この登り坂は開陽台まで続くことを知っているので、おとなしくインナーに落とす。





開陽台周辺のアップダウンは、割ときつめである。



開陽台の駐車場までは、恐ろしい急勾配であったことを知っているので、正直どうしようかと。




「どうも、開陽台は立ち寄らなくても良いみたいですが」
「だよねぇ。そうだよねぇ」


ここまで来て激坂に挑むなんてとんでもない。我々は、開陽台に至る道の交点を







左折した。










ほいきた10パーコース!






「あはははははっ!  やったやった!」
「違うんだ聞いてくれ、身体が勝手に左折したw」


めでたく10パーの勾配に挑む我々。とはいえ、過去に一度走破している我々にとって、こんな坂なんてことはない、そう、敵などいない!




「……いてっ!?  なんか被弾したぞ!?」
「あー、集まってますね」








虻にまわりこまれてしまった!









「ふーざーけーんーなーっ!?」
「に、逃げt……  ああ、無理ですねここじゃ」


10パーの急勾配では速度も出せず、すっかり虻にボコボコにされてしまった。今年の虻、ちょっと狂暴過ぎないか?





開陽台が見えてきた。



14:10、開陽台着。展望台にでも登ればよかったのだが、このご時世とは似つかわしいほどに大勢の人が観光中。ちょっと近寄りがたかったので、赤缶補給してすぐさま出発。





結構な人出があった。特にライダー率が突出して高め。






「虻から逃げるんだ!」
「どこにいても虻に襲われる人って……」






展望台には登らなかったが、気合でこれだけは撮った。






退屈から激痛へ






ロケ地になってたようだ。



道道775と774の交点に、商店と自販機がある。道路を挟んだ対岸には、映画のロケ地があった旨の看板が立っている。





交点に建つ井口商店。



この商店の自販機で補給をしておくのだが、




「恐らくここが、別海までの最後の補給ポイントになります」
「えっ!?  そんなに店がないの?」


どうも本当にそうらしい。ベストルートを往くのであれば。

もちろん、道道8号に戻れば、中春別あたりで商店は期待できる。しかしベストルートはこの先、別海東側の牧場地帯を南北に縦貫するように伸びていて、どうみても途中に集落のようなものは見受けられない。





たまにあったって、作業中のトラクターとかだし。



つまり、ここで補給ミスったら最後の最後まで響く訳で、




「大丈夫かなぁここ。自信なくした」
「珍しく弱気ですね、どうしました?」


いや、まあ、どう考えても補給しくじりそうで。





中春別方面へ。



では道道994へ。こちらも今までの道と変わらない、定期的なアップダウンを繰り返す丘陵地帯を往く道である。これだけだとまだ良いのだが、所々で湿地帯であったり小さな川を越えたりする。




「エキノコックスが沢山いそうな川だな」
「まあ、北海道ですから」






なんならクマとかもいそうな川だな……



それでも川が形成されているということは、そこに水が流れ込んでいるわけで、それらは当然、清流で、




「後ろのほうでブンブンいってますよ!?」
「もう虻とかいいってばさぁ!?」


結局、ここでも虻とデッドヒートを繰り広げる羽目になった。





そしてようやく別海の文字が……



虻さえいなければ、もっとのんびり走れたのになぁ……  なんて余韻に浸るヒマすらなく、とにかく逃げに逃げ続けて16:31、道道364交点までやってきた。





ひたすらの一本道が、ここでようやく途切れた。



ここを右折し、すぐに左折するのがベストルートなのだが、別海ふれあいキャンプ場に運搬車一式をデポしているので、このまま直進してフィニッシュとする。





ちなみに正規ルートを往くと、最終的にR243と合流する。






「いたたた、身体じゅうが痛い……」
「今日は無理をしましたからね」


確かに無理をした。そして改めて思うのが、この根釧台地ベスト202キロルート、ハッキリ言うと







プロ仕様、初心者お断り






ルートであった、ということだ。特に、補給に関しては、こちらが考えている以上に用意しないと地獄を見る。……いや見た。





ようやく街が見えてきた。



プロフィール的には、目立った峠道はなく、適度なアップダウンが連続するだけなのでトレーニングにうってつけで、雄大な景色が広がるのでツーリングルートとしても良質であるといえる。特に別海町内の牧草地帯や、道道813からの道東境界を形成する山々の姿など、見どころは沢山ある(ただし雄大な牧草地帯オンリーともいえるが)。

もし次に走るとするなら、補給食を満載にしてフルコースに挑みたいものだ。そういう感想を抱く、走り応え充分なルートであった。




「大先生、別海の市街に戻ってきましたよ!」
「くたびれたぁぁ……」






総じて、北海道を走っているということを実感させてくれる素晴らしいルートであった、と。












TITLE:根釧台地ベスト202km→188km
UPDATE:2020/08/30
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/281_konsen/konsen.html