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193:ジェラート・ラン2



text&photo  by  ymr20xx@y-maru.com。







スマホ買いました。


某月某日、遂に抗えなくなってスマホに買い替えた。






SH−01Fというヤツです。



まあいずれ、という感じはあったが、ようやく、という感じでもある。顛末を少し話すと、出撃のメインが自転車にシフトし始めてから、どうしても軽量コンパクトなノートPCが欲しいと思っていたところから始まるのだが。

旅先での執筆活動、息抜きのための動画鑑賞、音楽鑑賞、そして有事の際のインターネット環境などなど、旅先でのガシェット依存率はバカにできないレベルだったりする。ノートPCを一台持っていけばコトは足りるのだが、いかんせん重たいし嵩張る。そうなると、







電話の機能<ガシェットとしての性能






であり、さらに申せば







電池の持ち<<<汎用性






という決断は、えらくあっさりと決まった。某月某日、淀にケンカ売りに行って、あっさり機種変更が完了したのであった。






お仕事モード時。奥に見えるはステファニィさん。



んで、速攻で持ち運び可能なキーボードと、仕事に必須なテキストエディタを導入。






jota+、と書いてイオタ・プラス。



執筆活動に必要な準備が整ったので、最近ではカバンにキーボードを入れておいて、出先にパチパチやったり。とりあえずイイ感じになった。

あと、最近のスマホは、カメラの性能も良いようで、なかなかパノラマな写真も撮れるようになった。






元サイズは3840×2160。完全な16:9比率だ。



これって、コンデジの代替とかにもなるんでねか?  なんて思ったので、スマホの性能を確かめるために、ちょっと出撃したのがこないだの話。それで一回分の記事が書けるというハナシなのだが、







どうしてこうなった?









エルコスさん日記(のようなものか、これ?)


「今週もお出掛けナシですか?」
  と、エルコスさんが私に囁いた。確かに囁きたくもなるだろう。考えてみれば、佐渡から帰ってきたっきり、エルコスさんはずっとお留守番。ここ連日、土曜出勤が続いた上に、梅雨入りした世は気がつくと連日の雨。そんなとき、翌日の日曜はかなりの確率で天気が良いらしい。そりゃ「お出掛けしようよ」って囁きたくもなる。
「うーん、そんなに遠くじゃなくてもいいかい?」
「もちろんですよ!」
  犬が尻尾をふりふりするかの如く、嬉しそうな声をあげるエルコスさん。これで、「やっぱやーめた!」なんて言ったら本気で口聞いてもらえなくなりそうだ。
「じゃ、行くか」
「やたーっ!」
  ……という訳で、私は出撃をしたのだった。


「大先生、起きて! もう朝ですよー?」
  ぁえ? 時計を見ると、もう朝の8時30分ではないか。本当であればもう出発している時間なのに。
「ああごめんごめん、すぐ着替えるわー」
「急いでくださいよー」
  ちょっときつめに、エルコスさん。だが、声は上ずっている。本当に嬉しそうだな、犬か?
「ひどーい!」
  ああすまん、聞こえてたのね。


  んで、買ったばかりのスマホの使い勝手を試すつもりも兼ねて、お手軽コースを選んだ。ちょうど天気も良いし気温も高いのて、アイスでも食べに……
「アイスとジェラートは、厳密には違いますよ。乳脂肪分はアイスよりも少なくて……」
  ぐぬぅ。エルコスさんは物知りだからなぁ。迂闊に喋るとボロが出てしまう。
  ……とまあ、そんな物知りエルコスさんを連れて、目指すは荒サイといえばお馴染みの榎本牧場だ。行って帰ってきておおむね100キロの距離なので、お手軽にロングライド感が味わえる。そして、榎本牧場名物のジェラートでも戴こうか、という算段だ。
「でも、エルコスさんは食べれないよなぁ」
  すると彼女はこう言ったのだ。
「わたしはいいんです。大先生が赴くままにわたしを走らせてくれれば。一緒に走れることが、嬉しいんですよ」
  ……くぅーっ、言ってくれるねぇ。ホントにいい娘だ。
「それじゃ、今日も頼むぞ」
「はいっ!」




