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本日のルート (powered by ルートラボ)
わたしの日記「ちょっ…… 大先生、出力が落ちてますよ!」 「当たり前だろ、こんだけ雨降ってりゃ」 大先生は苦笑しながらそう返していましたが、わたしが知る限り、ワースト記録を更新するような状況が、そこにありました。 降りしきる本降りの雨、痺れて感覚のなくなった手、そして、目の前に迫り、どこまでも続いていく勾配およそ8パーセントの登り勾配。 「これ、久々にまずいやつだわ……」 わたしの呟きは、しかし雨音に掻き消されてしまいました。 ![]() 雨と登りと低温と。 さて、今わたしたちは、浅間山を左手に見ながら、群馬と長野の山間部を走るイベント、グランフォンド軽井沢に来ていm…… 「ちょっと待つんだエルコスさん、今回は少し違う」 「え、何か間違えてましたか?」 「私たちが今回出場するのは、グランフォンドKOMOROのほうだ」 あ、そういえば、参加者案内にはそのように書かれていました。大会日程もコースも同じで、混同してしまいました。 「これなんですが…… 何か関連があるのでしょうか? 見たところ、起終点が違うだけでコースなんかはほぼ同一のようですが」 年に一度、自転車が通れる白糸ハイランドウェイを通らない以外で、コースのプロフィール的には大きな違いはなさそうです。ただ、公式webページに、大きく「アニメ、コミック、キャラクター好きのガチ?イベント」と書かれていたのが気がかりですが。 「まあ、走るコースは以前参加した軽井沢の時と大きな違いはないな」 と、大先生。 「ただ、いくつかの理由でこっちにした」 とも。まあ、今回はrenas先生とあんちょるタソも出場するから、おおむね戦装束の消化、といったところでしょう。 そんな訳で大会前日、ゆっくりめの時間にrenas先生を回収し、高速に乗ります。 「おひさー」 「おひさー…… って、こないだ会ったじゃない。菜の花の時に」 「……あー、そうだっけ(笑)」 ボケまくりのあんちょるタソ。だけど考えてみたら、大会の参加は昨年の若狭路以来。実に一年ぶりの大会参加です。そうなると、当然のように乗り手のほうもボケまくってるみたいで…… 「大先生、やっちまった」 「なに忘れてきた?」 大先生から聞いた話ですが、renas先生が初めての大会に参加したとき、ご自宅にヘルメットを置いてきてしまったとか。そのときは、大会自体が都内で行われていたので事なきを得たのですが、 「また忘れた」 「もう佐野だぜ」 ふたたび同じ過ちをしでかしたようです。さすがに、今からご自宅に戻るというのは現実的ではないですし、そもそもエントリーの関係で、15時には現地に到着していないといけません。万事休すか、とか思ったのですが、そこはそれ、年の功というヤツです。 「大先生、どうなさいます?」 「大丈夫だ。通り道にタキザワがある」 年の功、というかカネの力でしたか。 前橋にあるタキザワサイクルは、自転車の界隈では割と有名なお店で、大先生はタイヤチューブや工具などを、ここで調達することが多いです。理由として、通常価格よりもちょっと安いからが挙げられるのですが、まさかこんな形で役に立つとは思ってもみませんでした。 「これからは忘れ物があったらタキザワで揃えればいいな」 「いや…… その前に持ち物チェックしようぜ」 大先生、その通りです。 ![]() 前日の受付ポイントへ。この時既に…… 無事に代替ヘルメットを入手できたところで、会場となる信州青少年の家に向かいます。到着は13:30頃で、少々早すぎたかな、という感じ。 「あ、あの、大先生……?」 「ん、なんだ?」 「なんか雰囲気が、その……」 そこはかとなく、匂うのですよ。痛ジャージの匂い、というか。 