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280:ヤマイドウ12〜宗谷ベスト230km



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。





本日のルート (powered by Ride with GPS)




イントロです


稚内駅前にある道の駅は、いつまで経っても満車だった。





稚内は駅前が道の駅。そのほとんどが道外ナンバーで占められてた。






「しかも、割と道外ナンバーが多いね」
「この時期では、仕方ないですよ」


ついでに言えば、フェリーターミナルのほうも満車で、これで丸一日停めておける駐車場候補トップ2がつぶれた。




「どうなさいますか?」
「心配ない、あと2か所心当たりがある」


という訳で、道道106号を南下して、こうほねの家に向かった。





サロベツ原野にある駐車場で、結構な割合でライダーが集まる。



道道106北部に位置するこうほねの家パーキングは、規模が小さいものの極端な僻地に位置しているので、基本的に混雑することがない。その読みは的中し、運搬車を一日留め置いても問題はなさそうだ。

今回は早々にここをキャンプ地として、明日に備えることとした。





とりあえず別の案件で撮りためた動画データを移し替えておく。



ちなみに、今回はこの道道106を走破することが目的の一つなので、場合によっては南端の天塩スタートとしてもいい。後述するが、天塩川を渡る橋の北端には、浜里という駐車場があり、こちらならこうほねの家以上に運搬車の留置がしやすいだろう。




「なぜそちらにしなかったのです?」
「風向き的に」


明日の午前中は、微妙に北風とのこと。北海道を自転車で走るときは、風すらも味方につけなければいけない。





それじゃ、一年ぶりのヤマイドウ、やるか。






憧れの"退屈な道"


今回のルートは、北海道ライダーが憧れることで名の知られたオロロンラインである。オロロンラインとは、石狩市から稚内市までを日本海に沿って続くルートを指すが、そのうち天塩から稚内までの道道106号線区間が今回のターゲットである。なおこの道は、サロベツ原野を縦貫する海沿いルートで、文字通り







人跡未踏






を往く道である。その果てが最北端の都市であることと、人跡未踏という異次元の空間に憧れた結果、北海道を旅するライダーが、一度は通ってみたいと声を上げる道なのである。

ただし、それはあくまでオートバイ乗りに限定した話であり、少なくともこちらが把握する限りでは、




「何もなさ過ぎて退屈」
「あらら」






およそ60キロ近くにわたり、こういう感じの道が続くのである。



原動機があれば時速60キロでだいたい1時間程度で走破可能だが、一般的な巡航速度が20キロ程度の自転車では、単純計算で3時間はかかる計算になる。




「それでも、一度は走破したいんや」
「ええ、とてもわかります」


退屈といわれる要因に、景色の変化のなさが挙げられる。何せ、風車と利尻富士とパーキングシェルター以外、ほとんど人工物がないのである。

ただ、それ以上に厄介なのが、北海道地方特有ともいえる、







風の存在






こいつに左右されることである。そのため、今回は直前まで風の向きをよく吟味し(場合によっては稚内以外のデポも考慮の上で)、最終的に稚内スタートを決めた。





利尻富士に見送られ、まずは50キロのウォーミングアップ(……!?)。



さて、6:20こうほねの家を出発。

早朝の時間帯ということもあり、交通量はほぼ皆無、ご同業だって走ってるわけがない。

幸い、風も読み通り無風か、若干の追い風のため、労せずに時速25キロあたりを維持。





走り出して感じた違和感(良い意味で)。






「大先生?  思ったほど退屈じゃないような気が……」
「確かに」


走ってみて感じたことだが、これがそれほど退屈でないのだ。いや、むしろ右手に見える利尻富士の変化を感じながら走っていると、気が付いたらだいぶ距離を稼げている、みたいなことが起こっていて、




