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本日のルート (powered by ルートラボ)
イントロです。
3月に入り、少々暖かくなってきたので、暖機運転もかねてちょっと出撃してきたのだけど、ここでちょっとした疑問がエルコスさんから提示された。
「またまたぁ」とエルコスさんは言うが、本当だから仕方ない。 という訳で、今回の出撃の顛末だが、執筆を開始したのは3月6日の13時過ぎ。……え、仕事? エルコスさんの日記「エルコスさん、ちょっと出ようか」 珍しいことに、大先生からそう言われました。 とある日曜日の早朝の出来事です。大先生は、手慣れた手つきでわたしのチェーンにオイルを…… 「あの、大先生、それ何ですか?」 「最高級のチェーンルブですが何か?」 「な、何ですかこのやっつけ感(笑)」 「FZIです」 それは、紙にでっかく、FZIとプリントアウトされたものを貼っただけのチェーンルブ。たぶんワコーズのだと思いますが…… 「今日から(設定的に)FZIは最高級チェーンルブということにします」 「えー!?」 そんな訳で、わたしはFZI(笑)をたっぷり補給し、出発と相成りました。 「それで、今日はどちらへ?」 「まあ、近場で申し訳ないが、エノモトにでも行くか」 いつも通り、扇大橋から荒サイへドロップインし、一路、上尾市にある榎本牧場へ向かいます。 「そろそろ暖かくなってきたし、少しずつ乗ってあげないとな」 「あら、ありがとうございます」 いつも、仕事の瀬に撃沈している大先生からそんな言葉が出るなんて思っていなかったわたしは、ちょっと嬉しくなってしまいました。 ところが、です。 「大先生、一体、どうしたのです?」 わたしがその違和感を感じ取るのに、それほど時間はかかりませんでした。 向かい風で微妙な登り勾配、そんな荒サイのコースレイアウトは仕方ないとしても、明らかに大先生の走りは精彩を欠いていて…… いえ、言うなれば、だいぶ無理をしているような…… おかしい…… 大先生は、何を焦っているのかしら。 わたしは言葉に出さず、ただ、大先生がわたしを走らせるその行為に身を委ねるしかありませんでした。 しばらく走ると、朝霞水門が見えてきました。この手前が登りになっていますが、大先生はギアチェンジなしに、ダンシングでクリアします。いつも通りといえばいつも通りなのですが、大先生の呼吸はだいぶ荒くなっていて…… 「ちょっと停まってください!」 もう我慢の限界。わたしのほうから強制停止しました。 しかし、大先生はサドルから降りようともせず、荒れた呼吸を元に戻そうと必死でした。わたしは、朝霞水門に掛かる橋の上で、肩で息をしている大先生に詰問します。 「どうしたのですか、大先生らしくない」 すると大先生は、 「ちょっとね…… 色々溜まったものがあって」 聞けば、仕事でのストレスや、退院後の体力低下に伴うストレス、そんなのが積もり積もって、このような走りになったとか。 「まさか…… それで無理して走っていた、と?」 「ああ、まあ……」 ばつが悪そうに、視線をそらす大先生。 ははぁ。わたしは納得しました。あの無茶苦茶な走りは、ブランクなんかじゃなく、ストレスの発散なのだと。 「あのね大先生、それはそれでわたしは構いませんが……」 わたしは言ってやりました。 「そんな走りをしてたら、大先生の方が先に参ってしまいますよ?」 朝霞水門を越えて、次の橋が秋ヶ瀬橋。これを対岸へ渡り、秋ヶ瀬公園の敷地を抜けると、いわゆる『ゴルフ場脇』ルートになります。 先ほどとは打って変わり、穏やかな走り方になった大先生に、わたしは語りかけます。 「大先生がいつも言ってるじゃないですか。『楽しもう』と」 大先生は何も答えませんが、たぶん通じているはずです。 「そんなに焦らなくても、時間が解決してくれますよ。……ほら」 わたしは大先生に、停まってくれるように言いました。そこには―――― 「ああ、もう春か……」 「ね」 寒い季節は終わりを告げて、麗らかな春の兆しがすぐそこまで来ている。焦らなくても、時は巡ってくるのですから。 「大先生、写真でも撮りましょうよ」 「そうだな…… 撮るか」 わたしから降りることすら面倒くさがっていた大先生が、一枚パチリと撮ってくれました。 エノモトまでの道程ですが、だいたい秋ヶ瀬が中間点になると言われています。しかし、実際のところ、秋ヶ瀬からエノモトまでは、だいたい30分もあれば着いてしまいます。 「久しぶりの出撃なんですから、楽しみましょうよ」 という訳でわたしたちは、通称「田園地帯」で小休止。雰囲気のあるオブジェでもう一枚。 「どうですか大先生! キレイに写ってますか?」 「悪くないね、ほれ」 そんなやり取りをしている間も、無数のご同業が北上を続けていきます。一人の方もあれば、グループの方もいて。 「いよいよシーズンインだな」 「そうですね…… 今年はたくさん、連れて行ってくれますよね?」 