絶好のサイクリング日和だね




  こうして、荒サイに降り立ったのが9時42分。風は心なしか追い風だ。ゴルフに興じたり野球に興じたりして賑やかな荒サイだが、やはり好天故に、あちこちご同業の姿も多い。我々もさほど力むわけでもなく、久しぶりに乗った割にはクルクルよく回る脚が、みるみるうちに速度を上げていく。
「気持ちいいですねー!」
  ああ、確かに今日は自転車日和だ。久しぶりの感触と、ギアの入りやブレーキの利き具合をひとつひとつ確かめながら、のんびり、……というにはやや早いペースで駆けていく。ランドマークにもなっている岩淵水門を抜けると、BBQに興じるデイキャンパーの姿が。
「泊まりがけの旅もしてみたいもんだね」
「キャリアをつけて、ですか? いいですけど、あのお手製キャリアって色々問題あったんじゃ……」
  そうだ。さくら道の時に気がついたのだけど、色々干渉しちゃって手を加えなければいけない部分が出てきたのだ。
「ああ、それは一応解決策があるので、おいおい検討するさ」
  策はある、とは言っても、まだ検討中な部分が多いんだけどね。
  さてさて、快調に走っていくと、やがて朝霞水門に着く。ここ荒サイの第二のランドマークになっている他、ラジコン飛行機を飛ばしていたり、巨大なGPアンテナを立ててナウオンエアーしていたりする。総じて、
「のどかですね」
「正しい休日のスタイルだな」
  最近ではスマホやパソコンが爆発的に普及して、気がついたら外にも出ずに家でポチポチやる若者が多いが、そればかりではなく少しくらいは外に出て遊んだ方が良いと思うのだが。
「まあ、えっちい動画ばっか見ててにへらにへらしているよりかは健全ですよ」
「すごくいいこと言ってるが、顔赤くすなるほど恥ずかしいなら無理して言わなくてもいいんだよ」
「……ハイ」
  エルコスさんを困らせてはいけない。




朝霞水門。ここまで来ると秋ヶ瀬橋は近い。




  秋ヶ瀬橋まで来たら、一旦土手沿いの道を外れ、橋を渡って右岸から左岸へと移動する。左岸には秋ヶ瀬公園があり、そちらのほうが道がよくて走りやすい。これは去年、ジェラート・ランをしたときに判明した事実。
「そういえば、去年のジェラート・ランは、確か晶さんとでしたね」
  そうだ。もっと正確に言えば、先代の内藤さんのラストランでもあった。あのときはエルコスさんに大半のパーツを移植するので、ストックのパーツを組み付けての出撃だった。確かあのときも、今日みたいによく晴れてたなぁ。
「後悔してませんか?」
  と、エルコスさん。私は答える。
「後悔してないよ。俺も含めて、いつかどこかで別れが来るんだ」
  そのときまでに、どれだけよい関係が築けて、どれだけよい思い出が築けて、どれだけそれを語れるか、それが大事なんだと思う。
  幸い、内藤さんは予備役としてローラー台専用マシンとして第二の人生を送っているので、まだまだ乗る機会はある。いつか、フレームがぽっきり逝くまで、大切に乗っていくつもりだ。
「だから、エルコスさんも大事にするよ」
「大先生……」
  嬉しさからか、感極まって泣きそうになっているエルコスさんをを、ポンポン、と叩き、秋ヶ瀬橋を渡ろうとしたら、なぜかダートに突っ込んでたりして。