「おかしいぞ?  悪くない……」
「風向きもあるとは思いますが……」


その利尻富士も、最初は右手奥にあったものが、気が付くとだんだん右横に並び、そして気が付くと右手後方に流れていく。そこで改めて、走破した距離を実感できるのである。





いつの間にか利尻富士が真横にいた。



それにしても、本当に何もない。文字通り、原野を突き抜ける道だ。




「RPGに似てますね。フィールドと街がハッキリ分かれてます」
「北海道あるあるだな」


6:47、豊富町に入る。





とりあえず11キロ走ったことになる。



さらに走ると、遠くのほうに何やら建造物が。




「稚咲内の街に着いたか?」
「いいえ、何か大きなものが建ってますが?」






(真ん中らへんに注目)何かが生えてる。



うん、うっすらと見えるよ。水平軸の風車の群れが。あれが道道106名物、オトンルイの風力発電施設だ。




「まだだいぶありそうですね」
「なぁに、走っていればすぐに着くさ」






久々の建造物が現れた。



稚咲内にある、区間唯一の信号機のある交差点を通過。気づけば幌延町に入っていて、




「だんだん風車が近づいてますよ!」
「なるほどね、こういう風に楽しめばいいのか」


さらに進むと、さらに新しい地形が。





ポッカリ開いている。






「トンネル、ですね」
「いや、シェルターだな」


このあたりは、豪雪地帯でありながら、地吹雪が猛烈な地域でもある。故に、冬季でも路面の積雪は少ないという。

しかしそれは、地吹雪の苛烈さを如実に表した結果でもあり、その結果、パーキングシェルターというものが誕生した。




「地吹雪で何にも見えないこともあるらしい」
「うわぁ……」






文字通りシェルターで、中は何もなかった。



何もない平原に、突如現れたトンネルの正体とは、地吹雪から身を守るバリケードのようなものだった。中は無風に近く、これならば一時しのぎに最適であろう。




「トイレとか自販機があれば最高なんだが」
「いくら何でも贅沢では?」


そして、このパーキングシェルターを抜けた先に、北緯45度線のモニュメントがある。





北緯45度線を司る。






「佐多岬にあったのは、31度でしたね」
「つまり南北の緯度を踏んだわけだ」


もちろん、北緯45度を跨ぐポイントは他にもある訳だが、




「大先生、写真撮りましょう!」
「もちろん!」






エルコスさんがちょうど北緯45度線の真上にいる。



モニュメントがしっかりしているのは、ここの他数か所しかない。

さて、遠くのほうに蜃気楼のように映っていた建造物のほうは、やがて輪郭をはっきりさせ、そしてどんどん肥大化し、





オトンルイ風力発電所。






「うわぁ、おっきい……」
「…………(黙っておこう)」


最初の一本を通り過ぎるころには、風力発電特有の風切りノイズが聞こえてきた。……が、




「思ったほど大きくないな、ノイズ」
「技術の進歩でしょうね」


せっかくなので、一枚写真に撮られておこう。





このあとエルコスさんは悶絶した(結局気が付いたようだ)。



ちなみに、この風力発電施設を間近に見ながら、車中泊が出来そうな駐車場がある。ここをベースにしたらどのようなコースが引けるだろうか。





ちなみに、道外ナンバーのハイエースが逗留していた。



さて、少しずつダンプカーとすれ違うことが増えた。と同時に、砕石場も点在するようになった頃、




「あ、大先生、橋がありますよ!」
「そろそろオロロンラインもゴールか」






浜里の駐車公園まで来た。



日本で4番目に長い大河の、河口側最後の橋であるこの天塩河口大橋を渡ると、天塩の街はすぐそこである。橋の手前には浜里駐車場があり、かつてはトイレと休憩所があったはずだが、