期待を込めて、わたしは聞いてみました。 大先生は何も答えてくれませんでしたが、優しく微笑んでいました。 川越線の踏切を越えて、荒サイは上江橋を渡るのですが、大先生は直進します。 「あれ、曲がらないんですか?」 わたしの問いに、大先生はこう言います。 「はつもうでの時にこのルートを通ったろ? あのとき気が付いたんだ」 「何をです?」 「こっちのほうが早い」 県道57号に入りました。確かに、元旦に鷲宮神社まで走った際、このルートを使いましたが。 「あ、なるほど」 開平橋の交差点まで来ました。なるほど、これなら橋を二回渡る必要がなくなりますね。 あとはいつもどおり、八枝神社のところを曲がって…… 「あら、サイクリングロードを往くのですか?」 途中で左に折れたので。 「せっかくだから、あのベンチのところで写真撮ろうよ」 と、大先生。ベンチというのは、サイクリングロード側から榎本牧場に入る入り口付近に置かれたもので、木陰にあることもあって良い雰囲気です。 わたしをベンチに立てかけて、カメラを構えてパチリとやる大先生。その背後には、荒川沿いの開けた風景が大きく広がっていて…… 「あ、飛行機!」 「ホンダのエアポートだな」 文句なしの青空に、小さな飛行機が一機、飛び立っていきました。 「後で行ってみるか」 「そうですね、……!?」 言った後で、わたしの脳裏をに強烈な寒気が襲いました。エノモト、エアポート、河原の道……!? 「い、いやぁぁぁぁぁっ!?」 「え!? じゃあやめる?」 「み、道は選んでくださいね!?」 わたしのトラウマが蘇りました。かつて、ミスコースをした大先生が、河原のぬかるんだ道に突入した結果、わたしは目も当てられないほど泥だらけになり、しかも良い天気が仇になり、土がこびりついて掃除が大変だったという、思い出したくない過去がありました。 「大丈夫だ。県道12号まではちゃんとした道を選ぶから」 「本当でしょうね!?」 本当だってば、と大先生。うー…… どうにも不安でしかないけれど、信じるしかないのですねこれは。 半年ぶりのジェラートは相変わらずのおいしさだった、と大先生。例によってわたしは食べれませんが。 「お、ポイントが溜まった」 大先生のポイントカードが全て埋まっていました。次回はシングルが無料になるそうです。 「せっかくだから、今召し上がっては?」 「さすがに寒い」 春の匂いがそこまで来ていても、まだまだ寒さは引かないようです。良く見ると、大先生は焚火に当たりながらジェラートを食べているではないですか。 「ジャージに穴をあけないでくださいよ」 「ペダルたんは一着しかないからな」 そんな榎本牧場、まだ時刻は9時半です。今日は天気が良いから、これから賑わいを見せることでしょう。 ジェラートを戴いた後は、大先生曰く「ちゃんとコースを考えて」県道12号に入り、太郎右衛門橋を渡ったところで土手沿いの道へ。道端に菜の花が咲いていたので、 「大先生! 写真撮りましょう!」 「好きだねぇ」 菜の花をバックに、一枚。そういえば、もう菜の花の時期ですけど、今年はあそこに行くのでしょうか? 「4月の第一週が土日だから、行ければ行きたいねぇ」 とのことです。ですが、 「でも、桜の時期はもう一週後のほうがよろしいのではないでしょうか」 「判断に迷う部分なんだよなぁ」 例の場所で、桜と菜の花のコラボを狙うには、4月の第一週か第二週かでバクチを打つ必要があります(もちろん、両方行く、という選択肢もありますが)。付け加えると、大先生のプランニングの中に、三春の滝桜を詣でるプランというのもあるようなのです。そうすると、第一週が例の場所、第二週が滝桜、ということになりそうなのですが…… 「両方まとめて詣でる、という必殺技も、なくはない」 「正気なんですか!?」 わたしは声を上げてしまいました。その気になれば可能なプランニングですけどね。 そこからしばらく土手沿いに南下し、ホンダの建物が見えてきたところで川沿いに左折すると、ホンダエアポートの滑走路が見えてきます。軽快な音楽が流れ、あちこちではパラシュートの準備をしている方々が。どうやら、これからテイクオフするようです。 ここは飛行場でありながら、ツーリングで訪れる人たちのオアシスになっています。丁度喉が渇いていたようで、大先生も元気ハツラツゥ? な一本をのどに流し込んでいます。 「ご同業、多いですね」 「右岸側のランドマークだからねここは」 トレックがいて、デローザがいて、スペシャライズドがいて…… サーヴェロもいますね。 一台去っては一台やってきて、また一台去ったら今度は集団で。みたいな出入りを眺めていると、ふと大先生が上空にカメラを構えているではないですか。 「何か写ってますか?」 「写らない。だけど、パラシュートが下りてくる」 え? わたしも上空に目を向けると、そこには無数のパラシューt…… 「きゃぁぁぁぁぁっ!? 落ちるっ!?」 まるで墜落するかのような勢いで降下する、一本のパラシュート。