走れないことはないが精神的にはだいぶよくない。




「大事にするって言ったじゃないですかーっ!?」
「ある程度は勘弁してよ」
  荒サイは油断できない。突然ダートになることもあるのだ。


  10時32分、秋ヶ瀬公園を通過。田園とグラウンドと取水施設が広がる右岸よりも走りやすく、そして自販機も点在しているので補給がしやすい。
「お祭りなんですかね? ドラム叩いてる人とかいますし」
「いや、たぶん練習してるんだろう」
「へぇ、おもしろいですね」
「だろう。家族連れでデイキャンプやってたりしてて、ここは一日過ごすにはなかなか楽しいんだ。ほら、あそこじゃバーベキューもやってるだろ?」
  ただ、そのおかげでクルマはちょっと多いんだよなぁ。事故らないように、事故らないように。




秋ヶ瀬公園内を通過。




  羽根倉橋たもとのサーキット秋ヶ瀬あたりから、荒サイの往路後半戦だ。
「ここからは雰囲気が変わりますね」
  エルコスさんがそう感想を述べた。そういえば彼女はここを走るのがは初めてだったな。
  ご推察のとおり、羽根倉橋より南は河川敷ふうのルートだが、北は木々と田園に囲まれ、川の姿は見えなくなる。
「これはこれで趣がありますね」
「まあ荒サイって言われてるけど、このあたりは荒川の土手沿いってイメージは薄れるね」




土手沿いのイメージはなく、むしろ峠気分。




  ちなみに、南側の河川敷ルートと比べると、道幅はグッと狭まる。すれ違うのも追い抜くのも気を遣う。
「緊急河川敷道路というのが正しいのですよ。つまり、厳密には秋ヶ瀬橋より南側は、サイクリングロードじゃないんです。……当然、高速でもないですよ」
  そんなにクスクス笑うなって。高速ってのはただの表現方法なんだから。
  そんな、名実ともにサイクリングロードとなった荒サイを走っているのだけど、最近では本気な方々だけでなく、クロスバイクでポタリングする方もいて、さらには男子だけでなく女子の姿も多く見るようになった。自転車は本当に流行っているようだ。
  そんな荒サイだが、年中至るところで工事をやっている。今回も、川越線を跨ぐ手前でちょこちょこと迂回を強いられた。土手の堤防を善くする工事ということだが、できれば早く終わらせてほしい。迂回路はけっこう走りにくいのだ。
「まあ、多少はごちゃごちゃしてたほうが楽しいこともあるんだけどね」
  そんなもんなんですかね。みたいな感じで。




ごちゃごちゃ好きな皆さんで大賑わいである。




  川越線の高木踏切が見えてくると、なんとなく遠くまで来たなぁ、という気分になる。
「土手の上に踏切って、斬新ですね」
「あるところにはあるんだけどね」
「あっ! 電車来ましたよ!」
  ちょうど、大宮方面行きがやってきた。土手の踏切も斬新だが、その踏切がしまるというのはさらに斬新だ。やってきたのはりんかい線車だが、目の前を結構なスピードで駆け抜けていくのは、いつでもワクワクする。エルコスさんも嬉しそうにキャッキャとはしゃいでいた。




このあと電車も通ったよ。




  予期せずに鉄分まで補給できて、私もエルコスさんも満足した。さあそれじゃ帰るk……
「ジェラート食べるんじゃないですか?」
  エルコスさんは的確にツッコミを入れてくれる。ある意味お母さんだ。そりゃユートピア学園だって金を積むわな。
「だめですよメタ発言は。四季さんに怒られますよ」
「ごめんごめん、冗談だってば」
  ちょっと怒られてしまった。本気で怒られる前に先を急ごう。
  前回のジェラート・ランでは、この先の上江橋で道をロストした訳だが、今回は下調べを済ませている。上江橋を川越方面に少し走ると、荒サイへの道が開ける。