どうやっても使えそうにない。






「閉鎖されてますね」
「綺麗な施設だったから残ってて欲しかったなぁ」


ここに限らず、あちこちのPAで施設が閉鎖されていたりする。老朽化か、もしくは使い方が悪かったか。




「野宿するのに最適だったのにな」
「それも原因の一つではないかと」


そういえば、昨今の情勢もあってか、コンビニ等でごみ箱の撤去が進んでいた。さすがに、買ってすぐ食べたものは引き受けてくれたが、持ち込みは完全にアウトになった。




「時代なのかな。新たな作戦を考えなければ」
「併せて、教訓にもしてくださいよ」


後に天塩のセイコーマートで冷やしラーメンカップを食べながら、そんなことを感じた。





件の橋の上から河口のほうを眺めつつ。



オロロンラインの走破は無事完了したが、思ったよりかは退屈しない、という感想だった。ただし風向きに依る





ここから内陸部に入っていくよ。






5年前に消された記憶


ここから、幌延方面に北上するのだが、R232ではなく、道道551経由で行くことにした。わずかに遠回りなのと、この道はヤマイドウ10のときに逆走している。




「なぜ、この道を?」
「いや、確かな……」


記憶に間違いがなければ、道道551とR40の交点付近に、魔方陣のような何かがあったと覚えている。ただ、その魔方陣が何だったのか、何のためにあるのかがまったく記憶にないのだ。





天塩の農道を右往左往しながら。






「エルコスさんも覚えてない?」
「わたしも記録が残ってません。意図的に抹消されたようですが……」


なので、それを確認しに行くことにした。





このあたりは平坦に近くて走りやすい。道道551を東へ。



道自体は軽めの丘陵越えで、牧草地帯を抜ける風光明媚な道なのだが、空が晴れて陽が照り、北海道らしからぬ陽気になった。





R40交点まで来た。



そして、心なしか向かい風の予感を感じつつ、ようやく交点に到着。件の魔方陣を見に行くと、





これが件の魔方陣、なのだが……









ただのモニュメントだった。









「こ、これは……」
「墓? ……って訳でもないのかな?」


墓かどうか判別できなかったが、きっと5年前、これを墓と認識して、記憶から消したのだろう。書かれていることを簡潔に説明すると、これは代々此の地に根を下ろした一家の証であった。

魔方陣を辞したあとは、R40を北上して天塩大橋を渡り、右折して幌延方面へ。





もう一度天塩川を渡る。






「あれから調べてみましたが、遠くない場所にセイコーマートがあるようです」
「とすれば、補給箇所が増えるな」


音威子府から豊富までの区間で、R40沿線に補給可能なコンビニや商店がほとんどないのは、5年前の記憶通りである。だが、天塩中川の街中にセイコマがあるのは確認済みで、今回新たに幌延の補給箇所が開拓できれば、R40縦貫のハードルはグッと下がる。




「というか、R40が市街地を外れて通ってるんだな」
「まあ、そういうことですね」






幌延市街に入った。



9:55、人気の少ない街並みを抜けて、幌延駅に到着した。




迫りくる虻との戦い






特急が止まる駅にて。



予定では、ここから稚内方面に北上するつもりでいたが、ここでエルコスさんから提案が。




「エサヌカ線に行ってみませんか?」
「エサヌカ線?  どこだい?」


エルコスさんによると、牧草地を貫くひたすらまっすぐな道が地平線に向かって伸びるとのことで、ある意味オロロンラインと同じような道だ。……んで、その場所というのが、




「浜頓別のちょっと北のほうです」
「は、浜頓別ぅ!?」


わかりやすく言うと、北海道を横断するルートを経て、オホーツク海側に出なければならない、ということだ。




「およそ80キロほど走行距離が増えますね」
「鬼畜やんwww」


しかし、行く価値はある、と。何物にも代えがたいほどの場所らしい、と。

計算すると、浜頓別周りになると走行距離は約240キロになる。一日の走破距離ベスト5に入るわけで、ちょっと考えてしまう。だが、幸い今の時期は日没が19時くらいなので残業ができそうなこと、ゴール地点に運搬車があるのでチェックインタイムを気にしなくてよいこと、何よりここは北海道なので放っておいても走破距離が稼げてしまうこと。それに……




「大先生、行きませんか?  いえ、その、わたしが行ってみたいのですが……」
「おおぅ……」


何より、エルコスさんが走りたがってるので、最終的に提案を呑んだ。




「わかったよ。行ってみるか」
「やたー!  大先生イケメン!」


ただ、浜頓別に至るルートというのが、問寒別まで南下して道道経由でR275を通るルートと、道道84号を経由するルートの2つしかない。後者が最短距離なのでそちらを選択するのだが、