「そこはかとなく匂うだろ?」 そして目の前に現れる、ラブライブの痛車とか。 「そこはかとなくじゃなく、プンプン匂います(笑)」 「しかも、あれだけじゃないぞ」 大先生が指差す先には、そう、多種多様な痛車たちが。ははぁ、何となくわかりましたよ? 「もしかして、ああいう傾向が強いのですか?」 「というよりも、運営のほうが自ら推奨しているくらいだ」 一応、情報を探っておきます。とりあえず分かったこととしては、このイベントの副題が、「アニメ・コミック、キャラクター好きのガチ?イベント」で本当に間違いなかったということと、参加者ガイドのほうにハッキリと、「キャラクタージャージの着用を推奨」と書かれていることでしょうか。 そういえば、小諸といえばアニメ作品「あの夏で待ってる」の舞台になったり、「ろんぐらいだぁす!」で取り上げられたりしてました。もしかしたら、アニメで町おこしを考えているのでしょうか。 「小諸という街は、ちょっと悲しい歴史があるんだ」 唐突に、大先生が言いました。 「どのような?」 「新幹線の開通によって、街が凋んだ」 大先生曰く、かつては小海線の終端として、また、長野や遠く金沢まで至る特急の停車駅として、小諸の駅を擁す小諸の街は栄えたとのことです。しかし、1997年に長野新幹線が長野まで開通すると、小諸の南方にある佐久を通過するルートとなったことで、そして、小諸駅を通る北陸本線が第三セクター化されたことで、各駅停車と快速しか停まらない小駅に成り下がってしまいました。 つまり、大先生たちが軽井沢ではなく、小諸を選んだ理由、というのは…… 「ま、そういうことさ」 そう言って、大先生は笑いました。気が付くと、ステージではトークショーが始まってました。 「三宅センセと、店長と……」 「オーメニウム先生」 ですが、オーメストのブースにあった車両、おもいっきりアルミって書いてありましたけど。 ![]() なお、三宅センセは、翌日のロングコースを完走しました。 さて、天気予報を見る限り、大会当日の天気は思わしくありません。思えば、昨年の北アルプスの時も、序盤から雨でした。 「グランフォンドに呪われとるんだろうか……」 「さあ……」 できるだけ天気が好転しますように。大先生は本気で祈っていました。その結果、大会当日の空は、きれいな鉛色。 「か、神は死んだ……」 「それはろんぐらいだぁす! のナイトライド回における倉田亜美ちゃんの台詞ですね!」 「はいはい、行くぞ」 「あきらめてねー」 諸行無常ってヤツですね! わたし含めて皆さんに説得されて、大先生は渋々、会場へ運搬車を走らせます。 「ところで大先生、今回の戦装束はどれをお選びに?」 「今までに着てないヤツにした」 と、言いますと…… アレか、アレか、アレですか。 「アレじゃわからんて。ただ、renas先生もアイマスでキメるみたいだし、こちらもそれに合わせてみようと思う」 そう言った大先生は、以前サイクルモードで衝動買いした、ワンフォーオール版の千早さんジャージをお召しになっていました。 「今やシンデレラ全盛だが、無印メンバーを大切にするPは未だに多い」 P…… ああ、プロデューサーのことですね。 「ちなみに、renas先生も、デレのジャージデザインよりも765プロのデザインが良かったと言ってるぞ」 「ですが、renas先生の戦装束は……」 そう、走るチョメチョメ、こと新田美波さんです。思いっきりデレマスじゃないですか。 「先生曰く、三部作の二作目らしい」 「スターウォーズですか……?」 三部作の全貌が明らかになるのは来週の佐渡まで待たなければいけないのですが、このときはまだ知る由もありませんでした。 ![]() 出走前。予想通りフォルトゥーナ率が高め。 6:50、号砲が鳴って、スタートしました。 