ここが結構迷いやすい。




「まるでRPGみたいですね、迷路みたい」
「実際、ここがわからなくて迷子になっちゃう人もいるらしいよ」
  ビアンキのクロスバイクとママチャリ夫婦の車列をパスしつつ、自転車道へと左折。ここからしばらくは入間川と荒川の間を仕切る堤防の上を走ることになるのだが、その堤防の下側、すなわち川に近いところはヌタヌタのドロドロ。……あ、ランクルが飛び込んでった。
「さすがにエルコスさんもありゃ無理だろう?」
「そもそも飛び込むこと前提で話を進めないでくださいね」
  先代の内藤さんはシクロクロス車だったので、まだ何とかなったかもしれないが。まあそういう遊び方は最近してないので飛び込むことはないのだけど。
「入間川といえば、ikeパパさんと河原で遊んでたってことありましたよね」
  もう10年以上も前の話だけど。あの頃はみんな若かった。私も、とても悪路を走る車ではないミラターボ(当時)でサイド引いて遊んでたからなぁ。
「河原って、そういう遊びをするもんだってみんな知ってるのかなぁ」
  なんて呟いているその脇で、オフロードバイクが砂煙を上げて飛んだり跳ねたりしているのが見えた。目の前には、「入間大橋」と書かれた標識と信号が。
  ここを直進し、堤防上だったり堤防下だったり、ちまちまと走るところが変わったりしていたが、いつしか道は県道339号線に。どうやらこの先堤防が工事のために通れないということらしいが。
「のどかですね」
「まず車に出会わないな」
  という感じの道で、まあ平たく言うと田舎道である。ときおり思い出したかのようにクルマが我々を追い抜いてくくらい。私は言った。
「実はサイクリングロードよりも、交通量が少ないこういう道の方が好きなんだよね」
「そうなんですか……」
「景色が目まぐるしく変わるのって、結構大切だと思うんだよ。でないと、飽きちゃうし」
  なるほど。エルコスさんは感心していた。
  県道にシフトして最初の信号を右折し、ふたたび堤防のサイクリングロードに戻った。そこから少し走ると、遠くに飛行機の姿と、パラグライダーに興じる多くのパラシュートが……




飛行場が見えてきた。




「大先生待ってください。わたしたち、行き過ぎてませんか!?」
  11時20分の話だ。エルコスさんの慌てた声にこちらも一瞬、緊張する。記憶が確かならば、榎本牧場はホンダエアポートのちょっと手前で、しかもエアポートの対岸にあるはず。つまり、
「行き過ぎた」
  ミスコースしたようだ。どこでだ? なんて考えなくてもわかる。さきほど直進した入間大橋を右に曲がるのが正しかったのだ。
「どうしますか? とりあえず修正のルートを……」
  と、エルコスさんは言うが、こうも豪快にやっちまうと、もはや焦るのも何となくバカらしい。せっかくなので飛行機でも見ながら、ちょっと休憩しようじゃないか。
「少し休もうよ。がっつくだけが全てじゃないし」
「……そうですか。そうですね」
  何か含みがありそうだったけど、エルコスさんは納得したようだ。我々はエアポートで小休止することにしたのだが、広大な滑走路と、お手製な感じの管制塔、そしてその横に自転車を引っ掛けるスタンドが完備してあって、どうぞお休みください、と言わんばかりに自販機と水道の蛇口が用意されていた。
「おお、なんて強運」
  日差しを受けてカビカビになった顔を、蛇口の水で豪快に洗う私を見て、エルコスさんは感嘆の声をあげた。まあ正直言って、自販機くらいはあるだろうと思っていたが、水道まであるとは思わなかった。
「まさに砂漠の中のオアシス、って感じですね」
「こんなに暑いと、なおさらだね」
  お陰でサッパリした。榎本牧場まであと少しだったが、ここで空になったボトルに水を補給しておいた。そして、入間大橋側に戻らず、もう少し北上して、太郎右衛門橋を渡って対岸に出てしまうことにした。




奥ではパラグライダーの準備が始まっていて。



「さ、それじゃ行きましょう!」
  エルコスさんの声が弾んだ。


  ……まさかあんなことになろうとは。



「えーっと、本当にここで合ってます?」
「合ってるハズなんだけどなぁ」
  二人して首を傾げる、そこは河川敷のどうみてもダート道。おかしいなぁ、さっき橋の上から見たときはちゃんと舗装されているサイクリングロードだったのに。