「民家も何もない原生林を突っ切ります。あと、オフライン区間があります」
「来たなワクワクするやつが!」


なので、セイコマに戻って菓子パンを追加購入。加えてボトルの水を満杯にしておいた。




「学習されてますね」
「さすがに懲りた」


そして、このあと絶望することになった訳だが。





それではスタート、の直後がコレ。



さて、道道121号を往くといきなり登坂車線。使う予定のなかったインナーに落としてゆっくりクリアする。

そんな強めの丘陵地帯を越えていくと、トナカイの牧場があったり、地層を研究している設備があったり。





丘陵地帯なので、勾配の変化は頻繁にある。






「結構見どころがありますね、このあたりは」
「客の入りは少なめか……」


道道84号交点まで来た。ここを右折する。

そして、この時点で浜頓別まで48キロ、という距離の洗礼を受ける。





結構あるやん。






「やべぇ、ちょっとビビッてきた」
「大丈夫です!  今のところトラブルはなさそうですから!」


粛々とこなしていくしかないので、鬱蒼と茂る森の中を淡々と進む。アップダウンが連続するので、登りの時はクランクをゆっくり大きく回し、下りの時は惰性に任せて足を休める。

交通量が驚くほど少ない、というかほぼ皆無な道なので、時々良い景色があれば、立ち止まって撮影なんぞしながら進んでいく。




「これもまた、北海道らしい道ですね」
「ただ、まあ、もうちょっと景色の変化があってもいいのになぁ」


そのときだ。左手に鉱山跡らしき碑が建っているのを見つけた。日曹鉱山跡、と書いてあった。




「寄ってみますか?」
「うん、ちょっと見てみたい」






このあたりは鉱山の街としての歴史もあったようだ。



もともと石油が湧いて出る豊富町にかつてあった炭鉱で、それ相応に期待されていたようだが、交通の便が悪く放置されていた時代もあったとのこと。鉄道が通ったことで栄えたものの、1972年に閉山をしたという。




「鉄道が通るまでは、それはそれは不便な場所だったようです」
「まあ、こんな場所だしね」






往時はそこそこ繁栄していたようだ。



その時だ。ジャージを貫いてくる、刺すような痛み。見ると、ハエっぽい昆虫がい……  いっぱいこびりついてやがる!?