「スタートが早まりましたね」 「そりゃ、今にも雨が降りそうだしな」 そういった訳で、まずは1000m林道を軽井沢方面へ。この道は浅間サンラインの裏道として使える隘路で、実際、上信越道が封鎖されて下道が軒並み渋滞を起こしているときでも、労せずに軽井沢へ到達できるルートなのです。 「まあ、知ったのは軽井沢のときなんだが」 「実踏がうまいこと成立してますね!」 この道の特徴は、軽井沢までとにかく平坦なこと。おかげで、慣らしは完璧なようです。 7:25、軽井沢の第1エイド到着。ここで通過チェックを行います。 グランフォンド軽井沢の時と同じく、各エイドでは事前に配布されたチェックシートに、通過時間とステッカーをもらいます。これが全て埋まることで、完走の認定を受けることができます。それゆえに、このシートは大切にしないといけません。 「ですが、これから雨が降りますが」 「心配ない。コンビニでもらったビニール袋に……」 「もー、相変わらず準備不足なんだからぁ……」 そなえないぞつねに。ベーデン・パウエル卿にシバかれそうなんですが、大先生らしいといえばそれまでです。 そしてここから、最初の難関が。まずは、国道に復帰するために少し登るのですが、 「深窓の令嬢は、53×11で登るぜ」 「んなワケねーだろwww」 大先生はアウター発進しました、renas先生の策略にまんまとハマり、国道に復帰する頃には脚は売り切れて、 「もームリwww」 「当たり前じゃないですか!?」 そして、renas先生にチギられてしまいました。 軽井沢のときは、完全に閉鎖された白糸ハイランドウェイを通ったこの区間。今回はR146を登ります。長野原に位置する北軽井沢への主要ルートということもあり、当然ながら閉鎖されているはずもなく、交通量が多いです。 「走りにくい」 「どうにもならないですよ、これは」 地理的には、軽井沢の街から浅間越と呼ばれるサミット地点までは、どこを通っても斜度のきつい峠道であることは避けられないのですが、何せ国道側は、交通量の多さが問題です。ただ、これ以外に道がないのも事実であり…… 「諦めて脚を回してください」 「誰だこんなルート描いたのーっ!?」 代替ルートがあるなら、是非とも教えてほしいくらいです。 さて、renas先生から送れること暫し、第2エイドの北軽井沢には、8:25に到着。まだ雨は降っていませんが、雲行きは芳しくありません。 「行けるならとっとと行こうか」 「同感だな」 お二方は、食べるものを食べて、すぐさま出発しました。 県道235に折れて、しばらく上がったり下がったりを繰り返し、R144交点まで下ります。この途中にショートコースとの分岐があり、 「もうここで曲がっちまうか!」 「マスター、反則はダメだよ」 renas先生が暴挙に出そうになるのを、あんちょるタソが必死に静止したりしてました。 ルートは、バラキ高原に至る県道112交点まで下り基調です。そして交点から高原まではひたすら登りになるという、わかりやすいレイアウトです。あと、マメ知識としては、県道112号線を直進すると、あのグンマーの入口として名高い、毛無峠に至ります。……行ければ、の話ですが。 「道、つながってねーだろ?」 「あくまで法的に、ですけどね」 そんな道ですから、当然のように開幕から登りです。 「ほとんどインナー固定なんだが」 「まあ、仕方ないですかね」 ちなみに、わたしのインナートップにおけるギア比はおよそ2.4。ふだん遣いの50×18よりちょっとだけ軽いくらいなので、変速が煩わしい時は、多少効率が落ちても、インナーで走りきれるのです。 バラキ湖に至る林道部に入ると、斜度は一段と増します。仕方なしにインナーローまで落し、いつも通りじっくり走る作戦に切り替えます。 「何せ、先が読めない」 と、大先生は言います。実は天候の悪化に加えて、今年はルート変更に伴い、累積標高が100mほど増えています。