なにかがおかしい。




「も、戻りませんか? きっと間違いですよこの道」
  エルコスさんの声は、明らかに怯えていた。普段の彼女が走るような道では、確実になくなっていた。というか……
「そうだな。そこを曲がって堤防の上に…… あ」
「い、いやぁぁぁぁぁぁっ!?」
  やばい。間違いなくやばい。エルコスさんが泣き叫ぶ声と、足元から感じる、ぐにゅっ、という感触。そして、ぴくりとも動かなくなるエルコスさん。


  ぬかるみにハマった。




軽い衝撃映像。




「えーっと…… マジごめんなさい」
  半泣き、どころか号泣のエルコスさん。その彼女のキャリパーにこびりついた泥を、先ほど補給した、キンキンに冷えたミネラルウォーターで洗い流す私。
「ひ、ひどい……」
「なにも言い返せない。コース見誤ったは俺のミスだ」
  そこらへんに落ちている枝で、さらに泥をほじくり出して、ようやくまともに走れる程度に泥は落ちた。とはいえ、彼女はすっかり泥だらけの見窄らしい姿に。
  とりあえずこの場を脱し、少し落ち着ける場所に移動しなくては。という感じで走っていると、公園のような場所と、水場が。泥で公園を汚してしまうのは気が引けるが、どうか罰当たりで無計画な主を許しておくれ。
「大先生…… わたしは大丈夫ですから」
  お互いに何となくばつが悪い感じだが、エルコスさんが気を遣ってくれた。だが、断るぞ。私は泥を落とす手を休めない。
「バカ言うな。ある程度は綺麗にする」
  汚れた原因が自分にあって、しかもチェーンの汚れとかとは訳が違う、泥汚れだ。
「ありがとう、大先せ……」
「いいから。何も言うな。そして気にするな」
  恐縮しているようなエルコスさんだったが、普通だったらもっと怒るぞ?
  あと、何も言うな、とは言ったが、泥汚れをここで落とすという理由に、泥が詰まってメカが壊れたりチェーンが噛まなくなったりするのを防ぐ意味がある、というのは、言わなくてもいいだろうか。
  余計なこと言って墓穴掘ることもないし、たぶんエルコスさんもそれくらいは知っているはずだし。
  どうにかこうにか最低限の泥は落ちた。とりあえずころで走り切って、帰ったら徹底的に水洗いしてやろう。それまで、耐えてくれ。


  やはり、というか何というか、ペダルが重い。だが仕方ない、自ら撒いた種だ。トレーニングと割りきって走ろう。幸いにして、川沿いを走るサイクリングロードは、当然ながらクルマの往来は皆無である。たまに耕運機とすれ違うくらいで……




耕運機、ログイン。




「耕運機が通るんですかここ!?」
「まあ道の両端は畑だからね。それに、ほら、アレ見てみ」
「あ、牧草ロールですね!」
  北海道の十勝地方ではお馴染みの牧草ロール。こんなところでも見ることができる。これならわざわざ北海道行かなくてもいいかな、なんて軽口を叩いていると、お馴染みの看板が見えてきた。
「着きましたね」
「ああ、ありがとうエルコスさん。無事に着いたよ」
  12時10分に到着。もう少し早く着けるかと思ったけど、やはりミスコースしたのが大きかった。でも、ホンダエアポートという収穫もあったことだし、まあヨシとするか。
「わたしは全然よくないですけどねっ!」
「重ね重ねスンマセンした」
  謝ってばかりだな私。