「うおっ!?  虻の大群がっ!?」
「に、逃げましょう!?」


気が付くと無数の虻に囲まれていた。慌ててエルコスさんを走らせ、全速全開で逃げに入る、のだが、




「なんでこういう時に登りなんだよ!?」
「追いつかれてますよ!?  もっと早く!?」






とにかく頑張ってみるが、いかんせん速度が出ない。



登り坂を頑張っても時速20キロがせいぜい。そして、それを下回ると虻がまとわりつく




「15キロを割り込むと刺されますよ!」
「どんな罰ゲームだよ!?」


ふと後ろを振り向くと、タイツ目掛けて虻が特攻かけてくる始末。




「虻って、黒系の色に寄ってくる性質があるようですね」
「それ早く言ってよぉぉぉ!?」






ここから下りになる。



悲鳴を上げつつ、猿払村との境界まで来た。ここから道は下り勾配。これで勝つr……




「まじかー!?  加速しねぇぇ!?」
「向かい風になってますね、今」


うん、最悪な条件かよwww

ほうほうの体で、道道732交点まで来た。ここらへんが丁度中間地点になるのだが、





通行止めでゲートが(エルコスさんの全高に注目)。






「通行止めのようだな」
「ダート道のうえに、湿地帯を往く道です。遭難必死ですよ」


ただ、自動車は無理でも、エルコスさんは普通に潜り抜けられる。




ガッ!「……………………!?(プルプルプルプル)」
「俺だってイヤだよそんな道!?」


そんなこんなやってると、再び聞こえる不穏な羽音。この季節、清流がありそうな森林地帯には、振り返らなくてもヤツがいる




「いやぁぁぁぁぁぁっ!?」
「今すぐ殴りに行ってください!」






平成初期のドラマネタでボケてるうちに、気が付いたら電柱すらない地帯に突入。



虻から逃げまくり、登り坂と向かい風に抗い続け、おまけに陽も照ってきて、そしてついに、




「エルコスさん大変だ。水がない」
「ウソでしょ!?」


満タンにしておいた水が尽きた。うん、正直北海道をナメてたよ。





ついにオホーツク沿岸に到達。



12:02、浜頓別に入ると、ようやく生活の匂いが戻ってきた。左手には大きな水面が現れた。ハクチョウ飛来で有名なクッチャロ湖である。





左手にクッチャロ湖が。



ここまで来れば、浜頓別の市街はすぐそこ。なのだが……




「や、やばい……  干からびる」
「国道の交点にセイコーマートがあったはずです、そこまで頑張って!」


んで、そのR275とR238の交点へ向かっていると、




「なんか工事してるぞ?」
「将来的に、ランドアバウトになるようですよ」






来年には出来上がっているようだ。



工事地帯を抜けて、R238交点脇にあるセイコマで、遅めの食事を採ることにした。それにしても、虻にヤラレた箇所がめっさ痒い




「帰ったらステロイド系の軟膏を塗っておいてくださいよ」
「ムヒでいいのかな?」


セイコマでは、ミニベロのご同業とブルベのご同行が同じように羽を休めていた。





基本的に反射ベスト着てるご同業はブルベの人と認識してる。






西のオロロン、東のエサヌカ


R238を北上し、さほど遠くないくらいの場所に、通称エサヌカ線という簡易的な看板が建てられていた。この「通称」であるが、もともとこの道は天北南部広域農道という名前を持っている。





ここのは「通称」とは書いてなかったが。






「近くにエサヌカ原生花園があることから、通称となったのでしょうね」
「なるほどね」


導かれるままに国道を逸れてみる。ここが、エルコスさんがおねだりしてでも走りたかった道か。





どこまでも続く一直線の道と空。






「お、おぅ……」
「ほら、来てよかったでしょ!」


うん、これなら納得だ。

本当に道が消失点に向かって一直線に伸びていた。オロロンも一直線で圧巻ではあるが、エサヌカは両側が平原なので異世界感がハンパない。




「こんな道があったんだ……」
「すごいでしょ?  こういう道もあるのですよ」






そりゃあ写真写真とせがまれる訳だ。



こんな感じの道なので、黙っていてもライダーが集まってくる。嬉しかったのは、こちらが自転車なのに、律義にピースサインを出してくれたことだ。




「昨今、ピースサインの文化が廃れたと思ってたんだが」
「道北にはまだまだ残されていたようですね」






ここでは自転車もオートバイもナカーマだZE!



道は数度、クランク上に屈折しつつ、北に向けて一直線に伸びる。やがて、右手に海原が見えるようになった。




「オホーツク海ですよ」
「日本海からオホーツク海か。考えたらすごいな」


距離と虻に悩まされたが、訪れて正解だ。





北海道版のCtoCだな。



そんな長く伸びる道を、味わうようにのんびり走る。途中、浜頓別にいたミニベロのご同業を追い抜いたり、三脚立てて自撮りしたり、今までの自粛の鬱憤を晴らすように絶景を楽しんだ。




「大先生も、こんなに楽しまれたのは久しぶりでは?」
「言われてみたら、そうかもしれないな」






ライダーが、サイクリストが、ドライバーが、思い思いに撮影タイムしてたさ。



そしてお楽しみは、浜猿払の漁港で終わった。さあ、今度は日本海側に戻る番だ。





お楽しみはここまで。






追い風に乗って


R238に復帰。今度は道道138で稚内に戻る予定だ。ルートの途中には、日本最北である北辰ダムがあるので、ついでに寄っていくか。




「わたしは構いませんが、無理はしないでくださいよ」
「沼川で決めよう」


走り出して分かったが、東からの風が、微妙に南東の風に変化していた。すなわち、完全に追い風に乗った状態だ。





基本的に北海道の沿岸部はどこも無風のことがなく、風力発電が良い仕事をする。






「これで少しでも時間が稼げればいいが」
「どうでしょうか……」


R238を北上していると、猿払のパーキングシェルターが現れた。なんとここには自販機があったので、万が一のために赤缶を1本仕込んでおく。





トイレと自販機のある贅沢なシェルター。



パーキングシェルターを出てすぐの路地を左折、その後、道道1089を経由して、鬼志別のバスターミナルまで来た。




「天北線の駅があった場所ですね」
「資料館がある。ちょっと寄り道していこう」






鬼志別バスターミナル。



鉄道路線が廃止され、バスに転換すると、駅跡は立派な建物のバス停に変わることがある。立派な建物は、地域のコミュニティセンターになったり図書館などの公共施設になったりして、新たな地域の拠点として生まれ変わる。