その新ルート、こと県道94号湯の丸高原ルートは、過去に自動車で走破したことがあるとのことでしたが、その時ですら、『なんかエグい登り』だったそうです。 「できるだけ脚を貯めたい」 ですが、既にrenas先生は先行しています。早く行かないと、だいぶ待たせてしまいますよ? 「インナーを多用する坂は強いんだよなアイツ……」 もはや敗者の言い訳にしか聞こえません。ホラ、そんなこと言ってるから、何だか空から…… 「ミネラルウォーターが降ってきた」 「ああ、追いつかれてしまいましたか」 第三エイドである、東海大学嬬恋研修センターに到着した頃には、雨は本降りになりました。大先生は空を仰いで、言いました。 「か、神は死んだ……」 「知ってました? それ、元ネタはニーチェですよ」 ![]() 東海大学にて。シクロポリス編集幹事はにべあカラーのマシンを発見。 第3エイドで先着していたrenas先生と合流した大先生は、名物の炊き込みご飯と味噌汁で補給を行います。 「味噌汁は最高の補給食だ」 そして、炊き込みご飯を食べながら、今度はrenas先生が言いました。 「炊き出し感がパネェ」 こらこら、そんなこと言ってはダメですよ? そんな不届きなことを言ったせいかは分かりませんが、雨脚はさらに強まりました。renas先生はカッパ代わりのウィンドブレーカーを着込みますが、大先生…… 「んなもんはない!」 「バカなんですか!?」 ちなみに雨は、強めな本降りのレベル。痛ジャージが隠れてしまうことを厭わずに、他の参加者さんはカッパを着込むレベルといえばわかりやすいでしょうか。 ただ、道は下り基調です。パノラマラインを通り、愛妻の丘を経て、国道まで下ります。 「景色、全然ダメですね」 「楽しくないや」 そして、雨特有の問題も勃発します。ブレーキがほとんど効かないのです。 「と、と、停まってーっ!?」 「無理言うなって……」 雨の日になると、とにかくリムブレーキは効きません。そのくせ、シューは恐ろしく減り、下手をすると新品のシューが1回の雨の大会で葬られるほどです。 「な、な、なんか変な音が出てるぜ!」 「鉄粉がこびりついてるよマスター!」 あんちょるタソの悲鳴が聞こえました。あっちも大変そうです。 わたしたちが悲鳴を上げつつ坂を下り、鹿沢温泉のミニエイドに辿り着いたのが11:30のことです。ここから約7キロで400mほど登ります。 「今までのプロフィールから考えて、ここが一番ヤヴァイ」 「……というと?」 「距離が短い」 renas先生と大先生がヒソヒソ打ち合わせています。確かにrenas先生が言うとおり、前2つの登り区間と比べて、走行距離が3キロから4キロ短くなっています。本来ならば登り区間が短くてよいことなのですが、登る高さは据え置き。すなわちこれは、勾配が急であることを意味します。 「うぁ……」 「まあ、諦めて登るか」 11:40、登坂を開始します。 もうキツいのはよく分かってますので、大先生はインナー発進です。そして、renas先生が先行します。 「写真撮りながら先行ってるわー」 「おー、上で待っててくれ」 renas先生を見送ったものの、登っている途中から、新たな問題が発生したようです。 「……エルコスさん、大変だ」 「どうなさいました?」 「さむい」 「……は?」 ![]() もはや押してる人も少なくない。過酷でしかない。 わたしの呟きは、しかし雨音に掻き消されてしまいました。 「大先生、本当に危険を感じたら、リタイヤという方法も……」 今回ばかりは、それも視野に入れたほうがよいかもしれません。それほどに、今の大先生は、無防備過ぎました。いざとなれば全力で止めなくてはいけないと思い始めたのですが、しかし大先生は脚を止めません。 「大先生、あの……」 「ん、何か言ったか?」 雨音に掻き消されたのか、さきほどのリタイヤの案は、大先生には届いていないようでした。 