地面に向かって真っ逆さまに落ちた…… と思いきや、地面に激突する寸前でフワリと減速し、着陸。 あー…… びっくりしたぁぁぁぁっ!? 「うまいもんだ」 大先生も感嘆の声を上げていました。 しばらくパラシュートの行方を追ったところで、程よく休憩できたので再出発です。荒サイ右岸の道を走っていると、比較的新しめの道が左側に伸びているのを発見。ほかのご同業もそちらに曲がっていくので、 「行ってみますか?」 「順路なの?」 「たぶん違いますが、皆さんそちらに曲がってますので」 大先生は左折する道を選びました。 舗装しなおされた道は、やがて荒れた舗装の道となり、そして道幅が狭くなったと思ったら自動車がやってきて、 「ハズレでしたかね?」 わたしが申し訳なさそうに言うと、 「いや、悪くない」 大先生はそう言いました。 最初は様子がおかしくて心配していましたが、どうやらやっといつもの大先生に戻ったようです。 やがて道は、荒川を渡りました。そして、通りに出たので右折すると…… 「これ、さっき通った道ですね」 「ありゃー、元に戻ったか」 さっき通った道でした、失敗失敗。だけど、これで太郎右衛門橋まで行かなくとも、ホンダエアポートに行く道を覚えましたから、結果オーライということで…… 「泥まみれにならずに済みそうだな」 「怒りますよ本当に」 とはいえ、陰口を叩けるほどにストレスが抜けたみたいで、まずは一安心です。 帰路は、定番の開平橋からの荒サイルートで秋ヶ瀬公園まで一気に進軍です。大先生も少しずつ疲労しているようで、公園の自販機で赤缶チャージを施します。 さて、大先生がスマホの地図機能を駆使して、何やらルートの確認をしています。 「新しいルートですか?」 わたしが聞くと、大先生はこう返します。 「彩湖でダムカードがもらえるらしい」 荒川貯水池、自転車乗りの界隈では『彩湖』のほうが通るそこには、ダムなんてありません。ですが、ダムカードが発行されているのです。ちょうど通り道なので、もらいに行きましょう。 幸い、彩湖の自然学習センターがあるグリーンパークへは、秋ヶ瀬公園から県道40号線を挟んで、一本道です。 さて、先述で「自転車乗りの界隈で〜」みたいなことを言いましたが、彩湖のほとりを周回するルートは、自転車乗り、特にロード乗りの練習コースとしてよく話題になっているルートです。また、周回コースのすぐ脇、荒川左岸の堤防下は、比較的舗装状態の良い直線道路で、ここなんかも練習にはもってこいの道です。休日ともなると、大勢のご同業、特に競技志向の方々が集まることで有名です。 「ジャイアントがいて、ビアンキがいて、ピナレロがいて……」 「すげえな、東叡ランドナーまでいるわ」 思い思いのご同業自慢が、そこにはありました。なお、2017年の3月11日には、TOKYOエンデューロが開催されるようです。きっと賑わう事でしょう。 余談ですが、この周回コース、自転車専用道路という訳ではなく、多くの歩行者も利用しています。ちなみにこの日は、マラソンのイベントが開かれていて、周回路をランナーが駆けていました。わたしたちは、その邪魔にならないように通り抜け、自然学習センターに向かいました。 国道沿いに建てられた自然学習センターの受付でダムカードをいただき、さあ帰ろうか、といったところで、 「……あ、そういえば」 大先生が視線を向ける、その先には、 「美女木ジャンクションですね」 「中村先生お気に入りの美女木ジャンクションだ」 だから大先生、そういうメタなネタはいかがなんでしょうか。うちのwebページ拝見している方で、モモノキの隊員さんなんてどれだけいるのやら…… 「ま、せっかくだからこっち行こう」 と、大先生の思いのまま、美女木ジャンクションから県道68号、そしてR17旧道を経て戸田橋へ。ここからは再び荒サイに潜り込んで、帰路に付きます。その道すがら、 「あ、大先生、何かありますよ」 わたしが声をかけると、大先生は律儀にUターン。そこにあったのは、 「おお、犬のUNK……」 「そっちじゃなくてっ!」 しかも危うく踏んづけるとこだったし、もう…… ちなみに、見つけたのは『戸田の渡し』。かつて、この荒川を渡るための渡船があったことを示す碑です。 「中山道の一部だったようだな」 と、大先生。この川の向こうに続く、かつての街道を歩むと、軽井沢、塩尻、中津川を経て、京都へと通じていました。今でもその一部が残されているはずです。 「また、今年も旅がしたいですね……」 わたしが呟くと、大先生もそれに合わせて、 「ここではない、どこかに行きたいねぇ」 そんなことを呟いていました。 今年もまた、春が来ました。 さて、わたしたちはどこに、行きましょうか…… おわりに
幼少のころ、絵を描く才能がないのをテキストに振り替えたのは良い判断だったと、つくづく思う。 |
エルコスさんのマイピクチャ
![]() 余談だが、このネタのためにワコーズを買い、そしてわざわざ細工した。 エルコスさん日記8のテキストファイルはこちら。いつも通りの塩対応だ! |