到着〜






  榎本牧場は、埼玉県上尾市にある小さな農場だ農場というだけあって牛さん豚さんアヒルさんと、たいていのものが揃っている。しかし前述の通り、ここの目玉はジェラートだ。直営のフォルトゥーナさんでジェラートを戴く。
「ちょっと食べてくるけど、えーっと……」
「気にしなくていいですよ。前にも言った通り、わたしは大先生と一緒に走れるだけで満足ですから。それに、そもそもわたしはジェラートが食べれませんし」
  そりゃそうだな。
「まあ、変に食べさせて239時間でし……」
「大先生! 四季さんがこっち睨んでますって(笑)」
  私のメタなボケに、楽しそうにツッコミを入れてくれるエルコスさん。機嫌が直ってくれてちょっと安心した。彼女には悪いが、私だけジェラートを戴くことにしよう。
  ここのジェラートは、飼育している牛の乳で作られているのはもちろん、季節ごとにメニューを変えてくるので、年中いつでも楽しめる。場所が場所だけに通年営業だが、やはり夏前から秋口までが狙い目だと思う。そんな中、前回のときに抱いていた野望を、今ここで果たす。選んだのは、梅ジュースのジェラートとラムレーズンのダブル。そう、酸っぱい系からの攻撃だ。




すっぱい系。




「効くなぁ……」
  率直な感想である。梅の優しい酸っぱさと、遠くの方でニコニコしている甘味が、火照った身体に染み込んでいく。その酸っぱいのを食べた直後に、大人の甘さであるラムレーズンを口にすると、これまたほんわり柔らかい甘味が口の中に広がる。うーん、これは、アレだ。ビアンカとフローラだ。
「ドラクエ5ネタなんて、分かる人いるんですかね?」
  遠くの方でエルコスさんがツッコミを入れる。
  いや大丈夫だろう、そこそこ有名だし。……と、DQ5はビアンカ派、の私はそう返した。ただ、涼と甘味は取れたのだが、それにしたって今日は暑かった。暑さにやられたのか、それとも食い意地が張っていたのか、気がついたらもう一杯ジェラートを頼んでいた。
  フォルトゥーナさんはスタンプサービスをやっていたのだけど、まさか一日で2個押されることになろうとは。
「我慢できなかった、と」
「我慢できなかったねぇ」
  遠い目をする私が選んだのは、王道のミルク。優しい甘さのフローラ系。
「ビアンカはいいんですか?」
「浮気性、っていうのかなこれって」
  まあ、ミルクは安定の美味しさだ。こりゃ間違いないな。




フローラ系。






「おまたせー」
  二杯分のジェラートを胃の中に沈め、私はエルコスさんのもとに戻った。
「おいしかったですか?」
「うん、満足満足」
  よいしょ、と跨がり、ペダルを嵌めようとして、
「嵌まらないなぁ」
「泥が詰まりましたね」
  SPDーSL はこれだから困ったもんだ。榎本牧場を出てすぐに、塀に腰かけて靴をパカンパカンとどつき倒してカピカピに乾いた泥を削ぎ落とす。
「もうSPDにしちゃえばいいのに」
  と、エルコスさん。しかし私は反論する。
「いやいや、慣れると踏面の広さがなかなか捨てがたいのだよ」
  SPDと比べると、やはり踏んだときの安定感が違う。それがSL。SPDは足をくっつけてクルクル回すときに向いていると思う。
「そうなんですか……」
「ただ……」
  と、私は続ける。
「もしあなたと、北海道とか九州とか、かなり遠くに長期で旅に出るなら、間違いなくSPDだな」
「え、そうなんですか?」
「SPDのほうが、歩きやすいんだよね」
  こればかりはSPDーSLは勝てない部分だ。長期の旅だと、どうしても自転車に乗らない時間も存在するからな。
「ところで大先生、わたしを連れて北海道とか九州とか、かなり遠くに長期で旅に出る予定があるんですねっ!」
  そこに食いついたか。だから尻尾をパタパタさせるんじゃな。ちゃんと連れていくから。