どうしよう…… わたしはこのあと取るべき行動をどうしたらよいか、迷い始めました。大先生が突然、わたしを止めたのはそんな時です。 「だ、大先生?」 「写真撮影タイムだ!」 そう言って、徐にカメラを取り出して、そして何枚かパチリ…… しつつストレッチ。 「あ、あの、大先生?」 「さあ登るぜ!」 そしてふたたび登り始めます。 えーっと、その、どうしよう…… 結局、わたしは改めて言い出すことができないまま、大先生が坂と格闘する様を見届けることになりました。結果的に、湯の丸高原まで辿り着くことは出来たのですが、 「さむいさむいさむいさむいさむい……」 「は、早く暖を取って!」 大先生はすぐさまレストハウスに消えていきました。 湯の丸高原は、豪雪地帯ではないにしても標高が1700mに達し、すぐ横にはスキー場があったりします。麓ではまだ我慢ができたでしょうが、気温はヒトケタ、風と雨は容赦なくわたしたちに降り注ぎます。 レストハウスではカレーが振る舞われましたが、その横では、季節外れにストーブが稼働中。参加者の皆さんの中には、ガタガタ震えている人も。 「こりゃ、チトまずいぞ」 カレーを食べながら、先着していたrenas先生に声をかける大先生。 「この寒さの中、今度は10キロほど下るんだ」 「……危険だな」 そうです。ここからは小諸の市街地まで、ひたすら下りに転じるのです。 雨でスリッピーなうえに、麓まで急激に標高を下げ、ブレーキシューを恐ろしく消耗させた挙句、とにかく寒いのです。 「楽しくない」 「というか、死の危険があるな」 ともかく、下りないことにはどうしようもないので、お二方揃って下山を開始します。 峠の南側は、こちらが予想していた通りの勾配のきつさと路面の悪さでした。とにかく暴走をしないように、こちらの制御が及ぶ領域を保つために、常にブレーキをかけた状態ですが、停まらないどころか加速を開始する始末。 「いたた、手が痺れてきた」 「無理せず停まりながら行きましょう」 所々に休憩ポイントがあったので、そこで休みながらの下山です。本来であれば、加熱したリムを冷却するためのポイントだったはずですが、今となっては企画倒れです。 「はぁ、あとどれくらい下るんだ?」 「まだ4〜5キロはあるようですが」 わたしの言葉に、お二方、ゲンナリしていました。 「……途中、コンビニあったら寄るよ」 「そうだな。あったかいコーヒー飲みたい」 こうして、再スタートを切った我々ですが、このあと、ゴールまでコンビニは一切ありませんでした。 ![]() そしてデビル・スロープへ。 途中、田園地帯を下っていくところでは段差の振動で体力を削られ、 菱野の手前では、大先生の手がシモヤケ様で痒くなり、 至る所で歩道に誘導され、そこの段差でさらに削られて…… ようやく菱野の登りに差し掛かったのは、14:22頃でした。 「これが、デビル・スロープ……」 「その前に今回の行程が全部デビルじゃ!」 大先生、絶叫と共に意地で登り切りました。先着のrenas先生がお出迎えしてk…… 「マスタング兄貴! 写真撮るからもう一往復!」 「あそこにホンモノのデビルがいたぜ!」 文字通り、ほうほうの体で第5エイドに到着しました。お疲れ様です。 ここまで来てしまえば、残すところあと2キロ、平坦な林道を通ってゴールに向かいます。すっかり泥にまみれた千早さんと、対照的に無傷の美波さん。 「やはりカッパ必要だったかー」 「透明なやつな」 そして、あっという間に2キロ走り切り、ゴール…… 「……どこ?」 「ゲートがありませんけど?」 そして、ゴールゲートを探して右往左往する我々。 「このトラロープじゃね?」 「いやいやいやいやいやいや」 結局、ゴールゲートなんてものはなく、最終チェックを確認して完走証をもらうのが正解だったようです。