「転換補助金の影響も多いようですよ」
「その代償で鉄道の廃止かぁ……」


鬼志別のターミナルの1階が天北線の資料館になっていた。音威子府にあるのと同じように、当時使用されていた備品などが展示されていた。天北線の廃止は平成元年なので、もうかれこれ32年前の話。

言い換えれば、鉄道としての天北線を知らない世代が増えている、ということだ。




「だからこそ、こういう資料館は重要なんですよ」
「記憶からは死なず、か」






天北線が地元にとってどれだけ重要だったかが分かる。



時間をつぶしたところで、道道138号に復帰した。ここから丘陵地帯を経て、稚内市の沼川に至る。ふたたび虻との戦いを強いられそうだが、今度は追い風に乗れる。





道道84号よりかはソフトな感じ。考えてみたら天北線が並走していた道だ。






「うん、やっぱり楽」
「登りよりも向かい風を嫌うサイクリストは多いですから」


おかげで労せずして市村境まで来たが、登りはもうちょっとだけ続く。てっきり市村境が峠のてっぺんかと思っていたので、すっかり騙された。




「油断は大敵ですよ」
「まあ、いいんだけどね」






まだまだ登らされるので気を付けよう。



ようやく下り勾配になって、沼川まで快適な走行が続く。その沼川は、まだ若大将に乗っていた頃にわさびラーメンなるメニューを出してくれる食堂があったはずだが、今日は営業していないようだ。





沼川の市街地を抜ける。



この時点で16:30、まだまだ明るいが、陽はすっかり西の空に傾いていた。





夕陽が牧草地を照らし出した。






「どうなさいますか?」
「ちょっと時間的にキツいかなぁ」


エルコスさんにルートのリセッティングをしてもらったところ、こうほねの家に戻る最短ルートが1本ある、と。ただし、北辰ダムはもちろん、稚内市街をもスルーするという。




「兜沼を経由しますので、5年前のルートに近いですが」
「それで構わないよ」


道道138、R40、道道1118、510、811と乗り継いで、こうほねの家の前に出てくるショートカットルートだが、これでも走行距離は200キロを超える。ざっくり計算すれば実走距離が230キロほどになるとのことで、それに決めた。無理してダムを詣でることもないだろうと、気力が萎えたのもあるが、そもそも230も走れればお腹いっぱいである。

そうと決まればあとは粛々と走るだけ。牧草地帯に風景が変わった道を進んでいくと、交通量の多い道にぶつかる。





道は豊富バイパスの出口交点に出た。右折するとすぐR40交点。



R40を一旦南下し、兜沼方面に折れていく。広大な牧草地帯と巨大なトラクターが夕日に照らされる中、5年前に記念撮影をした稚内市のカントリーサインが見えてきた。




「大先生!  写真撮りましょう!」
「それじゃ、5年前のときと同じ構図で……」






5年前もここで撮った。



最後の撮影を終えて、牧場地帯を走り抜け、ちょっとした丘を越えると、海の匂いがした。





スタート地点に戻ってきた。






「着いた。なかなか手応えがあるルートだったな……」
「お疲れさまでした」


17:55、こうほねの家着。ちょうど陽が海の中に沈んでいくところだった。宗谷地方を周回する230キロルートを引くことができたが、宗谷岬や稚内市街を巡るオプションをつければ、一日300キロも可能なレイアウトになると思われるので、次に走るときはもう少しルートをいじくってみたいと思う。





オロロンラインが人気なのは、西陽と利尻富士が合わさる景色が秀逸だから、というのもある。












TITLE:宗谷ベスト230km
UPDATE:2020/08/27
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