  ようやく泥を落としてペダルが嵌まるようになったところで再出発。昼過ぎで昼飯もまだだったが、ジェラートで腹がたぷたぷだったので川岸屋のうどんもスルー。
「倒れちゃいますよ?」
「まあ何とかなるだろう」
  と、ちょっとだけタカを括っていたが、喉が乾いたのでボトルを……
「あ」
「え?」
「いや、何でも」
  ボトルをケージに戻す。
  ……いっけねぇ、さっきエルコスさんの泥落としで水使いきっちゃったよ。
  変なことを言うとエルコスさんが心配するから、しばらくは黙っていよう。とはいえ、開平橋を渡って荒サイに復帰すると、たぶん秋ヶ瀬まで補給できる場所はない。
  たぶん上江橋まで行けば、一般道側に商店のひとつでもあるだろう。果たしてその予感は的中し、橋のたもとにローソン発見。ここでボトルを満タンにして、いよいよ後半戦だ。




荒サイのホッとステーション。



  新緑の緑萌ゆる中、ほぼ無風の荒サイを走る。途中、水が張られた田園の中を突き進む。のどかな田園地帯だけど、遠くを見ると埼玉の新都心が。
「シュールですね」
「……遠くは見ないようにしよう」
  雰囲気だけを楽しんでいこう。
  事実、秋ヶ瀬橋までの区間は、ゴルフ場とグラウンドに囲まれた区間で、木々によって展望は望めない。しかし、ちょっとした山岳部を攻めているような雰囲気になれる。勾配はないに等しいので、初心者でも山を走っている雰囲気が味わえる。確かに、雰囲気はある。雰囲気が味わえる。





遠くさえ見なければ……



  ……秋ヶ瀬橋までは、の話だが。



「あれー?」
  なんか様子がおかしい。
「目に見えて速度が落ちましたね」
  エルコスさんが指摘する。心配している、というよりかは、全てを悟ったような、その声で。
「これはもしかして、向かい風ってヤツか?」
「向かい風ってヤツですね」
  秋ヶ瀬橋から南側は、エルコスさんが言うところの緊急河川敷道路というヤツだ。そこは先程とは打って変わって視界が開ける。つまり、遮るものがないわけで、
「か、風が……」
  モロにやってくる。ギアを軽くして回しに入るが、思った以上に加速しない。
「参ったねこりゃ」
「日頃の行いですかね」
  うっさい。しかし、これはある程度は予想していた。だって、往路はあれだけ快調な追い風だったのだから。
「魔法かけてよ」
  まるで、猫とは呼べない万能ロボットに助けを乞う黄色い服の少年の如し。しかしエルコスさんはあっさりと、
「いやでーす」
  マジかい。
「そもそも、わたしのは魔法でも何でもなく、単にフレームが撓ってるだけですよ。それが推進力に変わってるに過ぎません」
  身も蓋もないなあ。
「なので、大先生が頑張らないと加速しませんよ」
「そこを何とか。もう水も残ってなくて……」
「今日は散々でしたから。たまにはイジワルしちゃいますよ。それに、ほら」
  と、エルコスさんが差す先には、見慣れた巨大な水門が。




午後になったって自転車人は絶えない。




「岩淵水門が見えてきましたよ。あと一息!」
「きっついなあ」
  苦笑いをしながら、私はクランクを回し続けた。もうすぐゴールだ、とりあえず扇大橋まで辿り着いたら、何か水分を補給しよう。


  遠くに、某家電量販店のでかい看板が見えてきた。




扇大橋が今回のゴール。往復で92km程度。








結局のところ……


スマホがデジカメの代替となることはよーくわかったのだが、何せSH−01Fは5インチサイズ、しかも薄いので、意外と誤操作することが判明。しばらくデジカメ併用というスタイルで落ち着きそうである。あと、どうしてこうなった?






これからのシーズンは楽しみだな。



エルコスさん日記のテキストファイルはこちら。需要あるのかな?










TITLE:ジェラート・ラン2
UPDATE:2014/06/20
URL:http://y-maru.sakura.ne.jp/193_jerato2/jerato2.html