まあ、何というか、 「締まりのない終わり方だな」 「ああ、本音が出た」 ![]() 雨と登りと低温と。 雨と汗と泥にまみれたグランフォンドKOMOROは、ひっそりと終わりを告げました。大先生とrenas先生は、提供された蕎麦をすすりながら、呆然としています。 「疲れたな」 「疲れたよ」 同じような参加者がひしめく休憩室で、ずるずる蕎麦を啜ります。すると、オフィシャルの人が現れました。 「自転車を預けた方、お待たせしました」 すると、大半の参加者がゾロゾロと外に出ていくではありませんか。 「これ、リタイヤ組だったか」 「あんなにいたんかーい!」 なんと、蕎麦を啜ってた参加者の大半は、途中で走るのをやめた人たちだったようです。まあ、この雨では致し方ないのかもしれません。現にわたしも、状況が悪化すればそうしていましたし。 なんとなく締まりのない終わり方でしたが、これで今回の出撃はおしまい! さあ、温泉にでも入っt…… 「さ、帰るか」 はぃっ!? 大先生の言葉に耳を疑いました。まあか、このまま本当に帰るおつもりでは……!? 「いや、もう何だか面倒くさくなって」 サッと着替えて、わたしをラックに固定する大先生。見るからにお疲れのようですが…… 「お言葉ですが大先生、もっとしっかり休養を……」 「大丈夫、どっかのパーキングで休m……」 「だ、ダメだっ!」 …………………… その瞬間、大先生の手が止まり、renas先生がわたしを凝視し、あんちょるタソが吃驚してました。 自分でもなんですが、普段では出さない声が出ました。いえ、出てしまいました。 わたしは一息置いてから、 「必ず温泉に入って身体を温めなさい! 来週もあるんですよ!」 そう言って、大先生を睨みました。自分ではわからなかったのですが、後に大先生が、「殺されるかと思った」と言ってました。そんなつもりはなかったのですが、でも、大先生にはようやく通じたようです。 ふぅ、と溜息を一つして、 「わかったよ。言うことを聞く」 そう言って、大先生は苦笑いを浮かべました。 ![]() そして1杯の蕎麦が称えてくれる。 「ねぇねぇエルコスぅ」 「ん? なに?」 「さっきのアレ、怖かった……」 「ごめんね。ちょっと本気になっちゃった」 大先生たちが、菱野温泉薬師館で一風呂浴びている頃、わたしとあんちょるタソは、運搬車の中で待機しています。 「大先生はね、あれくらい強く言わないと、聞かないときがあるのよ」 「へぇ。もっと柔軟に対応できるって思ってたけど」 「意外と子供なのよ、あんなナリして」 わたしは思わず笑ってしまいました。そして、ふと思い出します。 湯の丸高原への登り、あの雨でもしも状況が悪化していたとして、果たして大先生は素直にリタイヤを受け入れるでしょうか。 「うん、絶対にリタイヤしないね」 「やっぱり。あんちょるタソもそう思う?」 「うん、間違いないね!」 いや、そんなに自信たっぷり言わなくても…… 「だって、本当にリタイヤする時は、エルコスが走れなくなったときじゃないかな?」 「……えっ!?」 わたしは面食らいました。まさか、いつもおっとりあんちょるタソが、そんな考察を口にするなんて思ってもみなかったから。 「だから、今日はこれでよかったんだよ。マスターも楽しんでたし」 「そ、そうかな?」 「そうだよ」 …………………… わたしはなんだか恥ずかしくなって、頭をぼりぼり掻きながら…… いや、泥が詰まったBB下をばりばり掻きながら、 「あ、ありがと」 それが精いっぱいでした。 そして、すっかり温まった大先生たちが戻ってきました。その第一声が、 「すげえぞ、脱衣場で三宅センセといしこうさんに遭遇したぜ!」 ……でしたとさ。 ![]() 泥だらけさ。 |
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